<G20の夕食会で隣りに座った安倍昭恵夫人が「ハローさえ言わない程」だったと言ったトランプはアメリカでバッシングを受け、昭恵を「英雄視」する声に押され気味>

今月ドイツ・ハンブルグで開催された20カ国・地域(G20)首脳会談後の7日の夕食会で、ドナルド・トランプ米大統領は、隣の席に座っていた日本の安倍昭恵・首相夫人が「英語を全く話さなかった」と発言したため、異論が噴出している。

7月19日付のニューヨーク・タイムズ紙のインタビューでトランプは、昭恵が「『ハロー』も言わないほど」英語を話さなかったので、世界の首脳とそのパートナーが親交を深め合った2時間近くの間、昭恵との間には会話がまったく欠けていた、と話した。トランプによれば、夕食会そのものは和やかに進行したが、コミュニケーションは困難だったという。

「日本語の通訳が1人いたが、もしいなかったらもっと(会話は)大変だったろう」と、トランプは話す。「それでも彼女はとても素敵な女性で、夕食会は楽しかった。すべてはうまく行った」

だが、問題が1つ。昭恵は本当は英語を話せるはずだ、ということだ。

インタビューが掲載された翌日、ある動画がネット上で拡散された。2014年にニューヨークで開催された国際シンポジウムで、昭恵が日本の海洋環境について基調スピーチをする様子が映っている。昭恵は15分間のスピーチを読み上げ、笑顔で一礼し、「サンキュー」と締めくくっている。

「昭恵が英語を話せないはずはない」の根拠

動画が拡散され、ジャーナリストがトランプの主張に反論するにつれ、昭恵を「英雄視」する人々も現れた。

ニューヨーク・タイムズの東京支局長モトコ・リッチは、トランプの発言を「見当違い」とツイート。ニュースサイト「デイリー・ビースト」の記者、スペンサー・アッカーマンは、夫の安倍晋三首相がかつて米議会で英語で演説したことから、「妻の昭恵も『ハロー』くらいは知っているはず」と書いた。極めつけに、英ガーディアン紙のコラム二スト、ジェシカ・バレンティが、「トランプとの会話を避けるために、2時間近く英語を話せないふりをした」、という自説を展開した。

夕食会の席上、昭恵とトランプの間で本当に何があったかはわからないが、その間、トランプは席を立ってプーチンと1時間近く話し込んでいる。非公式で友好的で、安全保障上の慣習に反してアメリカ側の通訳も挟まないお喋りだった。

プーチンとの会話を「密談」と批判されたトランプは、昭恵夫人とほとんど話せなかったのを彼女の英語のせいにしようとしているのかもしれない。

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ジュリア・グラム