最優秀オーディオブック作品に『海賊とよばれた男』
不況に喘ぐ出版業界の中で、少しずつ成長を続ける市場がある。それが、「オーディオブック」だ。
日本の最大手となるオーディオブック配信サービス「FeBe」( http://www.febe.jp/ )は、開設から7年で会員数は10万人を超え、これまでの主要コンテンツだったビジネス書や自己啓発書だけにとどまらず、『海賊とよばれた男』や『ロスジェネの逆襲』など、ベストセラー文芸作品のオーディオブック化に積極的だ。運営元である株式会社オトバンク代表取締役社長の久保田裕也氏によれば、年間で約3000作品を新しく提供できる体制を整えているという。
3月5日にオトバンク主催によって行われた「第5回オーディオブックアワード」の受賞作品は、まさにオーディオブック文化の定着を予感させられるものになった。
その年の最も優秀な作品に贈られる「オーディオブック・オブ・ザ・イヤー」に輝いたのは、百田尚樹氏のベストセラー小説『海賊とよばれた男』(講談社/刊)だった。実は文芸作品が「オーディオブック・オブ・ザ・イヤー」を受賞したのはこれが初めてのことだ。
この『海賊とよばれた男』は今年1月1日と2日、二夜連続でニッポン放送でオーディオブックのダイジェストを放送し、一方「FeBe」でフルバージョンが購入できるという新たな試みが行われた。その結果、ラジオでのダイジェスト放送をきっかけにオーディオブックを利用する人が増えたと久保田氏は壇上で報告した。
エンターテインメント作品がオーディオブック・オブ・ザ・イヤーに輝いたということは、これまでのビジネス書・自己啓発書ユーザーだけはない、より幅広い層にオーディオブックが認知されてきたという証拠だろう。
「第5回オーディオブックアワード」では、声優による受賞作品の生朗読も披露された。
企画として独自性の高いオーディオブックに贈る「企画賞」の受賞した『文芸あねもねR』(文芸あねもねR制作委員会/制作)では、発起人の井上喜久子さんと田中敦子さんが登壇し、オリジナル台本による「文芸あねもねR劇場」を披露。井上さんは「女性作家さんたちが、皆さん作家として何ができるかという想いを込めて書かれたチャリティー書籍を、私たち声優は何ができるかなという気持ちで朗読させていただきました」と『文芸あねもねR』への想いを語り、田中さんは、井上さんの「書ける人が書き、読める人が読み、歌える人が歌い、そして演じられる人が演じる。そういった自分の持てる力を使って、長く被災地を支援していきたい」という言葉や『文芸あねもね』の中につづられていた文章の一節を引用しながら、これからも『文芸あねもねR』を通して復興支援を続けていく意志を述べた。
最も評価の高かった文芸書のオーディオブックに贈る「文芸書部門大賞」には、テレビドラマで人気を博した池井戸潤氏による「半沢直樹」シリーズの3作目『ロスジェネの逆襲』(ダイヤモンド社/刊)が選ばれた。ここでは主人公・半沢直樹役の白石稔さん、渡真利忍役の平松広和さん、そしてナレーションを担当したサカウエ稔さんが壇上でワンシーンを再現。白石さんによる「倍返しだ!」というセリフには、大きな拍手があがった。
さらに、「オーディオブック・オブ・ザ・イヤー」の贈呈時には、『海賊とよばれた男』で主人公の国岡鐵造を演じた俳優・中村雅俊さんからビデオメッセージが寄せられ、「トータルとしては20数時間という長さの作品になりました。当然、録音にはその倍以上時間かかり、大変な作業になりましたが、それも今思うと、良い思い出になりました。受賞を嬉しく思っています」と受賞の喜びが伝えられた。
また、登壇した『海賊とよばれた男』の著者・百田氏も「この賞は、中村雅俊さん、國村隼さんはじめ演者の皆さんが素晴らしいということに尽きると思います。このオーディオブック、聴くと一気に夢中になります。本当にありがとうございました」とオーディオブック版『海賊とよばれた男』の魅力を語った。
新たなジャンルの開拓とともに、少しずつその輪を広げつつあるオーディオブック。久保田氏によれば、今後オフラインにも積極的に展開していくという。出版不況打開への光明として期待がかかるオーディオブックのこれからに注目したい。
(新刊JP編集部)
■受賞作品一覧
【オーディオブック・オブ・ザ・イヤー】
『海賊とよばれた男』(百田尚樹/著、講談社/刊、中村雅俊・國村隼 他/朗読)
【ビジネス書部門大賞】
『スタンフォードの自分を変える教室』(ケリー・マクゴニガル/著、神崎朗子/翻訳、大和書房/刊、吉川雅子/朗読)
【文芸書部門大賞】
『ロスジェネの逆襲』(池井戸潤/著、ダイヤモンド社/刊、白石稔 他/朗読)
【企画賞】
『文芸あねもねR』(文芸あねもねR制作委員会/制作、井上喜久子・田中敦子 他/朗読)
【優秀作品賞】
『統計学が最強の学問である』(西内啓/著、ダイヤモンド社/刊、渡辺博之/朗読)
『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(入山章栄/著、英治出版/刊、市村徹/朗読)
『7つの習慣―成功には原則があった!』(スティーブン・R・コヴィー/著、キングベアー出版/刊、茶川亜郎/朗読)
『『雨と夢のあとに』オーディオドラマ版』(柳美里/原作、成井豊+真柴あずき/脚本、演劇集団キャラメルボックス/朗読)
