広島復帰を決めた黒田博樹 決断へと導いた「実直」な人間性とは

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27日の夜中に衝撃のニュースが飛び込んできた。

「広島東洋カープに黒田博樹が復帰する」

はじめ、このニュースを聞いたとき、思わず飛ばし記事ではないかと思ってしまった。というのも、今年、ヤンキースでプレーした黒田自身はまだまだ通用しており(5年連続2桁勝利)、メジャーで20億円ほどの契約をするのではないかとの報道もあった。そのため、その黒田がその地位を捨ててまで、日本に帰ってくるとは思わなかったからだ。とはいえ、このニュースは飛ばし記事ではなく、紛れもない事実である。

では、なにが決め手となり、黒田は広島移籍を決意したのだろう。そのことを理解する助けとなるのが、「決めて断つ」(著:黒田博樹/ベストセラーズ)

実は黒田自身、ドジャースとの契約が切れてFAとなっていた2012年、ヤンキースに行くべきか広島カープに行くべきかギリギリまで悩み、1回は日本に帰ろうと思うから、カープでお世話になりたいという電話をした。しかし電話の後、まだアメリカに未練があることを感じて結局はヤンキースでプレーすることを決断したのである。

私たちからすると、黒田のような決断を迫られたときどうしても「お金をいくら貰えるか」中心に考えてしまう。実際にネット上でも、アメリカでプレーすればいまだに20億円ほどの年俸が得られる黒田を、広島カープはそんな額を払えないから獲得できないという声がいくつも見られた。だが、黒田自身は、お金を判断基準にはしていなかったらしい。
“分かりやすい判断基準がないのである。提示された年俸だけで決められるなら、どれだけ楽だったことか”
と黒田は述べている。

そんな黒田博樹をひとことで表すなら、まさに「実直」だ。それを象徴するエピソードがある。

2011年、当時ドジャースに在籍していた黒田はトレードの候補となった。トレードを提示した球団はどこも優勝争いをしているチームばかりだ。このような場合、トレードを受けて優勝争いができる場に身を投じるケースがほとんどである。
しかし黒田は「トレードで移籍した球団で仮に優勝しても素直に喜べない」と考え、優勝の可能性が高いチームを断り、たとえ優勝の可能性が低くても残留して、長い間ともに戦ったチームメイトと戦う決断をした。これは、メジャーリーグではありえない選択であり、事実、「優勝を狙えるチームから誘われているのに、なにを考えているんだ」と批判するメディアもあった。

これらのエピソードを見てみると、黒田が移籍する際に、決して「お金」のことだったり「そのチームが強くて優勝できるか」ことだったりを考える人間ではないことが分かる。ともすると、黒田が今回、まだアメリカでプレーする実力を残しているにもかかわらず、広島カープに戻るという決断にも納得だ。

そして本書の中では、「決断すること」についての黒田本人の考え方が書かれている。それは、ひとつの道を選ぶには徹底的に考え抜くことが必要で、選んだからには自分の選んだ道が正解となるように努力すること大切。いうものだ。

黒田が徹底的に悩んだ末に決断したであろう今回の広島復帰を歓迎するとともに、彼が広島カープを優勝へと導き、選んだ道が正解になることを期待したい。
(さのゆう)