鳴門渦潮vs高知 鳴門渦潮、2試合連続サヨナラ勝ちで8年ぶり決勝進出!

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鳴門渦潮、2試合連続サヨナラ勝ちで8年ぶり決勝進出! 

9回裏サヨナラ安打を放った2番・中川武士(鳴門渦潮)

 試合前、鳴門渦潮・高橋広監督と高知・島田達二監督が共にポイントとしてあげたのは「連投の先発がどれだけ投げられるか」。その出来は対照的なものとなった。

 前日に強打西条打線を6回わずか84球で2安打無失点に封じた高知先発左腕の鶴井 拓人(2年)は、初回二死二塁から鳴門渦潮4番・多田 大輔捕手(3年)に甘いボールを左前に痛打され1点を失うと、3回にも多田の連続タイムリー含む4連打で2失点。4回以降2番手の酒井 祐弥(3年)が伸びのあるストレート、落差のあるカーブ・フォーク・スライダーを駆使し「よく試合を作っていい投球をしてくれた」(島田監督)ことで試合は接戦に持ち込めたが、10日間で5試合を戦う短期決戦となる夏の高知大会を見据える上において大きな課題を抱えたことは確かだろう。

 一方、1回戦では三本松相手に延長10回を力投した鳴門渦潮左腕・松田 知希(3年)。この日はその影響で自慢の最速141キロストレートが走らず、スライダー・チェンジアップ・フォーク主体の投球を強いられた。

 が、それでも135球6安打5奪三振4与四死球3失点完投。3点先行直後にもかかわらず2暴投と守備の乱れも絡み7番・杉本武蔵右翼手(3年)に2点適時打、代打・藤堂雅己(3年)にも適時打を浴びてたちまち同点に追いつかれた4回表の内容を除けば「連投でも余裕があった。少しは進歩したと思う」と高橋監督も合格点を与えるものだった。

 こんな両校の思惑が交錯する中、クライマックスはまたも終盤に訪れる。9回裏、鳴門渦潮は先頭の途中出場7番・近本直球三塁手(2年)が遊撃手上を越える安打で出塁すると、ベンチは連続犠打を指示。「酒井くんが変化球の制球に自身がなさそうだったので、サードに置いたらストレート主体になると思った」名将の読みは、四球後、2番・中川武士二塁手(3年)による「テンションは上がったけれど、外より高めストレートを右方向は意識して打った」一・二塁間サヨナラ安打。2試合連続サヨナラ勝ちにつながった。

3回裏、右前適時打を放った4番・多田大輔(鳴門渦潮)が

 かくして一昨年4月の統合後初、前身の鳴門工・鳴門第一時代を含めると8年ぶり4度目の春季四国大会決勝進出を決めた鳴門渦潮。しかし常に最悪の事態想定から物事を組み立てる高橋監督は決勝戦の話になると途端に表情を曇らせる。

 「4月19日の練習試合では岸(潤一郎)くんに7回コールドで完全試合をされてますからねえ。しかも1個も外野へ飛球が飛ばなかった。正直、明徳義塾とはやりたくないですよ」

 確かに1990年代から2000年代にかけて甲子園を席捲。2005年夏の第87回大会準々決勝ではいまやMLBニューヨーク・ヤンキースの勝ち頭である田中 将大が2年生エースだった駒大苫小牧を土俵際まで追い込んだ鳴門工「うずしお打線」のような猛打は正直ない。

 ただ、現在広島でプレーする3年前の大黒柱・美間 優槻や、現チームの高校通算本塁打12本の5番・平間 隼人遊撃手(3年・主将)、高校通算本塁打15本の多田大のように「ツボに入れば何かを起こせる」雰囲気は現在も十分に漂っている鳴門渦潮。

 そこに2試合連続サヨナラ勝ちにもつながった「松田が踏ん張って流れを逃さない」(平間)戦いができれば、初の春季四国王者獲得も不可能ではない。

(文=寺下 友徳)