現状なら本田、中村俊の2人を揃って先発から外す選択肢もあると、柱谷氏は分析

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 まもなく、2010FIFAワールドカップ・南アフリカ大会が開幕する。4大会連続で出場をはたした日本代表が初戦に対戦するのは、アフリカの雄・カメルーンだ。ワールドカップ初出場となる98年大会以来、実に12年ぶりに代表の指揮を執る岡田武史監督が大会前に掲げた目標は「ベスト4」。その第一歩となる試合で、『不屈のライオン』と呼ばれる強豪相手に日本はどう戦うべきなのか。長く日本代表としてチームを支え、現在はJリーグ選手OB会初代会長として活躍する、"闘将"柱谷哲二氏に聞いた。

――カメルーンはエース、サミュエル・エトー(セリエA・インテル所属)に代表されるように、アフリカ人特有の身体能力の高さを持ったチーム。爆発的な攻撃力がありますが、ここ2試合で7失点したことからもわかるように守備が弱点と指摘されています。

「確かにカメルーンは組織的なチームではないから、センターバックとボランチの間に距離ができる。そこをつかれたのでしょう。ただ、あの身体能力の高い選手を相手に、1対1で簡単には抜けない。そうなると人をかけて崩す形しかないわけだけど、この数試合の日本を見ると、選手たちがボールを追い越す回数が全然少ないんですよ。

 たとえば俊輔。ボールを出したら前に出ないで、後ろにまわって何かをしようとしている。遠藤(保仁)も長谷部(誠)もそう。スルーパスばかり狙っているから、崩れそうで崩れない。ボランチも遠藤と長谷部のどちらかが残っているなら、もうひとりが思い切って前に出て行けばいい。去年まではそれができていたのに……。今は全然そうした動きがないから、中盤で大渋滞が起こってしまう。ボールを追い越す選手がいなければ、ディフェンスは何も困らないよね。

 みんなポゼッション――ボールをキープしてつなぐ展開はうまいんです。イングランド戦でもそうだった。でも本当に崩してとれたのか、ということです。ポゼッションとビルドアップは違う。大切なのは中盤や最終ラインからボールを前に運んで攻撃を組み立てる、ビルドアップの動きなんです」

――では、カメルーン戦でゴールするには、どういった形がベストだとお考えですか?

「イングランド戦では阿部をアンカーに入れることでその前の2枚、遠藤と長谷部のポジションが上がったから、少し高い位置で守ることができた。あの位置なら、相手のボランチをうまく捕まえられるし、前からプレスもかけやすくなる。だからイングランド戦では、相手にポゼッションされても、危険なシーンはほとんどなかった。一方コートジボワール戦では、長谷部のポジションを1枚上げたから、遠藤と阿部の位置が下がってしまった。

 だから僕が勝ちに行こうと思うなら1トップに森本、右の中盤に岡崎(慎司)、左に松井(大輔)か大久保(嘉人)を入れる。そしてボランチに長谷部と遠藤、アンカーに阿部を入れればいい。

 サイドバックの長友(佑都)と大久保で左サイドを崩せれば、中央の森本や右の岡崎がゴール前に入ってくる回数は増える。あるいは左で松井が攻撃の起点を作って、それを受けた長友がクロスを上げて中盤から上がってきた遠藤、阿部が決めるというパターン。実は、カメルーンは右サイドが弱いんだよね。よく崩されて失点しているから、左から崩すこのパターンは有効だと思うよ」

――では、あえて本田と俊輔を外す、と。

「コートジボアール戦の状態だったら僕は使わない。確かに本田は、未知数ながら可能性の高い選手だと思う。ただ今は、まわりとあまりフィットしていないでしょう。俊輔もそう。足の故障は別にしても、身体のキレなどがベストではないと思う。

 今、岡田さんが考えなきゃいけないのは、勝つためのメンバーを選ぶこと。名前で選んでいたらワールドカップでは勝てない。日本人は当たり勝てない分、走り勝たないと勝ち目はない。ワールドカップという大舞台で勝ち点を取るというのは大変なこと。そのためには組織力と走力、そして大和魂を持っていないことには、難しいと思いますね」

 ここ数試合でめまぐるしくシステムを変え、さまざまな"テスト"をしてきた岡田ジャパン。だがどんなシステムであっても、相手を崩すためには「ボールを追い越す動き」が重要だと柱谷氏はいう。そのためには誰を起用し、どうすればいいのか。もう、それを"テスト"をしている時間はない。目の前に差し迫った開幕戦に向けて、岡田ジャパンがベストの選択をすることを願うばかりだ。

インタビュー・文/ 飯嶋玲子

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■柱谷 哲二プロフィール
はしらたに てつじ、1964年7月15日生まれ。
京都市出身、サッカー指導者・解説者。Jリーグ選手協会初代会長。
現役時代、ポジションはDF、守備的MF。
現JリーグOB会(J-OB)代表理事。