低迷する国内の新車市場 トヨタ複数チャンネル維持できるか
低迷から抜け出せない国内の新車市場にトヨタ陣営の焦りが強まっている。国内の自動車メーカーの中で唯一、複数の販売チャンネルを持つのがトヨタ自動車。登録車新車販売台数の45%近い販売シェアを持つが、このまま市場縮小が続けば現在の販売ネットワークを維持するのは難しくなる。2007年の夏以降は、排気量3500ccや5,000ccの大排気量エンジン搭載車などを主軸にした集客活動で活路を見出そうとしているが「新型車は計画以上の実績だが、それ以外は苦戦している」(渡辺捷昭トヨタ自動車社長)と、思い通りにならない展開に販売店は不安を募らせている。
日産・ホンダも危機感を募らせる
トヨタは、2007年の国内販売計画に掲げた172万台を「160万台の半ばくらい売れればいいと思っている」(渡辺捷昭トヨタ自動車社長)と、10月に計画を下方修正した。同社は07年の登録車新車市場を370万台と予測していたが、それも「10万台以上低い水準で市場が推移している」(同)と年間360万台を切り、30年前の市場と同程度に縮小する見通しだ。
トヨタは市場縮小を見越して04年に販売チャンネルのネッツトヨタ店とトヨタビスタ店を統合。トヨタブランドの販売チャンネルを、現在のトヨタ店、トヨペット店、トヨタカローラ店、ネッツ店という4チャンネル体制に改変した。だがこのまま市場縮小が続けば、販売チャンネルをさらに統合しなければならなくなる。
トヨタだけでなく日産もホンダも危機感を募らせている。日産自動車はかつて日産店、日産モーター店、日産サニー店、日産プリンス店、日産チェリー店の販売5チャンネルを持っていたが、今や1チャンネル体制となった。ホンダも06年にホンダプリモ店、ホンダクリオ店、ホンダベルノ店の販売3チャンネルをホンダカーズ店1チャンネルへと統合した。
販売台数を確保できないのなら販売1台あたりの売上と利益を高めることが対応策のひとつ。しかしトヨタのレクサス店も最上級車であるLSシリーズの販売に頼る状況から抜け出せない。販売店の経営を成り立たせるには主力車種が3車種程度必要と言われる。ホンダは08年秋に予定していたアキュラブランドの国内導入を2年先送りし、日産はインフィニティブランドを国内導入するべきか悩み続けている。
トヨタは大排気量新型車を中心に活性化策を展開
今年の夏以降、トヨタは3,500ccや5,000ccなどの大排気量エンジン搭載の新型車を中心とした国内販売活性化策を展開している。1台あたりの利益向上に加え、消費者の車への関心を高めて新車効果が薄れた既販車の販売も伸ばすことが狙いだ。とくに若かりし頃に高出力エンジンに対する憧れを抱いていた50代や、育児が終わった40代などが販売の中心ターゲット。加えて、車離れが進む若年層も車に興味を示して販売店のショールームに現れることを期待している。
大排気量エンジン搭載の新型車の受注実績は計画以上となり、30代以下の購入比率も想定以上に高い結果が出ている。新型車に課せられた販売店への客寄せという役目も発売初期段階では果たされている。だが新型車発売による集客効果が、新型車以外の既販車の販売増へと波及したケースは少ないのが実情。新型車が投入されても販売店が望む販売台数や利益には届かない状態が続いている。
トヨタは07年7月からトヨタブランドの全販売チャンネルが新車販売実績の前年超を目指す「J100活動」を展開。8月に全販売チャンネルとレクサスブランドの販売実績が前年超を達成した。それでも市場環境がこのままでは、トヨタであっても現在の複数販売チャンネルを維持できなくなりそうだ。
ちなみに、10月の国内新車販売(軽自動車除く)のトヨタ自動車のシェアは前年同月比2.2ポイント増の51.6%で独走状態だが、これは「新車効果」に過ぎず、長続きしないとの見方も強い。