噛みあわせ論 〜甲府対広島〜
中東から日本への復帰を果たしたダヴィがスタメンにいる。磐田に在籍していた金珍圭もスタメンに名を連ねている。残留に向けて、なりふりかまってられないわといったところだろうか。徐々に怪我人の戻ってきている広島は、ムジリや青山がベンチに控える豪華な陣容となっている。
■かみ合わせについて
序盤は広島が優勢に試合をすすめた。三浦監督の代名詞でもゾーンディフェンスで甲府は広島のビルドアップに対抗を試みるが、どうしても機能しなかった。また、広島のビルドアップはマイナーチェンジをしていた。なので、最初はそのポイントからおさらい。
広島はDFラインを下げて、ビルドアップを行う。攻撃を縦に急ぐこともあるが、基本的にバックパスを多用することで、試合のテンポをコントロールする狙いがある。DFラインを下げる狙いは相手の守備陣を縦に広げること。つまり、縦に間延びさせるために、DFラインを下げる。相手が前プレしてくる場合にリスクはあるが、かなり効果的な手法である。
図を見ると、広島は数的優位になっていないように見える。しかし、広島は西川を利用することで、ぎりぎり数的優位を作ることができる。でも、広島はそこまで西川を利用することはなかった。バックパスがきたときの西川はバルサのバルデスのように正確なフィードで広島のサッカーを支えていた。
そんな西川の出番が少なかったのは、森崎兄弟、中島の能力の高さである。広島は3バックのふりした4バックで相手を惑わしてビルドアップが得意であった。相手のCBがSBのように振る舞うので、相手の守備の役割分担を破壊することができる。しかし、その手法も相手に研究されれば、終を告げる。なので、登場したのが、森崎兄弟と中島によるビルドアップである。
3対3でも関係ない。その理由は森崎弟と中島、森崎兄の距離感である。CBとDHの距離が広いので、彼らはスペースを手にれることができる。なので、そのスペースを利用して、彼らは簡単にボールを繋いでいく。自分たちのDFラインの低さによって、獲得したスペースをしっかり使用しているのである。一番印象に残っているのはこんな場面。
ワンツーしちゃうんだと笑った。この場面の他にも、3人がポジションを入れ替わったり、SBを利用してビルドアップしたり、やりたい放題の広島であった。そして、最初のプレスを突破した広島はこんな状況にたびたび遭遇する。
誰が中島にプレスをかけるのだろう。そして、誰が李と高萩を担当するのだろう。というわけで、広島は後方から数的優位を維持したまま、甲府の陣内に攻め入ることができた。なので、序盤は広島のペースになった。
甲府の立場からすると、プレスの開始位置をもっとどうにかできないかなといったところ。でも、ゾーンディフェンスはボール保持者にプレスがかかっていることが前提なので、ダヴィもマイクも頑張っていた。でも、その頑張りがチームに還元されていなかったので、悲しいお話である。もっと、自陣からプレスを始めることにすれば、面白い試合になったかもしれない。
そんな広島のペースが甲府に流れ始めたのは広島の守備に原因がある。広島は自陣に撤退して守備をする習慣がある。なので、相手の後方の選手に時間とスペースを与える。その代わりに、自陣のスペースを潰す。よって、ダヴィやパウリーニョの個人技が発動する機会を減らすことには成功した。しかし、甲府にはダヴィがいる。なので、ゴール前に放り込まれる広島であった。
ここからは文章だけで駆け足。広島は危機状況には陥らなかったけれど、ゴール前にボールを運ばれたことで、ダヴィたちにボールが渡る回数が増えたり、コーナーキックの機会を与えるようになった。なので、これはちょっと賢くないよなってことで、5-2-3で前プレに出る。しかし、即席の前プレが機能するほど、甲府も甘くない。
ボールを運びたがりのダニエルを中心に、甲府は広島のプレスをかわして、より近い位置からゴールに放り込むことに成功していた。となれば、ボールが甲府のほうにこぼれてきたり、セットプレーからダニエルが飛び込んできて危なっかしい場面が増えるようになる。しかし、前半はこのまま終了。ちなみに、いい時間帯に広島はPKから先制に成功している。
■片桐の登場で
後半から、甲府は片桐が登場。前半の甲府は個人技による特攻とロングボールがメインだった。しかし、片桐の登場で攻撃にアクセントが生まれる。片桐は個で仕掛けることもできるし、周りに時間とスペースを与えるパスもできる。また、パスにメッセージが感じられるので、パスを受けた選手もやりやすそうである。たまに、ボールを受けた選手が片桐の意図と違うプレーをしていて、本人も心のなかで苦笑いだろうか。
広島はカウンターとポゼッションをおりまぜて攻撃。片桐にかなり苦戦するが、前半よりは上手く守れている印象。そして、甲府はさらに攻撃的な選手を投入して、片桐を中央で起用。片桐に何でもやらせるつもりである。ちょっと守備は捨てたかなという賭け。
で、これを見たペトロビッチ。服部→山岸、森崎弟→青山で攻守に修正。山岸はサイドからのクロスで、青山はボールに何度も絡むことで、貢献。こうして、守備を捨て気味になった甲府は広島にチャンスを与えることになる。片桐を中盤の中央で使うのがちょっと早すぎたかなという印象。常に自分たちのターンで攻撃をするときじゃないと、リスキーな采配。
というわけで、試合は五分五分どころか、徐々に広島がらしさを出していく。守備が足りなくなった甲府のゾーンディフェンスはぐちゃぐちゃで高萩が何度もフリーでボールを受けて、甲府に攻撃を繰り返していた。そして、そんな高萩のパスから、寿人がイメージ通りのキック＆ループで甲府にとどめをさして試合は終了した。
■独り言
広島は非常にらしい試合で甲府を下すことに成功。今日は守備が集中していたことと、相手が自分自分していたことに助けられたかなと。パウリーニョとダヴィが機能するようになれば、どこのチームも怖いだろうで。甲府は監督を交代して、どんなサッカーに舵を取るのか非常に不安。でも、前線にいいタレントはいるので、何とかなるんじゃないかなと楽観的。ただ、中盤の中央が弱い気がする。伊東輝悦がんばれ。
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