自民党山東昭子元参議院副議長が、21日の党役員連絡会で「子供を4人以上産んだ女性を厚労省で表彰することを検討してはどうか」と発言し、批判を呼んでいる。朝日新聞が報じた。

山東氏は朝日新聞の取材に対し「女性活躍社会で仕事をしている人が評価されるようになって、逆に主婦が評価されていないという声もあるので、どうだろうかと発言した」と真意を説明しているが、これも火に油を注いでいる。

尾木ママ「発想だけでも批判されるべき」

教育評論家の尾木直樹氏は自身のブログでこの発言を取り上げ、

「子ども産まなくても結婚しなくても、みんなが幸せ感じる社会築きたい。政治家はその先頭に立つのが責務ではないでしょうか?【4人子ども産んだら厚労省から表彰】なんて【発想だけでも】批判されるべきじゃないでしょうか?」(句読点は編集部)

と批判。人事コンサルタントの常見陽平氏もブログで

「国民を産む機械くらいにしか思っていないのか。子供を授かることのできない夫婦の苦しみを理解しているのか。そもそも、結婚・出産・育児というライフイベントのあり方が変化していることをわかっているのか。本人に問いただしたい」

とコメントしている。

そもそも、仕事をしている女性と主婦が別物であるという山東氏の前提は時代に即していない。出産後も何らかの形で仕事を続ける女性が増える中、この捉え方は妥当ではないだろう。

また、発言の「主婦」が専業主婦を指すとして、山東氏の言うように今の社会で「評価されていない」のだとしたら、家事や育児など、これまで主に専業主婦が担ってきた労働を「女性活躍」の範疇に含めてこなかった国の責任もある。

表彰の良し悪しは置いておくとして、なぜ表彰対象が女性だけなのかという疑問もある。出産と子育ての負担が女性にかかりやすいのは自明だが、子育ては子供を産んだ女性と配偶者、パートナーと一緒に行うものだ。産んだ女性を表彰するとの発想の背景には、「子育ては女性のやること」との決めつけがあるようにも見える。

「子育てに全然適してない日本でよくまぁ4人も育てましたよ。その気概に乾杯ってこと?」との皮肉も

マタハラや待機児童問題、教育費負担の重さなど、子どもを産み育てる上で出てくる障害や不便が多い中、環境整備ではなく個人の動機付けで少子化改善を図ろうという目論見に違和感を覚える人は多いようだ。ネットでは、「表彰じゃなくて支援してください」との声や「4人子供産んだら表彰すんの? それってつまり子供を育てるのに全く適してない日本でよくまぁ4人も育てましたよ。その気概に乾杯。みたいな制度だと思うんだけど」との皮肉も出ている。

多産の女性を表彰する動きは、極めて全体主義的でもある。ナチスドイツでは1938年、子どもをたくさん産んだ女性への勲章として「母親十字章」が制定され、4人以上から人数に応じて銅、銀、金章を送られている。

ソ連も1944年に、10人以上出産した女性を表彰する「母親英雄」制度を設けていた。その後廃止されたものの、人口減少に歯止めをかけるため、プーチン大統領は、子どもの多い家庭を表彰する制度として2008年から同様の制度を運営し始めた。山東氏の発言から「ナチスの母親十字章と同じ発想じゃんヤバすぎ」「母親英雄かな?」と思い起こす人もいるようだ。

日本でも戦時中、10人以上の子供を産み、戦死や天災以外の理由で死なせていない家庭を表彰する「優良多子家庭表彰制度」があったことが分かっている。