腕の組織から男性器を形成――性転換の全容を医師が解説「軟骨を入れて硬さを作ります」
ミュージシャンの西川貴教さんらが「学ぶ」をコンセプトに「身近で当たり前の事だけど詳しく知らないモノ、事」をテーマに深掘りしていく番組『西川学園高等学校、略してN高!』。
今回は“性転換”をテーマに、ナグモクリニック名古屋院長の山口悟さんを講師に招き、具体的な手術の方法をスライドショーで西川さん、土屋礼央さん、星田英利さん、IMALUさん、KABA.ちゃんさんに解説しました。
番組中ではKABA.ちゃんさんが、術前にIMALUさんの父でお笑い芸人の明石家さんまさんに、術例サンプルを見せて身体を選んでもらったことを告白し、IMALUさんが困惑する場面も……。
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KABA.ちゃんが性別適合手術前の葛藤を明かす「本当はゲイとして男性が好きなのかなとか考えたり」ホルモン療法でどこまで変化できる? 左から土屋礼央さん、山口悟さん。
土屋:
ホルモン療法で男性から女性になる場合は、こういうことになります。
山口:
乳房が大きくなる。そして筋肉が減って二の腕が細くなっちゃうんですよ。体毛が薄くなって、脂肪がだいたい下半身に集中してきます。ところが、声が高くなるとか身長が小さくなるとか、そういうことはありません。
KABA.ちゃん:
私は声を変える手術を受けて、ついでに喉仏も少し削ってもらったんです。
土屋:
ここで乳房がどのように丸みが出るのかという写真がこちらです。
山口:
ホルモン療法前と後です。
西川:
乳輪が全然違う!
山口:
色が濃くなりますね。
KABA.ちゃん:
ちょっとふっくらしてきます。
星田:
それは自分の肉なんですよね。
IMALU:
どんな感触なんですか?
KABA.ちゃん:
学生時代の発育している女子みたいな。西川さんは触ったことあるもんね。
西川:
ちょっとぽっちゃりした男の子っておっぱいがあるじゃないですか。あれに近い感じ。
KABA.ちゃん:
そうそう。
土屋:
肉体的なことより、メンタル面はどうなんですか。
KABA.ちゃん:
私はちょっと感情移入がしやすくなりました。たとえば映画とかドラマとかを自分の家で見ていて、こんなところで涙が出ないのに、涙が出そうになって出しちゃったりとか。気持ちがすごく入り込みやすくなりました。
星田:
母性やね。怒りの方は? すぐに怒りやすくなるとか。
KABA.ちゃん:
怒りやすいより、泣きたいとか感動とかですね。
星田:
たとえば僕らがどの期間、何本くらい打てばこうなるんですか。
山口:
年齢にもよりますね。若い方が反応がいいです。打ったり、飲んだり、貼ったり、塗ったり、4パターンあります。
土屋:
ここまでやって、止めれば戻るということですか。
山口:
戻らないです。全く同じにはならないです。
西川:
男性に投与した場合、こうなりますよね。たとえば女性でそれこそ胸が小さいとか、そういう悩みみたいなので打たれる方はいらっしゃるんですか。
山口:
それは間違った考え方で、女性は生まれたときからずっと女性ホルモンに曝露されていますから、そこで出来上がっちゃっているんですよ。新たに入れてもほとんど反応はしないんですよ。むしろ乳がんとか子宮がんとか、がんのリスクが高くなってしまいます。
土屋:
ホルモンを打つということは、ホルモンを生成するということでしょうか。
山口:
いろいろパターンがあるんですけれども、飲み薬なんかでは妊娠した馬の尿から生成されたお薬もあります。
土屋:
それはホルモンが出てるということですか。
山口:
そうです。尿の中に女性ホルモンが混じっています。
星田:
馬が一番いいんですか。
山口:
量が多くて一番効率がいいんです。
西川:
一時期、美容とかプラセンタとか、豚由来のものとか動物由来のものとかがあって、でもやっぱりヒトの方がいいんじゃないかという話もありますけれども、これは動物のものですけれども、中には牛乳とかも人間が分解できない成分もあったりするから、摂らない人もいるじゃないですか。そういうのは大丈夫なんですか。
山口:
歴史的にはそういうのは少なくなっていて、ほとんど化学合成です。ある種の有名なお薬が依然として尿から作られています。
土屋:
ここから性転換手術の流れを説明していただきたいと思います。
山口:
ちょっと難しいんですけれどもMetoidioplasty(メトイディオプラスティ)と言いまして、この手術をしないと戸籍が変えられなかったんです。ところが2007年くらいからはこれがなくてもよくなったので、必要性が落ちているんですけれども、要するに「ミニペニス」と言われる手術ですね。
ホルモン療法で陰核って大きくなるんです。通常のサイズの4、5倍になります。それをちょこっと前の方にずらすと、ペニスっぽく見えるですね。これを陰核形成と言います。そして尿の出口をだいたい5、6センチ前にずらすのを尿道延長と言います。
西川:
これは女性から男性になるパターンですよね。
山口:
そうです。膣を閉鎖します。
星田:
なにかを継ぎ足すんじゃなくて、ぐっと前に伸ばすんですか。
山口:
継ぎ足すんですよ。
IMALU:
痛い痛い痛い……。
土屋:
まだこれから痛いのが出てきますよ。
山口:
これが陰核が元々あった場所からお腹側にずらしている絵です。元々おしっこが出る場所がここです。カテーテルという管が入っていますけれど、ここにあった陰核を神経と血管をつながったまま、もってきます。
星田:
それはいわゆる、おちんちんを作るという作業ですか。
山口:
大きくなった陰核をずらすと、そう見えるというものですね。次にいきましょう。
こういうふうに膣の粘膜をひっくり返して、管を作ったり小陰唇の一部を使ったりして、三つくらい方法があります。元々の出口からずらします。
西川:
なるほど。尿道の下にあるから、それを陰核の方につなげて……。
山口:
陰核のすぐ下にずらします。
西川:
もうガンプラやん(笑)!
