鴻海子会社化により、シャープの業績がV字回復
4月28日、シャープが2017年3月期の連結業績を発表した。売上高は前年比17%減の2兆506億円。3年連続の減となり、2014年3月期の売上高2兆9,271億円に比較すると30%もの減少になった。
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一方営業利益は624億円の黒字になり、前年の▲1,619億円、前々年の▲480億円から3年ぶりにV字回復を果たした。V字回復の要因を振り返り、今後の進め方を考えてみよう。
■シャープの長期低迷の原因 シャープは1912年早川徳次が東京で創業した会社でシャープペンシルの発明によりアメリカで大ヒットしたが、1923年関東大震災でシャープペンシル工場が焼失し、早川は家族を全員失い、大阪で再起を図ることになったのである。
その後世界で初めてターンテーブル式電子レンジ、液晶表示のCMOS式電卓を開発するなど技術のシャープで伸びてきたが、営業販売力が弱く次第に他社に圧倒された。
自社技術への過信がシャープを巨額の設備投資へ走らせることになり、2006年までに亀山の液晶工場に4,000億円、2007年までに堺の液晶と太陽電池の工場に1兆円の設備投資が行われた。
急激に潮目が変わったのは2008年9月のリーマンショックの発生である。この頃から始まった普及型の液晶テレビ、太陽電池パネルの中国メーカーの追い上げなどにより、シャープの経営悪化が始まった。2009年3月期から8年間の累計赤字額が1兆5,000億円にも達し、2013年3月期には5,453億円の純損失を出して3,000人が、2015年には45才以上の3,234人が、それぞれ希望退職で会社を去った。
2016年8月債務超過を免れるため鴻海精密工業から3,888億円の出資を受け、子会社となったのである。
■シャープのV字回復の要因と今後の進め方 V字回復の第一の要因は、鴻海が世界最大の電子機器受託製造会社であり、その傘下で資材調達コストの削減、販路の拡大に取り組みたことで、エネルギーソリューションやディスプレイデヴァイスなど売り上げ減少率が高い部門を含めて、全事業部門で営業黒字を確保することができた。
第二の要因は進めてきたリストラにより、売り上げが減少する中でもコスト削減効果が生きてきたことだ。
これまでは構造改革として、経営資源の最適化、外部との契約見直し、責任ある事業体制の構築などで成果を上げてきたことが分かる。
今後は家電メーカーから人に寄り添うIoT企業として、市場も日本中心からグローバル展開を目指して技術への積極投資、新規事業の加速、グローバルブランドの強化などを進めていく。今後は5月26日の中期経営計画発表を見守りたい。