以前、「マンガ『はだしのゲン』が学校図書室で閉架扱いされる・撤去される」という騒動が話題をさらいましたが、個人的にはとんでもない話です。同作品は、戦争の悲惨さを今に伝える良き教材。筆者も、幼き日の夏休みに読んで感銘を受けた記憶があります。

コンセプトは「『はだしのゲン』でアーリーレイブ、テクノを更新(リロード)する」


しかし、その側面だけで取り上げられることに憤りを感じた人がいる模様。2000年より『はだしのゲン』公式ファンサイトを運営していたデザイナー・みちさんが立ち上げたブランド「The BarefootGen Designers Republic(はだしのゲンデザイナーズ・リパブリック)」が発表するアイテム群がスゴいです。




コンセプトは「アーリーレイブ、テクノを『はだしのゲン』で更新(リロード)する」。いやはや、それにしても……。
「90年代のクラブカルチャー、特にハードコアテクノやガバを20代前半に通過した経験が個人的にあります。そしてクラブへ遊びに行く際、ハロウィンや祭事のようなノリやファッション以外に、とにかくくだらないデザインでも普段着のように誰しもが着れるTシャツがないものかと思い、このブランドを3年前に立ち上げました」(みちさん)
みちさん自身がガバを中心とした音楽活動を行っており、一方で『はだしのゲン』公式ファンサイトを運営している。両者の要素をぶっ込んで昇華した結晶が、このブランドなのです。

『はだしのゲン』とクラブカルチャーにシンクロニシティを感じた


公式ファンサイトを運営しているみちさんだけに、『はだしのゲン』には熱い一家言がある模様。ブランドのHPにはこう書いてあります。
「はだしのゲンに纏い付く『政治性』みたいなものに違和感を覚え、<漫画>『はだしのゲン』として楽しみたいというような思いで、今まで活動してきました」
「中沢さん(『はだしのゲン』作者・中沢啓治先生)の創作した漫画であるはずが、なにか反戦平和の教典(聖典)のようになってしまっていることです」
「もっと肩を張らずに、私は中沢先生の絵や創作した『はだしのゲン』をはじめとする作品そして力強い絵のタッチが大好きで、世になにか違う形で、はだしのゲンをアウトプットできればと考えています」

では、みちさんは『はだしのゲン』をどんなテンションで読んでいるのでしょう?
「幼少期、図書室に『はだしのゲン』はあったのですが、当時は恐怖で読めませんでした。18歳になり、広島出身の先輩の部屋へ遊びに行くと全巻揃っていたので読むと、ゲンのサバイバル感が面白かったんです。エクソダス的カタルシス、作者の中沢先生の怒りなど、当時クラブカルチャーの中ではかなりマイナーであったガバでの活動とシンクロニシティを感じることもできました」(みちさん)

不意に『はだしのゲン』とクラブカルチャーに親和性を見出してからは、もう虜! そして、2013年にブランドを立ち上げるまでに至りました。
「多くのアーティストの方に、私の強引で無理やりに近い形でのオファーにご賛同いただきました。『はだしのゲン』を読んだことのないアーティストの皆さんには、必ず『はだしのゲン』の漫画を郵送して読んでいただいてから制作していただいています」(みちさん)

『はだしのゲン』とエイフェックス・ツインが共演


『はだしのゲン』でアーリーレイブ、テクノを更新すると、こういうTシャツが出来上がります。


これは、同ブランドの一番人気『Come to Daddy(I will eat your soul)』(6,500円)。エイフェックス・ツインの不気味な笑顔に、ゲンたちが驚きおののいているという構図がハートに響きます。

でも、こういうTシャツってどういう人が買っていくのだろう……。やっぱり、『はだしのゲン』を好きな方ですか?
「どうなんでしょうか……。なんとも言えないのが実情です」(みちさん)
要するに、幅広い層にアピールしているのでしょう。もちろん、反響も続々と寄せられている。
「基本的には、『ダサい』とか『ひどい!』とか言われてますね(笑)。そんな反響も含めて、中沢先生の無骨なタッチの『はだしのゲン』的で大好きです」(みちさん)

無骨でありつつ、前衛的。"ポップアイコン"としてゲンが生き抜く姿が、このブランドには息づいています。
(寺西ジャジューカ)