成立学園vs二松学舎大附
先頭打者HRを放ちチームを勢いづけた岩成（成立学園）
成立学園の菅沢剛監督は試合後、「これはまぐれです」と語るほど、成立学園の良い面ばかりが目立った一戦だった。
この試合二松学舎大附の先発は、肘が本調子でないエース大黒 一之でも、この大会2試合を完投した岸田 康太でもなく、背番号15の3年生赤木亮太であった。身長186センチの長身から、腕をやや下げて投げるフォームは、阪神の藤浪 晋太郎に少し似ている。二松学舎大附の市原勝人監督は、「投球練習はしてきましたが、元はショートをやっています。内野の練習をやっていて、送球が強くなってきたので、潜在能力を試してみたいという、好奇心もありました」という先発起用であった。もちろん、好投すれば二松学舎大附にとって明るい材料になる。
そんな期待も、1回表成立学園の1番岩成 亮祐がライトに先頭打者本塁打を放ち、いきなり打ち砕いた。この大会ブロック予選から勝ち上がってきた成立学園であるが、守りの良さは光っていたものの、打線の方は今一つパッとしなかった。しかし成立学園の菅沢監督が「初回のホームランで勢いづきました」というように、成立学園は得点を重ねていった。
4回は7番山下 翔の中前適時打、5回は四球と盗塁で二塁に進んだ岩成を、3番小山拳士郎が右前安打で返し、6回には5番大橋拓水の本塁打で、1点ずつを挙げた。8回には布施大樹の二塁打などヒット5本を集中して3点を挙げ、大量リードを奪った。
2失点完投勝利を収めた小寺（成立学園）
投げては身長165センチと小柄な左腕木寺 凌世が、腕の高さを微妙に変えながら、コーナーを丁寧に突く投球で二松学舎大附打線を翻弄。5回に二塁打の2番北本一樹を犠打、内野ゴロで返した1点と、3番竹原 祐太の本塁打による1点の2点だけに抑えた。菅沢監督から「ランナーだけはためるな」と指示されていた木寺は、与えた四死球はわずか１。注目の打者である5番秦 匠太朗を無安打に抑えるなど、東京屈指の強力打線である二松学舎大附に反撃の機会を与えなかった。
一方二松学舎大附の赤木は、被安打13で7点を奪われたが、四死球は3に抑え、大崩れはしなかった。市原監督にしても、「まあまあかな」という評価だった。ただ捕手との呼吸など、バッテリーとしては課題が残った。
この夏の東東京大会は、高いレベルでの激戦が予想される。夏に向けて市原監督は、バッテリーの強化、対応能力を高めることともに、「諦めない心。精神的な勢いをつけていきたい」と語った。二松学舎大附が優勝候補であることは間違いない。ただ激戦を勝ち抜くには、実力プラスアルファが必要なのかもしれない。
成立学園の菅沢監督は、「向こう（二松学舎大附）の方が、力があるのは分かっています」と語っているものの、チームは一戦一戦、力をつけてきている。
成立学園は2年前の夏に甲子園大会に出場して以来、目立った結果を残していない。けれどもこのチームは、エースの木寺 凌世をはじめとして、体はさほど大きくないものの、何かをやりそうな可能性を秘めたチームになりつつある。
（文＝大島 裕史）
