佐賀県で一夫多妻を実践している「西山家」

前編では、もともとノーマルな恋愛観を持っていた3人が今の家族の形になるまでを取材させていただき、“一夫多妻家族”に対して抱いていた先入観がいい意味で覆されました。

とはいえ、「夜の営みはどうしているの?」「奥さん同士は嫉妬しないの?」など、まだまだ疑問は残ります。

後編では、そんな西山家の実態や価値観をさらに深掘り。 そこには、想像を絶する3人の絆がありました。

〈聞き手=あつたゆか〉

奥さんが2人いたら、夜の営みはどうしてるんですか?

ライター・あつた:
不躾な質問ですみません。一夫多妻だと、その…夜の営みはゆかりさんと裕子さん、両方とされていらっしゃるんですか?

嘉克さん:
そうですね。昔は曜日をそれぞれ決めていたのですが(笑)、いまはその時々のシチュエーションで自然な流れに任せています。


左から第一夫人のゆかりさん、嘉克さん、第二夫人の裕子さん

ライター・あつた:
ゆかりさんと裕子さんのおふたりは、それで平気なんですか!?

第一夫人・ゆかりさん:
3人で暮らすと決まったときに、私が裕子さんと嘉克さんの初エッチを見届けたんです

そうしたら覚悟が決まりましたね。

ライター・あつた:
好きな人が他の女性としているところを…見届けた…!?

第一夫人・ゆかりさん:
自分から「見たい」と申し出ました。だって、見ないままだったらずっとモヤモヤするじゃないですか。

ライター・あつた:
(私だったら絶対見たくないな…)実際に見てどういう気持ちになったんですか?

第一夫人・ゆかりさん:
見届けた直後はメンタルが崩壊しそうでした。なんで私はこんな選択をしちゃったんだろうって(笑)。

でも自分で決めたことだから、自分で消化していくしかない

気持ちの整理がついたあとは、結果的に立ち会ってよかったと思いました。

第二夫人・裕子さん:
私も最初は、ゆかりさんと嘉克さんが行為をしているのはイヤでした。

でも、嘉克さんは「昨日ゆかりさんとこんな感じのエッチをして楽しかったよ」と包み隠さず言う人なんです(笑)。

複雑ですけど、隠されるよりはいいかなと思いました。

ライター・あつた:
前編で「なんでもオープンにする」というお話がありましたが、夜の営みに関してもオープンなんですね…

第二夫人・裕子さん:
そうですね。子どもができる前まではむしろ、3人で営んでましたよ!(笑)

ライター・あつた:
ええ〜!(笑)

奥さん同士は、嫉妬したりしないんですか?

ライター・あつた:
素朴な疑問なのですが、ゆかりさんと裕子さんはお互いに嫉妬したりしないのでしょうか?

私だったら、一緒に暮らすのが辛くなってしまいそうです。

第一夫人・ゆかりさん:
最初は嫉妬してました。でもその感情もすべて裕子さんにオープンにしているうちに、嫉妬はなくなってきたかなあ。

モヤモヤをため込んでいるとあとで爆発してしまうから、西山家では本音を全て言うようにしてるんです。

第二夫人・裕子さん:
「ゆかりさんさえいなければ、と思っている自分がいます」「こういうときに嫉妬してしまいます」とか、思ったことはお互い全部出すようにしていて。

ライター・あつた:
けっこうキツイ言葉を言い合うんですね…!

第二夫人・裕子さん:
キレイな言葉で濁していても何も始まらないと思うんです。

ふたりとも本音をさらけ出して受け入れて、さらけ出して受け入れて…を6年繰り返しているうちに、私とゆかりさんの中で「嫉妬はもういいね(笑)」という感じになりました。



第一夫人・ゆかりさん:
途中から嫉妬というより、人としてのあり方とか生き方でのぶつかり合いにシフトしていったよね。

第二夫人・裕子さん:
うんうん。「嫉妬したってお互い何も幸せにもならないよね」というところに行き着いたというか。

もうお互い感情を出し尽くしちゃったんですよね。

ライター・あつた:
すごい境地ですね…。ゆかりさんと裕子さんの絆が深い。

嘉克さん:
ゆかりさんは相手のことをサラッと受け入れることができるんです。

もし両方とも裕子さんタイプだったら、僕は2人に刺されてると思います(笑)。

自宅出産を通じて、3人の絆が真の意味で深まった

嘉克さん:
4人の子どもを自宅出産したのも、大きな節目だったかもしれないですね。

ライター・あつた:
自宅出産…!? なぜ自宅で産もうと思ったんですか?

