記者投票によるMVPに輝いた浦田聖子。「びっくりして、言葉を用意してません…」 (撮影:野原誠治)

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 国内ビーチバレー、JBVツアーは29日、都内ホテルにて「JBVツアーアワード2010」を開催し、男女のグランドチャンピオン(年間総合優勝)、MVPなどの表彰が行われた。

 ツアー(全8戦)のポイントによって争われたグランドチャンピオン。男子は朝日健太郎・白鳥勝浩組。怪我による欠場、第4戦では2年4ヶ月ぶりに黒星がつくなど、絶対王者には苦しい1年だったが、結果として6勝を挙げた。

 プレスアンケートによるMVPにも選ばれた朝日は「ビーチは2人でプレイする競技。MVPは白鳥と分けたい。記念すべき初めての表彰式で選ばれて嬉しい」と話した。

 女子は田中姿子・溝江明香組。ツアー個人勝利数最多を誇り、「明香のお母さんに年齢が近い」と笑うベテラン田中が、今季からパートナーに選んだ20歳のルーキー、溝江の潜在能力を引き出した。並行し転戦していたワールドツアーの疲れからか、夏場に調子を落としたが、9月に入り復調。4強とも5強とも言われた混戦の女子国内ツアーを制した。

 その溝江は、女子新人賞も受賞し2冠。「すべて(田中)姿子さんのおかげ。優勝できない時もあったが、姿子さんと一緒に乗り越えることができた」と話した。

 女子MVPには、西堀健実とのペアで年間総合2位、広州アジア大会の日本代表でもあった浦田聖子が選ばれた。浦田は「(驚いて)言葉がありません。今年はたくさんの課題がみつかったが、チームワークの点では成長できたと思う」と語った。

 今季限りで引退した楠原千秋には、長年の貢献に対し特別賞が贈られた。アマチュアでありながら最終戦において優勝。有終の美を飾った楠原は「最後に勝てたのは、13年ビーチバレーをやってきて、オリンピック以上に最高の思い出になりました。三木、ありがとう」と壇上から、パートナーの三木庸子に感謝の言葉を述べた。

 また、今月初めに草野歩との「アサクサペア」解消を発表し、来季のパートナー選びが注目される浅尾美和は、「今年はくやしい1年だったが、ひとつずつ、焦ることなくやっていきたい。パートナーに何を求めるかよりも、自分がどうしていくかだと思う」と語った。
 
主な表彰者は次の通り。
□グランドチャンピオン
  男子)朝日健太郎(フリー)白鳥勝浩(湘南ベルマーレ)組
  女子)田中姿子(エコ計画)溝江明香(産業能率大)組
□MVP
  男子)朝日健太郎(フリー)
  女子)浦田聖子(フリー)
□新人賞
  男子)日高裕次郎(フリー)
  女子)溝江明香(産業能率大)
□特別賞
  楠原千秋(フリー)

 男子はブラック・タイ、女子はイブニング・ドレスと、選手にドレスコードが通達されたというビーチバレーのツアーアワード、年間表彰式は、今年初めて開かれた。
 男女とも目いっぱい、着飾った選手たちが壇上に並ぶと、当たり前だが、長身で均整のとれた体型は舞台に映え、華やかだった。しかし、グランドチャンピオンと新人賞に輝いた溝江は「いつも水着なので、逆に着ている方が恥ずかしい」と話し、「もうドレスなんて来年まで着ない」と笑っていた。事実、ドレスやスーツなど着慣れない紳士淑女が多く、ハイヒールに苦労し、そのうち「ビーチバリヤーはやっぱり裸足よ!」と靴を脱ぎだし、あたりの爆笑を誘っていた選手もいた。

 そんな初めての表彰式であったが、多くのスポンサー、関係者、メディアを集め盛大に行われたことは意義深い。

 ビーチバレーに転向し8年。グランドチャンピオンに輝き、MVPに選ばれた朝日は「記念すべき第1回のチャンピオン」と喜び、「日本のビーチバレーは、少しずつだが年々大きくなっているのを実感する。表彰式を開催できるまでに成長した」と話す。

同じくビーチバレー歴8年の西村晃一も、「以前は試合会場にスタンドなどなかった。(インドアから転向し)大変なところだなぁと思った」と感慨深げに語った。

 今シーズンのツアーは、昨季までの全5戦より3戦増。東は千葉県から、西は宮崎県まで全国8ヶ所で行われた。浅尾や菅山かおる等の人気も手伝い、日本での競技が始まって20年あまり。ビーチバレーの認知度は上がっている。

 だが、日本の実力を海外で計ると、ワールドツアーでは、男女各チームとも予選突破、本戦進出に苦しんでおり、なかなかワールドランキングが上がっていかない。広州アジア大会では、朝日・白鳥組が銅メダルを獲得したが、中国などの台頭は目覚ましく、アジアの壁を破るのは容易ではなくなりつつある。実質、アジアのトップに立たないと2年後のロンドン五輪への道は開かれず、北京五輪9位の男子、五輪4大会連続出場の女子の足跡に続くことができない。

 国内ツアーの成長を、結果に繋げることができるのか。来季はツアーとしても競技としても重要な年になるだろう。

(取材・文=小崎仁久)

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