「店長だけどもう死ぬかも」朝までやってるラーメン屋問題 飲食業界の労働環境はいつになったら改善するのか
人手不足に悩む飲食業界。労働人口が減ったとはいえ、本当に問題はそれだけだろうか。はてな匿名ダイアリーには3月16日、「朝まで開店してるラーメン屋死ね。店長だけどもう死ぬかも」と訴える書き込みがあり注目が集まった。
投稿者は、24時間365日営業のラーメンチェーンの店長で、「今日は40日ぶりの1日休みだ死ね」というから異常なブラック環境で働く人である。
「政府は朝まで開店してるラーメン屋に制限をかけてくれ。もう限界だ」
と切実に訴えていた。(文:okei)
ベトナム人バイトが「店長が死ぬ」と上に抗議する状況
飲食業は大手ファミレスを中心に深夜営業をやめる動きも出てきたが、投稿者によるとラーメン屋は「締めのラーメン」需要を狙って朝まで営業している店が多いという。深夜早朝まで飲んでいた客を待ち、朝は次の仕込みに入るという終わりのない営業状態が続く。
「ベトナム人ですら『店長が死ぬ』と上に抗議してくれた。泣ける」
と綴る投稿者。人手不足のしわ寄せを一手に引き受け、疲弊しきっている様子だ。
しかしこの店長、ラーメンや仕事仲間は大好きで、基本的には好きな仕事をしている。ただ一つ許せないのが「経営者」で、上に対する怒りが収まらない。
「いつまで人件費ケチって不毛な長時間労働でしのぐつもりだ?全国展開?世界展開?なめてんじゃねーぞ。人が死ぬぞ」
既に別店舗の店長が倒れ、休職の後クビになったとも書く。とにかく24時間営業、朝まで営業を何とかしてくれと悲痛な叫びをあげていた。
ブックマークは500近く付き、多くのコメントが寄せられている。「辛そう」「逃げて」と同情的な声はもちろん、
「辞めろ。辞めないならお前も体制の加担者だ」
「法律は、権利を行使しようとしない人間を守らない」
などと突き放す声も多い。はたから見れば、そんな労働環境で働き続ける意味が分からないのも無理はない。
「嫌ならやめろは聞き飽きた」と反論も
対して、擁護の声もある。「逃げたくても辞めたくても出来ない、気弱でバカ正直な人間だっているから強制的な規制が必要なんでしょう?」と書いた人は、「イヤなら辞めろは聞き飽きた」と抗議している。飲食業は一人一人が変則勤務のため管理監督が難しく、長時間労働になりやすい。いっそ深夜営業を禁止にしてくれれば楽なのに……と考える気持ちは分かる。
また、コメントには「労働時間を記録して残業代を請求せよ」との助言も目立った。投稿者は残業代には触れていないが、「人件費ケチって不毛な長時間労働」ということは、「管理職」として残業代や深夜割増賃金が支払われていない可能性が高い。
同じようなケースで有名なのが、2008年の日本マクドナルド店長の残業代請求裁判だ。「管理監督者」として残業代を払わないのは違法だと訴え、退職せず勝訴したことで話題となった。つまり、雇われ店長に裁量などなく長時間労働が違法だと認められたのだ。
このケースでは、残業は月に100時間を超え、63日連続勤務などでぎっくり腰や手のしびれ(脳梗塞の前兆)など身体に深刻なダメージが表れていた。別の見方をすれば、ここまでにならないと訴えなかったのかと悔しさも残る。
こうした悪質なケースの多さから、厚生労働省は2014年によくある事例を挙げ注意喚起している。広報パフレットを読むと、投稿者が管理監督者に当たらないことがよく分かるが、注目したいのが
・管理監督者であっても長時間労働をさせてはいけない
・深夜(22時から翌日5時まで)割増賃金を支払う必要があり、年次有給休暇の特例も無く与える必要がある
という旨が明記されていることだ。投稿者は証拠を揃えて労基署に訴えれば、勝てる可能性が高い。(参照:「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」)
違法な長時間労働は業界の評判を落とすばかり
飲食業の人手不足は、これまで「嫌なら辞めろ」で辞めさせて待遇改善を怠ってきたツケも大きい。もちろん改善しているホワイトな職場もあるが、SNSで悪評が拡散した今、ブラックなイメージはなかなか拭えない。その負債を一店長に負わせたままで、事業が伸びていくだろうか。
今は売り手市場で中途採用も盛んだ。こんな働き者の経験者は引く手あまただろう。元気でラーメンを食べられるうちに、是非とも転職を考えて欲しい。