イタリア・ヴェローチェ。1900年代前半のロードレーサーのディテールを踏襲したスチームフレームバイク

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ここ数年、自転車ブームだ。いや、私の周りに関していうなら、自転車通勤ブームというべきか。スポーツとして本気に取り組むというよりは、「健康に良さそう」「満員電車がイヤ」といった理由から、気軽に自転車通勤を始める人が増えてきた。

そうした人たちが乗っている自転車の多くは、クロスバイクとかロードバイクとか呼ばれるもの。機能性や仕様に優れ、見た目にも速そうだ。デザインも、おそらくメーカーごとに個性があるのだろうが、私のような素人が見ると派手なカラーリングや大きなメーカーロゴなど全体的にスポーツ色が濃いところは似ているような気がする。

ところが先日、ちょっとユニークな自転車ブランドが上陸した。イタリア・パルマ生まれの「イタリア・ヴェローチェ」だ。私のような自転車ビギナーが一見しただけでも、巷の自転車とは雰囲気がまったく違うことがわかる。シンプルなのに洗練された佇まいは、まるでオブジェのような美しさ。お気に入りの洋服を着て走る姿が絵になるような、乗らなくてもただそこに置いているだけでインテリアになるような……。そんな自転車なのだ。

日本での販売は今年12月からスタート。販売元であるコイイト代表の瀬谷孝一郎さんに話を聞いた。
「私自身、洋服や家具が好きなのですが、イタリア・ヴェローチェはお気に入りの洋服を着て走ることが似合う自転車だということ、家具のように家に保管してもインテリアとして成立することに最も魅力を感じます」

最大の特徴はそのフレームだ。アルミやカーボン素材が主流の現在にあって、あえて重いスチールを採用。イタリアではフレームを作る“フレームビルダー”なる職人がいて、スチールのフレーム作りはいわば伝統工芸。最近はスチールのヴィンテージ自転車なども再び人気を集め、スチール回帰への動きも少なからずあるという。

「イタリア・ヴェローチェ」ではそんなスチールフレームに独特のサビ加工を導入。通常なら防止したいサビをあえてつけるという発想がおもしろい。一定期間フレームを腐食させてから、サビの進行を抑えるオイルを塗り込む加工を施しているのだそう。サビの風合いはそれぞれ違うから、まったく同じデザインにはならないのも魅力だ。

もちろん、デザインにこだわるあまり、機能がおろそかというわけではない。「イタリア・ヴェローチェ」は2009年創設という若いブランドだが、創設者のマックス・キアッポーニさんは大手ロードバイクメーカーの技術者に師事。同ブランドの自転車は1900年代前半のスタイルをベースにしつつも、現代の街乗りのためのデザインや機能も付け加え、バランスよく仕上げられている。

価格はスタンダードモデルで19万8000円(税抜)。決して安いとはいえないが、完全受注生産であることやイタリアから輸送されることを考えると納得。フレーム、サドル、ホイール、タイヤ、ペダルなどのパーツは好みのものにカスタマイズもできるから、オンリーワンな自転車がほしい人にはうってつけ。ちなみに納期は注文後1〜2カ月とのこと。

ターゲットは、こだわりや世界観をしっかりと持っている人。実際、デザインやプロダクト、ファッションが好きな人などからの注文や問い合わせが多いそう。
「みなさんの生活に長く寄り添うプロダクトになって欲しいですね。乗るもよし、飾るもよしですので。ギアのないシングルスピードで、ゆっくりとした漕ぎ味なので街乗りも遠乗りも優雅に楽しめます」
ちなみに瀬谷さん自身も7〜8年前から自転車通勤者なのだとか。

商品は実際に、渋谷Novore(渋谷駅前の日替わりショップスペース内)で、毎週日曜日11:00〜19:00(※2015年1月からは毎週金曜日15:00〜23:00)に見ることができる。

なんとなく自転車に興味はあったものの、これだという自転車に出会えていなかった人、知る人ぞ知るブランドに惹かれる人など、気になった人はまずは気軽に見に行ってみては?

■イタリア・ヴェローチェ
042-810-2012
(古屋江美子)