キャリコネニュースでは先日、「日本人のパチンコ離れ進む『一度もやったことない』約7割 『目立たないよう地下に作って』という声まで」という記事を公開した。例によってこれがいくつかの掲示板やまとめサイトで引用され、スレッドが立っている。

今回はこのテーマを、元々新卒でパチンコ企業に就職し、一時期パチンコ攻略サイトでも仕事をしていた僕の目線から改めて検証してみたいと思う。僕は以前、いわゆるパチンコ業界の中の人をやっていたし、今もパチンコ屋には月に多いときで5回は出入りしている。その立場から考えると、パチンコ離れは起きて当然だと実感することが多々あるのだ。(文:松本ミゾレ)

時間の猶予はあったのに、パチンコホールは新規客を取り込む工夫をしてこなかった

パチンコの遊技人口は1994年をピークに年々減っている。この理由は、内情を知っている側からすれば、あれもこれも、といった具合にその原因はいくつも思い当たる。

たとえば遊技性の問題。昨今は爆裂機と呼ばれる機種のリリースに待ったがかかるようになり、パチンコであれば連荘継続率がここ2年で80%メインから65%メインに移ってしまっている。と同時に、一度の大当たりで獲得できる出玉の数も減っており、大勝しにくくなった。

パチスロに至っては、2000枚出ると、どんなに連荘の波が押し寄せていても強制的に一旦通常モードに戻る仕様がかなりメジャーになっている。こちらもやはり大勝はしにくい。ただ、これ自体はのめり込み防止のためのお上のお達しを受けてのことで、別に業界側が自ら率先してそうしたわけではない。

もっと言えば、マイルドになったのは出玉の増える速度だけで、投資速度はさほど変わっていない。勝ち目が年々薄くなったということは間違いなく言えるだろうし、当たっても先が知れていて、未曾有の大連荘はまずない。だから新規客も来ない。

その上、パチンコホールは20年も前から問題視されていた騒音やタバコの煙問題を放置している。分煙ボードを1枚ずつ台間に設置して「対策です」と平気な顔。こんなお粗末な対策ってない。健康のための禁煙は先進国では当然の流れなのに、未だにパチンコホールはこれにちゃんと向き合っていない。

ここ最近になってようやく政府主導の受動喫煙防止法なるものが閣議決定された。2020年4月には一応、パチンコホールの遊技フロアも原則屋内喫煙になる。でも、もはや遅きに失した感は強い。今更禁煙になったところで、空気が悪く、しかもやかましい遊技場にわざわざ新規客は訪れない。

そして何より新規客を遠ざけているのは、三点方式だ。これは出玉をまずホールのカウンタで景品に交換し、その交換したものをすぐ近くの景品買取所に持ち込んで、そこで現金に換えるというややこしいにも程があるシステム。名目上パチンコホールは遊技場で賭場ではないということになっており(笑)、そのお陰で営業できているわけなんだけど、こんな面倒な仕組みをいちいちご新規が理解することはほとんどない。

しかも大半のホールは、客に聞かれてもどこに景品買取所があるのか教えてはいけないという意味不明なルールに縛られている。このように、新しい客が入りにくい状況を、自分たちでこれれもかと作り上げてしまっていたのだ。

「金と時間をドブに捨てる作業」レジャーとしては既に"オワコン"

僕のように若い頃から公私共にパチンコに縁が深いならいざ知らず、普通の人たちは今のパチンコホールにわざわざ行こうとはしない。今残っているユーザーなんて、依存症患者かパチンコぐらいしか娯楽のない連中ばかりだろう。

先ほど挙げたキャリコネの記事を5ちゃんねるで引用した掲示板があるんだけど、そこでのパチンコ評は散々だ。ちょっといくつか紹介しようか。

「金と時間をドブに捨てる所業」
「昔パチンカスだったけど本当に時間の無駄。今は土日は家族でスノボー行ってるよ」
「服がタバコ臭くなるから行かない」
「あれを趣味にはしたくないな、なんかダサいじゃん」
パチンコ行くやつ=馬鹿、DQN、低所得、底辺が浸透してきてるからな」

と、まあ見事に酷評ばかり。そしてこういう酷評が、実際に的を射ている。パチンコホールの客層って、消費者金融に借金をして小銭を稼ごうとするような人も多いし、家族に黙って仕事もサボって入り浸る人もいる。見返りはなく、お金と時間と健康をただただ消費するだけ。しかも依存症にされてしまうんだからたまらない。

実際、パチンコ業界で働く人の中には「胸を張って自分の仕事を誇れない」とか「子供に自分の仕事を言うのが恥ずかしい」といった声を漏らす者も少なくない。レジャーとしてとっくにオワコンであることは、もう間違いないことだし、仮に日本にカジノが誘致されればますます閑古鳥が鳴くだろう。というか、カジノが日本にあろうとなかろうと、既にパチンコ業界の先はかなり見通しが暗いと感じる。

参加人口が増えなくなった業界に先はない。パチンコという大衆娯楽はもう斜陽もいいところだ。インチキみたいな演出で投資を煽るマシンだらけで、耳を悪くする騒音とヤニ臭さに溢れ、競馬や競艇ほど儲かる目もない。と来ればもうパチンコは今の時代には割の合わないギャンブルでしかない。見向きされなくなっても仕方がないのだ。

こうならないための対策はちゃんと打てた猶予がしっかりあったのに、肝心の業界がそれを拒否し続けたんだもの。パチンコ業界は、今の客を道連れに朽ち果てることになるだろう。