第二夫人・裕子さん:
第一子は病院で出産したのですが、促進剤を打たれたりとあまり良い思い出がなくて。

だから第二子のときは、「幸せなお産にしたい」「自分の感覚を大事にしたい」という思いが強かったんです。

ライター・あつた:
なるほど。

第一夫人・ゆかりさん:
ただ、ひとつ問題があって。

家が山の奥地にあるので、自宅まで来てくれる助産師さんがいなかったんです。

ライター・あつた:
…ということは、完全に自分たちで子どもを取り上げたってことですか?

嘉克さん:
そうです。助産師さんに流れをイチから教えてもらって、3人で勉強しました。

第一夫人・ゆかりさん:
それを機に「本当にそれで命を取り上げられるの?」と、お互いさらに本音で向き合うようになりましたね。

ライター・あつた:
つまり、ゆかりさんが裕子さんの子どもを取り上げることも…?

第一夫人・ゆかりさん:
はい。助産師さんに電話やメールのサポートを受けながら、私が裕子さんの子どもを取り上げました

嘉克さん:
不安はありましたが、子どもは無事に産まれてきてくれました。あのときは嬉しかったですね。


裕子さん、第二子誕生の瞬間

ライター・あつた:
それにしてもすごい経験ですね…

嘉克さん:
自宅出産を通じて築き上げた信頼関係は本当に大きかったと思います。

それから出産する子どもは、自宅出産で取り上げるようになりました。

ライター・あつた:
そんな経験をしていたら、たしかに嫉妬どうこうの次元じゃなくなりますね…

でも、別の女性の子どもをとりあげるって、どういう感覚なんですか?

第一夫人・ゆかりさん:
私の代わりに妊娠してくれてありがとう、という気持ちですね。

第二夫人・裕子さん:
お互いがお互いの分身みたいな感じです。だからこそ私もゆかりさんに全部委ねられるし。

第一夫人・ゆかりさん:
お互いの赤ちゃんを取り上げる経験をしているので、もう一心同体だよね。

ライター・あつた:
おふたりの絆が、常軌を逸するレベルに深いことがわかりました。

「嫉妬しないんですか?」なんて野暮な質問をしてしまって、すみませんでした…

子どもがいじめられたことはない。もし問題が起きても逃げずに向き合う

ライター・あつた:
そんな経験を経て大家族になった西山家は、ふだんどのような生活をされているのですか?

嘉克さん:
子どもが6人いるので、いつもバタバタしてますね。

朝起きたら保育園に送迎して、料理は裕子さん、子どもたちの面倒を見るのはゆかりさんが担当することが多いです。



ライター・あつた:
にぎやかそうですね!

そういえば、お子さんはこの家族の形をどう捉えているのでしょうか? 「子どもがいじめられるんじゃないか」と心配するご意見もあると思うのですが…

嘉克さん:
長男以外はまだ小さいのでなんとも言えませんが、12歳の長男は少なくともこのスタイルを楽しんでいるように見えます

僕たちがこの形になるまでの過程はすべて伝えているし、一夫多妻のテレビ取材がきたときも彼は出演しているぐらいですから、理解はしてくれているようです。

第一夫人・ゆかりさん:
子どもたちにとっては、母親が家に2人いるのが普通なんですよね。

「なんで他のお家はママが2人いないの?」とたまに聞かれます(笑)。

ライター・あつた:
なるほど。息子さんがそれで悩んでいる様子はなさそうだ、と。

第二夫人・裕子さん:
そうですね。以前、テレビ取材を受けたときに「子どもがかわいそう」という批判がたくさんきたので、息子に聞いてみたことがあったんです。

「かわいそうって言われているみたいだけど、あなたは自分のことかわいそうだと思う?」って。

ライター・あつた:
そうしたら?

第二夫人・裕子さん:
長男は「全然そんなことない」「かわいそうじゃない」と答えていて。

ライター・あつた:
少し意外です。多感な時期だから気になるのかなと思ったのですが。

第一夫人・ゆかりさん:
彼のなかですべてを受け入れてるので、「いじめられたらどうしよう」という不安がそもそもないみたいです。

嘉克さん:
実際、いじめられることも今までなかったよね。

第二夫人・裕子さん:
うん。それを言ったら、どの家庭の子どもだっていじめられる可能性はありますよね。

もし仮に息子がいじめられたとしても、私たちは逃げずに向き合うって決めています



ライター・あつた:
「かわいそう」とか「いじめられるんじゃないか」とかって、案外私たちが勝手に決めつけているだけなのかもしれないですね…反省しました。

嘉克さんからの提案「結婚制度を『更新制』にしたほうがいいと思う」

ライター・あつた:
自分らしいパートナーシップの形を貫いている3人ですが、今の結婚制度に思うことはありますか?

