現代から約5億4200万〜2億5100万年前にあたる古生代の海に生息していた謎の生物が「トゥリモンストゥルム」です。これは現在のアメリカ・イリノイ州あたりに存在した内海を泳いでいたとされているのですが、あまりに奇怪な特徴を持っており、化石が発見されてから半世紀もの間、誰も詳細がつかめずにいた謎の生物でした。そんなトゥリモンストゥルムの詳細がついに明らかになりました。

The ‘Tully monster’ is a vertebrate : Nature : Nature Publishing Group

http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature16992.html



307-million-year-old “monster” fossil identified at last | Ars Technica

http://arstechnica.com/science/2016/03/307-million-year-old-monster-fossil-identified-at-last/

トゥリモンストゥルムの化石を最初に発見したのはフランスのフランシス・タリー氏。彼はイリノイ州で1958年に発見されたわずか10cmの小さな動物の化石の中に、トゥリモンストゥルムの化石のカケラを見つけます。そして、タリー氏はこの謎の生物に「Tullimonstrum(タリーの怪物)」という学名をつけたのですが、これは「タリー・モンスター(Tully monster)」という愛称でも知られています。



化石の分析から明らかになったトゥリモンストゥルムの全体像は以下の画像のとおり。体から長く伸びる柄のような部位の先っぽは二股に開いており、歯のような尖った物体が見られることから、これが口であると考えられます。また、体にはえらがあり、後部の尾ひれを使って海の中を泳ぐ模様。目も非常に特徴的で、体から左右に伸びており広い視野角を保っているものと推測できます。



トゥリモンストゥルムは古生代の後期(約3億5920万〜2億9900万年前)石炭紀に生息していた生物です。当時、グレートベースンは巨大な内海であったと考えられており、ここにトゥリモンストゥルムが生息していたと考えられています。この時代の木々は群生していたため高レベルの酸素が大気に充満しており、8フィートもある巨大な節足動物など、多くの不可思議な生物が生息していたと考えられています。

Natureでトゥリモンストゥルムに関する論文を公開した研究チームは、走査電子顕微鏡を使って化石の内外を徹底的に分析しており、その結果、驚くべきことに無脊椎動物であると考えられてきたトゥリモンストゥルムには背骨らしきものが存在することが明らかになっています。これまで、考古学者たちは「トゥリモンストゥルムは無脊椎動物で、現在のカタツムリなどの祖先かもしれない」と考えていましたが、口と腸が結合した構造が骨格を想像するヒントとなり、現代のメクラウナギやヤツメウナギのような生物であったことが明らかになった模様。



メクラウナギとヤツメウナギは口に鋭い歯を持っていますが、「トゥリモンストゥルムの口の構造は、分岐する口先で食べ物をつかみ、舌器官でこするようにしていたであろうことを連想させます」と論文の著者は記しています。