あの資格が“失業者養成資格”になる?―山口俊一さんインタビュー(2)
中小企業社員と大企業社員、サラリーマンと公務員…世には“理不尽な給与格差”がある。そんな格差のカラクリを暴く山口俊一さんの新刊『理不尽な給料』(ぱる出版/刊)。給与格差が是正され、「仕事の価値や能力、努力が正当に評価されて、それに見合った賃金が決まる社会」に近づいていって欲しいと書籍内で山口氏は述べるが、その格差の実態とはいかに? 著者・山口氏へのインタビュー、今回は後編だ。
■公認会計士が“失業者養成資格”に…?
―本書にサラリーマンの過去10年くらいのサラリーマンの年間昇給率の平均値が1.5%とありました。しかし、リーマン・ショックまでは景気を持ち直し、企業は儲かっていたはずです。儲かっているのに昇給はなされない。では、今後、労働者の給料が増えるということはあるのでしょうか?
「残念ながら、日本全体の給料水準が増えていくという見込みは薄いでしょう。今でも、 円高の影響もあり、中国などアジア諸国と比較すれば、高待遇ということになります。
しかしながら、会社ごとの収益格差はますます拡大していくと思われますので、高収益企業については、賃金アップも望めます」
―本書では超難関として知られる公認会計士が失業者養成資格になりつつあることを指摘しています。それはどうしてですか?
「公認会計士などの資格自体には定年がありません。また、ここ何年かの間で、国の政策により必要以上に試験合格者を大幅に増やしました。その一方で需要はそれほど増えておらず、むしろ減っているくらいです。当然、供給過剰ということになり、仕事のない有資格者が大量発生することになったのです。これは、歯科医師なども全く同じ構造といえます」
―また、今後、失業者養成資格になりそうな職業はなんですか?
「弁護士や税理士なども、これから資格をとろうかという人にとっては、厳しい環境が待ちかまえています。不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士といった、建築・不動産関連の資格も、国内市場では苦しいかもしれません。調剤薬局やドラッグストアの拡大で引く手あまたの薬剤師なども、今後の法改正によっては安泰かどうかわかりません」
―逆に今後ニーズが高まり、賃金が増えていく職業はなんだと思いますか?
「たとえば新興国など海外市場を攻めたい会社は増える一方ですので、海外向けに英語を使った営業ができる人材、海外拠点の運営が任せられる人材などは、高い報酬が見込まれます。語学だけではダメです。「語学+仕事ができる」人材は、ますます有望ではないでしょうか」
―今後、本書で書かれている様々な種類の賃金格差はさらに広がっていくと思いますか?
「いえ。「理不尽な格差」は、時間はかかるかもしれませんが、いずれ是正されていくと思います。世界的に見ても、先進国の賃金水準は頭打ちになり、新興国は上がっていくことで、確実に格差は狭まっています。いずれ、日本人より中国人の方が高給取りになるという予測もあります。国内でも、公務員や規制産業の給料水準は下がっていくでしょう。一方で、パートタイマーやアルバイトの時給は徐々にではあっても上がっていく傾向にあります」
―本書をどのような方に読んで欲しいとお考えですか?
「特に、若いサラリーマンや学生の皆さん、学生を子どもに持つ親御さん。これからの職業選択次第で、いくらでも可能性のある人たちです」
―インタビュー読者の皆様にメッセージをお願いします。
「職業や就職先を選ぶ際、皆さんは何を重視するでしょうか。仕事内容、会社の将来性、社風、勤務地、・・・。賃金以外にも、さまざまな要素があり、どれを重視するかは、人それぞれでよいのです。しかしながら、生活の糧である以上、給料水準も重要な判断材料であることは、間違いありません。
世の中の「理不尽な状態」を自らが直すのは難しくても、正しく理解し、自らが適切な選択をすることは可能です。
情報化社会と言われますが、案外正確な情報は伝わっていないように感じます。この本がきっかけとなり、皆さんの正しい企業研究、職業研究が進めば嬉しいですね」
(了)
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―本書にサラリーマンの過去10年くらいのサラリーマンの年間昇給率の平均値が1.5%とありました。しかし、リーマン・ショックまでは景気を持ち直し、企業は儲かっていたはずです。儲かっているのに昇給はなされない。では、今後、労働者の給料が増えるということはあるのでしょうか?
「残念ながら、日本全体の給料水準が増えていくという見込みは薄いでしょう。今でも、 円高の影響もあり、中国などアジア諸国と比較すれば、高待遇ということになります。
しかしながら、会社ごとの収益格差はますます拡大していくと思われますので、高収益企業については、賃金アップも望めます」
―本書では超難関として知られる公認会計士が失業者養成資格になりつつあることを指摘しています。それはどうしてですか?
「公認会計士などの資格自体には定年がありません。また、ここ何年かの間で、国の政策により必要以上に試験合格者を大幅に増やしました。その一方で需要はそれほど増えておらず、むしろ減っているくらいです。当然、供給過剰ということになり、仕事のない有資格者が大量発生することになったのです。これは、歯科医師なども全く同じ構造といえます」
―また、今後、失業者養成資格になりそうな職業はなんですか?
「弁護士や税理士なども、これから資格をとろうかという人にとっては、厳しい環境が待ちかまえています。不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士といった、建築・不動産関連の資格も、国内市場では苦しいかもしれません。調剤薬局やドラッグストアの拡大で引く手あまたの薬剤師なども、今後の法改正によっては安泰かどうかわかりません」
―逆に今後ニーズが高まり、賃金が増えていく職業はなんだと思いますか?
「たとえば新興国など海外市場を攻めたい会社は増える一方ですので、海外向けに英語を使った営業ができる人材、海外拠点の運営が任せられる人材などは、高い報酬が見込まれます。語学だけではダメです。「語学+仕事ができる」人材は、ますます有望ではないでしょうか」
―今後、本書で書かれている様々な種類の賃金格差はさらに広がっていくと思いますか?
「いえ。「理不尽な格差」は、時間はかかるかもしれませんが、いずれ是正されていくと思います。世界的に見ても、先進国の賃金水準は頭打ちになり、新興国は上がっていくことで、確実に格差は狭まっています。いずれ、日本人より中国人の方が高給取りになるという予測もあります。国内でも、公務員や規制産業の給料水準は下がっていくでしょう。一方で、パートタイマーやアルバイトの時給は徐々にではあっても上がっていく傾向にあります」
―本書をどのような方に読んで欲しいとお考えですか?
「特に、若いサラリーマンや学生の皆さん、学生を子どもに持つ親御さん。これからの職業選択次第で、いくらでも可能性のある人たちです」
―インタビュー読者の皆様にメッセージをお願いします。
「職業や就職先を選ぶ際、皆さんは何を重視するでしょうか。仕事内容、会社の将来性、社風、勤務地、・・・。賃金以外にも、さまざまな要素があり、どれを重視するかは、人それぞれでよいのです。しかしながら、生活の糧である以上、給料水準も重要な判断材料であることは、間違いありません。
世の中の「理不尽な状態」を自らが直すのは難しくても、正しく理解し、自らが適切な選択をすることは可能です。
情報化社会と言われますが、案外正確な情報は伝わっていないように感じます。この本がきっかけとなり、皆さんの正しい企業研究、職業研究が進めば嬉しいですね」
(了)
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