嘉克さん:
ありますね。ぜひ提案したいことがあって。

ライター・あつた:
おお、なんですか?

嘉克さん:
僕、結婚は更新制がいいんじゃないかなって思うんです。たとえば、3年ぐらいの。



ライター・あつた:
更新制…? もうちょっと詳しく聞かせてください。

嘉克さん:
結婚する時点で「一生を誓います」って、結構難しいなと思っていて。

ライター・あつた:
それ、わかります…。「そんなのわかんないじゃん!」ってことですよね?

嘉克さん:
そうそう。相手に永遠の愛を誓うと、お互いに期待してしまいますよね。そこから苦しみが生まれる気がするんです。

だって別の人を好きになって、期待を裏切ってしまった時点でゲームオーバーじゃないですか。

そこからは裏切りがバレないように仮面をつけて、自分を偽らなきゃいけないというか。

ライター・あつた:
たしかに、そうですね。

嘉克さん:
なので、まずは「3年間お互いを真剣に大切にします」と約束する。そして3年経ったあとに、「またこれから3年一緒に生きたいかどうか」を決める。

そのほうが、本当の意味でお互いを大事にできるんじゃないかなと思うんです。

ライター・あつた:
期限があるからこそ、本気でお互いを大事にできるというのはあるかもしれないですね。

嘉克さん:
そうだと思います。「どうせ一生一緒にいる」と思って結婚にあぐらをかいていると、無意識のうちに気が緩んでしまう気がしていて。

何かモヤモヤすることがあっても「まあ明日伝えればいっか」 「波風立てなくていっか」と、どんどん後回しになってしまいますよね。

第一夫人・ゆかりさん:
で、女性はフラストレーションが溜まりに溜まって、ある日「さよなら」と離婚届を机に置いていく(笑)。

ライター・あつた:
リアルだ…

第二夫人・裕子さん:
私たちの場合、3年どころか毎日更新制のようなもので(笑)。毎日一緒にいる中で、失礼なことをされたらもう関係終了。

でも、その緊張感があった方がお互いを大切にしあえると思うんです。「明日大切にすればいっか」ではなく、「今日相手を大切にする」というのは徹底していますね。

ライター・あつた:
3人にとって「相手を大切にする」ってどういうことですか?

嘉克さん:
相手を知ったつもりにならないことですね。

ライター・あつた:
知ったつもりにならない、ですか。

嘉克さん:
「昨日は寄り添ってほしかったけど、今日はそっとしておいてほしい」ときってありますよね。昨日と今日の僕が違うように、相手も日々変化しています。

そういうときに「昨日は違ったじゃん!」「前はこう言ってたのに!」と言わずに、相手の「今」を知る努力をすることが大事だと思います。

ライター・あつた:
うーん、たしかに。

第一夫人・ゆかりさん:
私たちはお互いの「今」を知るために、3人で毎朝、自己開示を行ってるんです。「今の自分の状態はこうです」というのを共有していて。

第二夫人・裕子さん:
日々、自分の状態をオープンに伝え合ってるよね(笑)。


本当に楽しそうな3人

第二夫人・裕子さん:
でも私たちに限らず、相手の「今」を知って、受け入れて、自分がどうしたいかを伝えるというのは、人間関係を築くうえで大切なことだと思ってます。

ライター・あつた:
パートナーシップだけじゃなくて、人間関係全般において大事な話が聞けた気がします。たくさんのお話、ありがとうございました!

一夫多妻ということで、世間からは奇異の目で見られがちな西山家。しかし取材を通じて見えてきたのは、相手の「今」にとことん本気で向き合う3人の姿でした。

「嫉妬」という感情すらも乗り越え、お互いを「一心同体」と語る彼らは、うらやましくなるぐらい固い絆で結ばれていて。

あなたは今、パートナーを大切にできていますか?

そんなことを問われたような気がして、何度もドキっとした瞬間がありました。西山家のみなさま、価値観が揺さぶられるようなお話をありがとうございました!

〈取材・文=あつたゆか(@yuka_atsuta)/編集=渡辺将基(@mw19830720)〉

いやさかファミリー  
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