関東一vs修徳
今大会より1番に定着したオコエ瑠偉（関東一）
昨夏の東東京代表修徳と、この春選抜に出場した関東一の対戦。この時期、選抜出場校はややもすれば中だるみのような状況になることがあるが、関東一の場合は、チーム内の競争がそれを許さない。この日も、1番中堅手・オコエ 瑠偉、4番左翼手・五十嵐滉希は、選抜でベンチにすら入っていない。その中でもオコエは抜群の身体能力で、春季大会は1番中堅手に定着している。それまでこの座は、熊井 智啓のものだった。その熊井はこの試合7番右翼手として出場し、3打数3安打1四球に盗塁も2つ決めている。
「複数のポジションを守る子が多く、競争は激しくなっている」と、関東一の米澤貴光監督は言う。この試合、攻撃面で関東一の勝利に貢献したのは、新1番中堅手のオコエと、それまで１番中堅手であった熊井だった。
修徳の先発は昨夏、甲子園のマウンドを踏んだ桜井 政利ではなく、身長186センチ、体重85キロとがっちりした体格をした背番号1の上島 迅翔。上島は長身からキレのあるスライダーを投げ関東一を苦しめたが、球にばらつきがあり、投球数が多くなっていた。
関東一は3回表、オコエが左前安打で出塁すると、続く篠原泰成は送りバント。これが修徳三塁手の野選となった。さらに伊藤 雅人は四球で無死満塁。続いてこの日4番に入った五十嵐滉希への2球目が暴投となって関東一は先取点を挙げた。
関東一の先発はエースの羽毛田 晶啓。羽毛田は、1回10球、2回、3回ともに7球、4回8球と、少ない球数で修徳打線を抑えていった。ただ5回裏は、一死後修徳の5番内村魁成が右前安打で出塁すると、続く平松魁斗は遊ゴロ。これを遊撃手が二塁に送球するも間に合わず、さらに二塁手は一塁に暴投して一死一、三塁。続く阿天坊 直樹が右中間に適時打を打って、修徳は同点に追いついた。
力投する羽毛田（関東一）
しかし関東一は6回表にこの回先頭の熊井が中前安打で出塁すると、すかさず盗塁。さらにエース・羽毛田自らセンターに弾き返して、あっさり勝ち越した。なお、この打席羽毛田は右打席で適時打を打ったが、その前の2打席は、これまで立ったことのない左打席に立ち、2打席とも三振に終わっている。「本人が左でも打ちたいという希望があって、試しに打たせてみた」と、関東一の米澤監督。羽毛田の探求心の表れである左打席であったが、結果を出したのは、右打席であった。
8回表はこの回先頭の熊井が中前安打で出塁したものの、盗塁は失敗。ところが、続く五十嵐 雅大が左中間を破る二塁打。続く羽毛田は右打席で左前安打を打ち、一死一、三塁。ここでオコエがセンターにきっちり犠飛を打ち、関東一は3点目を挙げた。
一方羽毛田は、投げる方では得点を許した5回こそ21球を投げたものの、後は危なげなく投げ抜いて、結局9回を87球、奪三振はわずかに2ながら、被安打6、失点1で完投勝利を収めた。
修徳は3番酒井 良樹、4番森生貴が完全に抑えられて攻撃の広がりをみせることができなかった。ただ投手陣は桜井だけでなく、上島もいることを十分印象付ける好投をした。しかしながら、この試合投球数は169。四死球は8、暴投も3と、荒れ球が傷口を広げたことは、夏への課題として残った。
準決勝進出を決めた関東一は、次は帝京と対戦。修徳に続き東東京のライバル対決となるものの、「手の内を隠さず挑んでいきたい」と米澤監督。関東一は現在のところ、夏に向けての試行錯誤が、むしろチーム内の競争を生み、チームを活性化させるという好循環の中にある。
（文＝大島 裕史）
