アンディ・マレー、錦織圭、ノバク・ジョコビッチ【写真:Getty Images】

写真拡大

全米オープンは世界ランクトップ11のうち5選手を欠く異常事態

 男子テニスのグランドスラム今季最終戦、全米オープンはトップランカーに欠場者が相次ぐ悲劇に見舞われている。かつて元日本代表MF中田英寿氏も治療を受けたイタリアの権威あるスポーツ医療センター「イゾキネティック」の関係者は、オフの短さとコートのサーフェスを“元凶”に列挙した。イタリア紙「ガゼッタ・デロ・スポルト」が報じている。

 世界ランキング1位のラファエル・ナダル(スペイン)、同3位のロジャー・フェデラー(スイス)が出場するとはいえ、今年の全米オープンはグランドスラム最終戦としては一抹の寂しさは拭えない。

 世界ランク2位のアンディ・マレーが臀部の故障で棄権を決断し、膝負傷の前回大会王者スタン・ワウリンカ(スイス)、右肘負傷の同5位ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、右手首負傷の世界ランク10位・錦織圭(日清食品)、左手首負傷の同11位ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)も欠場を発表。世界ランクのトップ11のうち、5選手を欠く異常事態だ。

 ジョコビッチ、錦織、ワウリンカは今季残りのシーズンを休養に充てることをすでに表明。マレーは「チームと相談することにする。専門家とも話し合って、年末まで復帰できるか様子を見る」と話しているものの、ラオニッチとともに今季中の復帰は疑問視されている。

イタリアの専門家は「オフの短さ」と「サーフェスの負担」を指摘

 同紙はスタープレーヤーが続々と離脱する現状を特集。イタリア伝説のファンタジスタであるロベルト・バッジョ氏や元日本代表MF中田氏の治療に従事した実績を持つボローニャの治療施設「イゾキネティック」のディレクター、マイケル・ダヴィンソン氏は「オフシーズンに(年始の)全豪オープンのために集中して練習を積んでいる。過剰な練習がリスクになる」と語っている。

 記事によれば、臀部に痛みを抱えるマレーは昨年、11月20日までに86試合をこなした一方で、1月の全豪オープンに向けた練習を12月30日には再開させていたという。

 度重なる故障に苦しむ世界ランク28位のフアン・マルティン・デルポトロ(アルゼンチン)の執刀医であるリチャード・ベルガー氏は、「試合が多すぎて、選手が回復する時間が少なすぎる。公式基準を満たしているコートのサーフェス、下のセメント部分が関節部分に負担をかけている」と分析。短すぎるオフの問題以外に、協会の基準を満たすハードコートの硬さが選手の関節にダメージを与えていると主張している。

 今季はフェデラーとナダルの両レジェンドが完全復活を果たし、アレクサンダー・ズベレブ(ドイツ)ら若手の台頭という明るい話題もあったが、トッププレーヤーの相次ぐ故障離脱に打つ手はあるのか。テニス界は重要な問題に直面している。