北朝鮮の核実験場周辺では、放射性物質からの被曝により病気になる人が続出していると伝えられているが、女性がそのような男性と強制的に結婚させられていると、脱北者が証言した。香港のサウスチャイナ・モーニング・ポストが報じた。

韓国の脱北者団体、自由統一文化院のイ・エラン院長は、同紙の記者に対して、強制結婚の実例を紹介した。

20代後半のリ・グムスクさんは学校卒業後、朝鮮労働党から核研究機関で技術者として働いていた経歴を持つ男性と結婚するよう求められた。彼の経歴などについて詳細は何も知らされなかったが、結婚する以外の選択肢はなかった。

「自分は、夫が核開発に貢献したことへの『報酬』として提供された」 リさんがそのことに気づいたのは、結婚した後のことだった。

夫は性機能障害と、記憶力が減退する精神障がいを抱えており、まるで子どものように振る舞い、暴力まで振るったという。

そんな夫に耐えられなくなったリさんは、結婚から半年で離婚届を提出した。ところが、当局から返ってきたのは、離婚許可ではなく、収容所送りという刑罰だった。何とか生きながらえ、脱北して韓国にやってきた父親を通じて、イ院長に窮状を訴えたという。

自身も脱北者であるイ院長は、「北朝鮮の核開発に携わっていた男性と結婚させられ、DV被害者となった女性が大勢いる」と述べた。また、核開発に携わった多くの人が死亡したり、障がいを負ったりしているとし、証言者が自身の親戚から聞いたという、次のようなエピソードを紹介した。

寧辺(ニョンビョン)の核施設に、近隣の分江(プンガン)物理大学の卒業生100人が動員された。防護服とマスクを着用した上で作業にあたったが、しばらくして亡くなる人が続出した。10人は生き残ったものの、病気に苦しめられた。ある人は歩けなくなり、ある人は臀部と肛門に腫瘍ができた。またある人は30歳になる前に歯が全部抜けてしまった。

北朝鮮が核開発に力を入れ始めたのは1980年代からだが、現場で働く科学者や周辺住民の安全は二の次にされており、それは今も変わらない。

韓国の洪容杓統一相は、8月にカザフスタンで開催された国際会議で「咸鏡北道(ハムギョンブクト)吉州(キルチュ)郡豊渓里(プンゲリ)の核実験場から30キロしか離れていない村出身の脱北者によると、地域住民の多くが癌、心臓病、感覚異常、麻痺などの疾患を抱えている」と述べた。

統一省は、この地域出身の脱北者を対象に、健康調査を行う方針を示している。