フランスではどれくらいの人が同性婚を挙げているのか?

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同性間カップルが結婚できる国は世界にいくつかある。フランスもその1つだ。同国では2013年5月に、世界で14番目に同性婚を認める国となったが、同性婚の成立までには、賛成・反対両者から大規模なデモが起きるなど、国民全体を巻き込む大きな議論になった。同性間での結婚が認められるようになって1年以上が経過した今、フランスの状況はどのようになったのだろうか。

AFPが報じたパリ市の統計によれば、2014年には同市内で1331組の同性間カップルが結婚したという。これは全体の13.48%になるそうだ。パリ市は20の区に分かれており、各区で同性婚に対して地域差がある。そのなかで、もっとも同性婚の比率が高い区が4区(32.2%)だ。同区はゲイタウン、そしてパリの流行の発信地として有名なマレ地区を含む地域であり、リベラルな風潮が強い。一方、もっとも割合が低かった場所は16区(6.2%)だった。ここは高級住宅地が広がる保守的な地域である。

同性婚がスタートした2013年(2365組:14.41%)と比べてみると、2014年は同性婚の割合と数は下回った。2013年が高いのは、今まで同性間の結婚を待ち望んでいたカップルが多数結婚したからだろう。フランス全体の結婚数を見てみると、INSEE(仏国立統計経済研究所)によれば、2013年は23.8万組のうち同性間は7000組で、全体の3%を占めた。

フランス政治を動かす主な政党は、オランド大統領が所属する社会党の左派、かたやサルコジ前大統領の国民運動連合(UMP)の右派やマリーヌ・ルペン党首の国民戦線といった極右など、リベラルと保守に二分される。基本的に前者は同性婚に賛成し、後者は反対している。そして同性婚の割合が高い区は社会党の支持者が多い。

同性婚は、社会党のオランド大統領が掲げてきた公約の一つだ。今までフランスではPACS(民事市民協約)という、成人したカップルが性別を問わず安定した共同生活を営めるように、婚姻関係と同等の権利を認める制度はあったものの、結婚は認められていなかった。異性間カップルと同等の権利を持てることは、同性間カップルにとっての悲願だった。

ただし、同性婚の議論は結婚ということだけにとどまらない。同性婚と同時に、同性間カップルによる養子縁組も認められた。養子となる子供は、異性間か同性間か両親を選べない。そのため、同性婚は支持するが、養子縁組については反対という人も多い。

日本と比べ、フランスは同性婚が成立する以前から同性間カップルに寛容だった。それにもかかわらず、同性婚の成立には、社会が揺れに揺れた。合法化以降も議論は続いているものの、同性婚は一つのあり方として、すでに社会で受け入れられつつある。人間が多様である以上、選択肢は多くあった方がいい。
(加藤亨延)