カレーハウスCoCo壱番屋というと、日本では男性ファンが多いイメージが強いが、上海のCoCo壱番屋は女性客の比率が高い。店内を見渡してみると、6割以上が女性といったところだ。

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上海に進出している日系外食 第4回

(1)日本と真逆。女性にウケている上海のCoCo壱番屋

 カレーハウスCoCo壱番屋というと、日本では男性ファンが多いイメージが強いが、上海のCoCo壱番屋は女性客の比率が高い。店内を見渡してみると、6割以上が女性といったところだ。

 サーチナ総合研究所(上海サーチナ)が実施したインターネット調査結果(2011年3月)からも、女性に支持されていることが分かる。上海市民2000人(男性1000人、女性1000人)に対して、日系外食店13社について聞いたところ、CoCo壱番屋に行ったことがある人は男性が23.9%、女性が29.2%。女性の比率がやや高い結果となった。

(2)勝因はおしゃれ感

 ではなぜ、上海のCoCo壱番屋は女性に人気なのか。

 要因のひとつは、「おしゃれ感」だ。

 上海のCoCo壱番屋は、「ちょっと感じのいいレストラン」といった雰囲気を漂わせている。たとえば呉江路店の場合、床は木製、壁の一部には落ち着いた色の煉瓦が施されてあり、アイボリーホワイトの椅子やソファーが並べられている。天井からは、ほのかな光を放つ円錐形の照明が垂れ下がっていて、テーブルを照らしている。照明も暗くなり過ぎない程度に落とされていて、全体的に落ち着いた雰囲気だ。

 インターネット調査結果からも、店内の雰囲気が消費者に評価されていることが分かる。

 上海市民2000人のうち、「CoCo壱番屋」に食べに行ったことがある消費者に「店内の雰囲気」に対する評価を聞いたところ、「CoCo壱番屋」の「雰囲気がいい」と回答した人は男性で67.1%、女性で70.8%だった。

 内装だけでなく、メニューに工夫を凝らすことも忘れていない。中国では、カレーは比較的新しい「海外の食べ物」であるため、それ自体に「新しいイメージ」があるが、それに加えてオムライスカレーなど、女性が好むメニューを用意することで「おしゃれ感」を出している。

(3)レストランを“着飾る”上海の女性たち

 「おしゃれなレストラン」が上海女性に支持されていることから、彼女たちにとって「おしゃれ感」はレストランを選ぶ際の重要なポイントの一つであることがわかる。

 ではなぜ、上海の女性は「おしゃれなお店」を好むのだろうか。それは、彼女たちにとってレストランは「ファッションの一部」だからではないだろうか。

 心理学に「セルフイメージ」という言葉がある。

 「セルフイメージ」とは「自分自身に対して持つイメージ」という意味だ。平久保仲人氏はその著書『消費者行動論』で次のように説明している。

 「例えば、ハーレーダビッドソンに乗るライダーは、マッチョである自分を演出しているのではないだろうか。間違ってもスクーターに乗るようなことはないだろう」

 「こだわりの商品やそれらを購入する店は、自分のイメージを演出し、ひいてはセルフイメージを反映していることが多い。極端な言い方をすれば、個人が購入する商品は、その人自身なのだ」

 つまり、人は商品を購入することによって“自分を演出”し、自分自身のイメージを作り上げているわけだ。CoCo壱番屋が好きな上海の女性たちも、ちょっとおしゃれなCoCo壱番屋で食事をすることで、“おしゃれな私”を演出しているのではないだろうか。

 上海の女性はここ数年で急速におしゃれになっている。「おしゃれ」は上海女性たちの最大の関心ごとの一つだ。彼女たちが着飾るものは、洋服やアクセサリーだけではない。レストランも、彼女たちが“着飾る”ものの一つ、つまり、ファッションの一部なのではないだろうか。(編集担当:森川慎一郎・サーチナ総合研究所研究員)



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