山口:
次にいきましょう。ここからお小水が出ます。
ここにカテーテルが入っている状態です。陰核が下にあったのが、上にきています。次にいきましょう。
これがビフォーアフターです。手術直後はお腹からお小水を出して、作ったばかりの水道管はすぐにお水を通せないので、何週間かこのままです。
西川:
塞いで別のところからおしっこを出すんですね。
土屋:
睾丸はどうなるんですか。
山口:
脂肪をここに入れたり、シリコンのボールを入れたりします。ここにシリコンボールがあります。
西川:
柔らかい!
KABA.ちゃん:
あぁ〜!
星田:
なにこれ!? 入浴剤でこういうのあるよね。
西川:
ジェルボールみたいな(笑)。
IMALU:
柔らかい!
土屋:
大きさもそれぞれあって選べるそうです。
星田:
それは患者さんの体格によって大きさが変わるんですか。
山口:
そうですね。
山口:
次にいきましょう。左図は下から見たらこうなりますよというものですが、右図は立ったらギリギリ小さいおちんちんが見えます。
西川:
もうほとんど男性ですね。
山口:
これで終わる人もいますけれども、陰茎を作ることもできて、難しい言葉でファロプラスティーと言います。
これは陰茎の断面図ですけれども、おしっこが通る尿道と硬い芯になる部分と、全体のシャフトという全体の構造になっていて、これを作る手術を、先ほどの手術の次の段階で行います。
これもまた難しいのですが、軟骨とかを入れたりして、硬さを作ったりとか、シリコンの棒を入れたりするパターンです。
土屋:
海綿体は作れないんですよね。
山口:
そうです。海綿体は都合よく硬くなったり柔らかくなったりするんですけれども、現代医療ではそれは作れません。常に硬いか、常に柔らかいかです。尿道は植皮という皮膚だけで作る場合と、巻き寿司みたいにして作る皮弁という二つがあります。
西川:
自分の腕とか?
土屋:
やっぱり自分の組織というのが大事なんですか。
山口:
もちろんです。自分の組織でないと作れません。次ですね。
山口:
これは腕で作った場合の絵ですけれども、腕の皮膚を剥ぎます。皮膚と皮下組織を取ります。筋肉を傷つけないですよ。そしてこれを巻いて神経と血管がついたままで、これをマイクロサージャリーでくっつけます。顕微鏡手術ですね。こうして出来上がります。
IMALU:
移植した跡は残るんですか。
山口:
とても残ってしまいます。
西川:
だって、これだけの皮下組織を全部取るわけですもんね。
IMALU:
跡はどんなふうになるんですか。
山口:
どうしても腕の太さが変わっちゃいます。
西川:
今こそ再生医療というか、iPS細胞とかで今後そういうものができるみたいな可能性はあるんですか。
山口:
かもしれませんけれどね。皮膚はできますけれども、皮下組織まではなかなか……。
星田:
内蔵みたいに移植っていうのも、これはまだ程遠い未来ですか。
山口:
今のところそうですね。それは究極の性別適合手術と言われていて、MTF(Male to Female 男性から女性へ)の人にお亡くなりになった人の子宮とか内蔵器をもらって、FTM(Female to Male 女性から男性へ)の人に亡くなった人のペニスをくっつけるとかですね。次お願いします。
山口:
ここに神経が通うので、つまむと痛いです。最終的に亀頭の部分を局所麻酔で作り出します。
星田:
機能はどうなんですか。
山口:
常にちょっと柔らかいか、硬いままです。
星田:
そっか、骨とかが入っているから。
山口:
だから大きすぎると困ってしまいます。邪魔になりますからね。
西川:
ちょっと神経の入ったペニスバンドをずっとつけている感じですよね。
土屋:
これが男性になった場合ですが、次はKABA.ちゃんがやった男性が女性になった場合も同じように見ていきたいと思います。
山口:
