「Safari」の開発者が語る、iPhone誕生秘話とスティーブ・ジョブズという人物
By Darren Harvey
初代iPhoneは2007年の1月9日に開催されたMacworldにて正式発表され、同年6月に発売され世界的な旋風を巻き起こし、TIMEのInvention Of the Yearにも選定されました。そんなiPhoneの開発に携わり、プリインアプリの「Safari」や地図アプリにも深く関わったFrancisco TolmaskyさんがThe New York Timesのインタビューに応じ、iPhone誕生秘話や当時のスティーブ・ジョブズ氏について語っています。
An iPhone Engineer-Turned-Game Maker Shares His Apple Story - NYTimes.com - NYTimes.com
http://bits.blogs.nytimes.com/2014/04/24/ex-iphone/
そんなTolmaskyさんとAppleが初めてコンタクトをとったのは、彼が南カリフォルニア大学のコンピューターサイエンス学科の卒業を間近に控えていた頃でした。Appleのリクルーターと初めて対面した際、リクルーターはすぐにTolmaskyさんがブラウザのレンダリングエンジンであるWebKitをいじくりまわしているデベロッパーコミュニティの一員であることに気づき「すぐにAppleで働いて欲しい」と申し出ます。それから数ヶ月後、2006年の第1四半期からTolmaskyさんは本格的にAppleで働くことになるわけですが、この時AppleのCEOであったスティーブ・ジョブズ氏は約1か月の休暇をとっている最中だったので、正式な採用通知をもらうためにジョブズ氏が仕事に復帰するのをずっと待つ必要があったそうです。
そんなこんながあった後、TolmaskyさんはiPhone開発チームでウェブブラウザの開発を担当することになります。TolmaskyさんたちiPhone開発チームの仕事場は他の従業員から隔離された区画で、さらにチーム内でもハードウェア組とソフトウェア組に分けられて離されたので、1つのチームとして一緒に働くことはなかったとのこと。これらは、iPhoneに関するあらゆる秘密が漏れないようにするための措置だそうです。
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ソフトウェア組はさらにウェブチームとアプリチームに細分化されており、Tolmaskyさんは5人のメンバーで構成されたウェブチームの中で、モバイルブラウザ(後のSafari)の開発に着手します。ソフトウェア組には特定のリーダーがおらず、プロジェクトごとに異なるリーダーを据えるというスタイルで、Tolmaskyさんがリーダーとなって進められたのが「iPhone専用ウェブブラウザの開発」であったそうです。また、オリジナルのiPhoneが出荷されるまでソフトウェア組は多くのソフトウェアに携わることになったことも明かし、Tolmaskyさんは初期のiPhoneに搭載されていた地図アプリの作成にも深く関わっていた、と語っています。
一般オフィスから隔離されたiPhone開発チームの元にジョブズ氏は週2回以上の頻度で訪れたそうで、ジョブズ氏はチームを訪れる度にあらゆる試作品や試作機能のフィードバックを行ったとのこと。その際には「iPhoneは魔法のようである必要がある。だがこれは魔法と呼ぶには不十分だ!」とよく言われました、とTolmaskyさんは当時を振り返ります。さらに、非常にフラストレーションが溜まっていたことを告白し、ジョブズ氏の言う「魔法のような端末」の作成はほとんど不可能なタスクに思えていたとことも打ち明けています。
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さらに、初代iPhoneの「キーボード」は、ジョブズ氏がiPhoneの試作キーボードのデザインが気に入らず、チーム全員に1週間丸々キーボードに関するアイデアを考えさせた際に生まれたものだとTolmaskyさんは明かしました。Tolmaskyさんによると、彼の所属していたウェブチームが出したキーボード案がジョブズ氏に採用され、その後しばらくはキーボードに関するタスクのみを延々とこなしていたそうです。
あまり知られていない話としては、2007年1月に開催されたMacworldの開催数週間前になってジョブズ氏が「iPhoneに地図アプリが欲しい」と言い出したことを挙げています。TolmaskyさんのチームメートであったChris Blumenbergさんがこのタスクを割り振られ、展示用の機能的な地図アプリを開発するまで彼はノンストップで働き続けたそうです。Tolmaskyさんいわく「彼は一週間以内に動作する地図アプリを作成し、次の週にはMacworld Expoでそのアプリが公開されていました」とのこと。
地図アプリ作成を命じられたChrisさんは、ジョブズ氏から「これは重要で、実際に動く必要がある。そして君ならこれを動かすことができる」と言われたそうで、こういった言葉こそがジョブズ氏が持っている「特殊な影響力のようなもの」とTolmaskyさんは表現しています。
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また、iPhoneのデザインチームには「スティーブ」という名前のメンバーがおり、ジョブズ氏と名前が同じなため度々ミーティングの際に混乱が生じたそうです。ジョブズ氏はこれに関して相当フラストレーションが溜まっていたようで、「ちょっと聞いてくれ。君はこれから『マーガレット』だ」とデザイナーの「スティーブ」さんに言い放ち、それ以降デザイナーの「スティーブ」さんは周りからマーガレットと呼ばれるようになった、とのことです。
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Tolmaskyさんが2007年にAppleを去ったのは、「iPhoneが成功を収めたことでチームが大きくなり、優先事項が変わったから」と述べ、スタートアップ企業の様な感覚がAppleからなくなってしまったため自分で起業したのだと語っています。
なお、現在Tolmaskyさんはスマートセンサーに特化したゲーム、つまりはモバイル端末内の加速度センサーやジャイロスコープなどを活かしたゲームの開発行っています。彼が新しくリリースした「Bonsai Slice」は5人の開発チームで作成したアプリで、剣を振るようにiPadを振り、スクリーン上のあらゆるものを切る、というアプリになっています。
Bonsai Slice Game Trailer - YouTube