クルマを劣化させる原因のひとつに「塩害」があります。海に近い場所で影響を受けやすいものですが、嵐のあとは、たとえ内陸であっても塩害を受け、クルマが白っぽくなってしまうことも。どのような影響を与えるのでしょうか。

台風通過後、洗車コーナーに列

 金属にとって塩は大敵です。海に近い場所では、塩分を含んだ風がクルマの塗装に悪影響を与えることがありますが、このような「塩害」は必ずしも海に近い場所だけで起こるわけではありません。


全体に塩分が付着したクルマのイメージ(画像:piccaya/123RF)。

 たとえば2018年10月、台風24号の通過後に、南関東を中心に内陸部でも塩害が多発しました。台風によって巻き上げられた海水が、地上に吹き付けられたためです。

 千葉県や静岡県では電柱などに大量の塩が付着したことによって大規模停電が発生したり、農産物が被害を受けたりしたほか、塩分で車体や窓が白くなったクルマが、洗車コーナーに列をなす姿も見られたようです。このような台風通過後の大規模な塩害の事例は過去にもあります。

「沖縄などでは、台風の通過後は洗車する人が増えます。屋根付きガレージへの駐車や、クルマのさび止めコーティングなど、同地では塩害対策が一般に浸透していますが、大阪など本州の都市部では、そのような対策を知らない人も多いでしょう」

 このように話すのは、洗車に関する技能や知識などについての資格「洗車ソムリエ」の検定試験を行う日本洗車ソムリエ協会の担当者です。詳しく話を聞きました。

――台風通過後は洗車をしたほうがよいのでしょうか?

 なるべく早く洗車したほうがいいでしょう。風呂場の鏡が白っぽくなるのと同じで、塩分が粉っぽくなり、固まります。これを取る際に傷になるうえ、塗装の細かな穴に塩分が入りこんで、侵してしまうのです。放っておくと車体表面に錆びが発生します。

洗車のポイントは「下回り」

――洗車のポイントなどはありますか?

 車体表面は洗車機にかければOKですが、要点は下回りです。コイン洗車場の高圧洗浄機などで、よく洗い流すことが大切です。汚れの落ち具合でいえば理想はお湯ですが、重要なのは塩分を洗い流すことですので、水で大丈夫です。

――車種に応じて違いはありますか?

 欧州車などは雪が多いこともあり、下回り全体がアンダーカバーで覆われていたり、部品の接合部に鉄以外の部品が使われていることが多いのですが、国産車は鉄がむき出しの部分が多いでしょう。塩分により、鉄のネジが錆びて取れなくなるようなケースも多いですので、くまなく洗い流すことが大切です。


クルマの下回りを高圧洗浄するイメージ。台風通過後や、雪道を走ったあとは塩分をよく洗い流すことが大切(画像:Astrid Gast/123RF)。

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 内陸部の塩害で多いのは、冬場の融雪剤に使われる塩化ナトリウムや塩化カルシウムの影響が挙げられるでしょう。雪道を走ったあとはしっかり洗車しないと、やはり下回りを中心に錆びてきてしまうといわれますが、日本洗車ソムリエ協会の担当者によると、台風通過後の洗車も、それと同じことだといいます。

【写真】ガードレールがボロボロに 塩害の恐ろしさ


海辺のガードレールなどは塩害により重度の腐食が発生することも。写真はイメージ(画像:KOJI HIRANO/123RF)。