精巣を取って、陰茎を取って、輪郭を作る。あとは膣を作る。直腸の前、尿道の後ろ、図で言うと点線のところに穴を作る。ここに膣が出来上がるんです。
星田:
穴を開けないといけないんですね。
山口:
これが難しいんです。次にいきましょう。
山口:
膣形成といって、先ほどの膣に穴を開けて、それを置いておくとすぐに穴が塞がってしまうんですよ。ですので皮膚を反転して裏張りを作るとか、皮膚を移植して裏張りを作るとかして、穴を維持するわけです。あるいはS状結腸を引っ張ってきて膣を作ります。
星田:
手術方法は患者さんで選ぶんじゃなくて、先生が選ぶんですか。
山口:
患者さんが選びます。ざっくり言うと、陰茎が大きい人は反転が向いています。靴下をひっくり返すようにして、それを入れ込む。
KABA.ちゃん:
私、1回目の手術のときはそれでした。
山口:
陰のうがちょっと大きくて、陰茎が小さくなっている人は移植法なんかもできます。
IMALU:
裏返しにするのは、その位置で裏返しにするんですか。
山口:
ちょっと下になります。後ろ寄りになります。次にいきましょう。
山口:
陰のうと肛門の間に膣を作ります。次にいきましょう。難しい絵ですが、膀胱のすぐ下の極めて狭い空間に穴を通す。
西川:
すごいすれすれのところですね。
山口:
これがとても難しいんです。
西川:
これって内蔵がすごく近いじゃないですか。腹膜だったりとか、内蔵を守っている部分に近いじゃないですか。
山口:
これが難しいので、なかなか日本でできる医師が少ないんです。
西川:
逆に海外とかでも雑にやられちゃったら……。
山口:
腸に穴があいて便が出てきちゃったりとかします。
IMALU:
怖い怖い……。
KABA.ちゃん:
私、膣に穴があいたことがある。
土屋:
実はKABA.ちゃんは2回手術したことがあるんだって。
西川:
そうなの!? 1回しか聞いてない! ひっくり返すときに毛深かったから、ひっくり返すと毛が内側に来るじゃないですか。そうすると脱毛をきちんとしておかないと、中で毛が生えてきちゃう。
IMALU:
詳しいですね(笑)。
土屋:
次にいきましょう。
山口:
実は海綿体は三つの海綿体でできているんですよ。尿が通る尿道海綿体、陰茎海綿体というのが左右に1本ずつあって、3本が一体化しているんです。それを分解しましょう。
星田:
そこ切られたら終わりや……。
山口:
尿道を短くします。陰茎海綿体を全部根元から取っちゃいます。
西川:
これが命やのに……。
西川:
KABA.ちゃんは、身体のサンプルじゃないけど、こういうのにしたいなとか選べるの?
KABA.ちゃん:
そうそう。アテンド会社の方にお願いして、「こういうのがありますよ」みたいな感じで、9人分くらいのパターンを見せてもらいました。
星田:
それは手術した方の?
KABA.ちゃん:
そう。こういう感じですよっていう、すごい昔のやつでしたけど。
IMALU:
なにが違うんですか。
KABA.ちゃん:
微妙に見た目とか、膨らみがあるとかないとか、いろいろあって。
土屋:
でもそれって、どうやって選んだんですか。
KABA.ちゃん:
さんまさんに……(笑)。
IMALU:
えっ!?
KABA.ちゃん:
実はさんまさんに選んでもらったんですよ。
IMALU:
どういうことですか。
KABA.ちゃん:
さんまさんはハニートラップとかすごい引っかかるから……。
IMALU:
(笑)。
KABA.ちゃん:
身近で一番知ってる人がさんまさんだった。
IMALU:
父の女性経験の結果が……?
西川:
さんま師匠の好みになっちゃった(笑)。だから「お姉ちゃん」と呼びなさい。
IMALU:
絶対いやだ(笑)。なんだよもう〜!
KABA.ちゃん:
でもそのままじゃなくて、プラスアルファでオプションもつけたんです。
星田:
なにそれ?
KABA.ちゃん:
クリトリス小さめ、小陰唇短め。
西川:
そのオーダー方法、ラーメン二郎やん! マシマシやんか! なんやそれ(笑)。