『桐島、部活やめるってよ』(朝井リョウ/著、集英社/刊、阿部大樹・高槻陽一・下田麻美・斉藤壮馬・原紗友里・近藤佳奈子 他/朗読)
日本の最大手となるオーディオブック配信サービス「FeBe」( http://www.febe.jp/ )は、開設から7年で会員数は10万人を超え、これまでの主要コンテンツだったビジネス書や自己啓発書だけにとどまらず、『海賊とよばれた男』や『ロスジェネの逆襲』など、ベストセラー文芸作品のオーディオブック化に積極的だ。運営元である株式会社オトバンク代表取締役社長の久保田裕也氏によれば、年間で約3000作品を新しく提供できる体制を整えているという。
その年の最も優秀な作品に贈られる「オーディオブック・オブ・ザ・イヤー」に輝いたのは、百田尚樹氏のベストセラー小説『海賊とよばれた男』(講談社/刊)だった。実は文芸作品が「オーディオブック・オブ・ザ・イヤー」を受賞したのはこれが初めてのことだ。
この『海賊とよばれた男』は今年1月1日と2日、二夜連続でニッポン放送でオーディオブックのダイジェストを放送し、一方「FeBe」でフルバージョンが購入できるという新たな試みが行われた。その結果、ラジオでのダイジェスト放送をきっかけにオーディオブックを利用する人が増えたと久保田氏は壇上で報告した。
エンターテインメント作品がオーディオブック・オブ・ザ・イヤーに輝いたということは、これまでのビジネス書・自己啓発書ユーザーだけはない、より幅広い層にオーディオブックが認知されてきたという証拠だろう。
「第5回オーディオブックアワード」では、声優による受賞作品の生朗読も披露された。
企画として独自性の高いオーディオブックに贈る「企画賞」の受賞した『文芸あねもねR』(文芸あねもねR制作委員会/制作)では、発起人の井上喜久子さんと田中敦子さんが登壇し、オリジナル台本による「文芸あねもねR劇場」を披露。井上さんは「女性作家さんたちが、皆さん作家として何ができるかという想いを込めて書かれたチャリティー書籍を、私たち声優は何ができるかなという気持ちで朗読させていただきました」と『文芸あねもねR』への想いを語り、田中さんは、井上さんの「書ける人が書き、読める人が読み、歌える人が歌い、そして演じられる人が演じる。そういった自分の持てる力を使って、長く被災地を支援していきたい」という言葉や『文芸あねもね』の中につづられていた文章の一節を引用しながら、これからも『文芸あねもねR』を通して復興支援を続けていく意志を述べた。
最も評価の高かった文芸書のオーディオブックに贈る「文芸書部門大賞」には、テレビドラマで人気を博した池井戸潤氏による「半沢直樹」シリーズの3作目『ロスジェネの逆襲』(ダイヤモンド社/刊)が選ばれた。ここでは主人公・半沢直樹役の白石稔さん、渡真利忍役の平松広和さん、そしてナレーションを担当したサカウエ稔さんが壇上でワンシーンを再現。白石さんによる「倍返しだ!」というセリフには、大きな拍手があがった。
さらに、「オーディオブック・オブ・ザ・イヤー」の贈呈時には、『海賊とよばれた男』で主人公の国岡鐵造を演じた俳優・中村雅俊さんからビデオメッセージが寄せられ、「トータルとしては20数時間という長さの作品になりました。当然、録音にはその倍以上時間かかり、大変な作業になりましたが、それも今思うと、良い思い出になりました。受賞を嬉しく思っています」と受賞の喜びが伝えられた。
また、登壇した『海賊とよばれた男』の著者・百田氏も「この賞は、中村雅俊さん、國村隼さんはじめ演者の皆さんが素晴らしいということに尽きると思います。このオーディオブック、聴くと一気に夢中になります。本当にありがとうございました」とオーディオブック版『海賊とよばれた男』の魅力を語った。
新たなジャンルの開拓とともに、少しずつその輪を広げつつあるオーディオブック。久保田氏によれば、今後オフラインにも積極的に展開していくという。出版不況打開への光明として期待がかかるオーディオブックのこれからに注目したい。
(新刊JP編集部)
■受賞作品一覧
【オーディオブック・オブ・ザ・イヤー】
『海賊とよばれた男』(百田尚樹/著、講談社/刊、中村雅俊・國村隼 他/朗読)
【ビジネス書部門大賞】
『スタンフォードの自分を変える教室』(ケリー・マクゴニガル/著、神崎朗子/翻訳、大和書房/刊、吉川雅子/朗読)
【文芸書部門大賞】
『ロスジェネの逆襲』(池井戸潤/著、ダイヤモンド社/刊、白石稔 他/朗読)
【企画賞】
『文芸あねもねR』(文芸あねもねR制作委員会/制作、井上喜久子・田中敦子 他/朗読)
【優秀作品賞】
『統計学が最強の学問である』(西内啓/著、ダイヤモンド社/刊、渡辺博之/朗読)
『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(入山章栄/著、英治出版/刊、市村徹/朗読)
『7つの習慣―成功には原則があった!』(スティーブン・R・コヴィー/著、キングベアー出版/刊、茶川亜郎/朗読)
『『雨と夢のあとに』オーディオドラマ版』(柳美里/原作、成井豊+真柴あずき/脚本、演劇集団キャラメルボックス/朗読)
『桐島、部活やめるってよ』(朝井リョウ/著、集英社/刊、阿部大樹・高槻陽一・下田麻美・斉藤壮馬・原紗友里・近藤佳奈子 他/朗読)