薬のネット販売にひそむ落とし穴

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 インターネットで簡単に薬を買うことができる時代ですから、少し体調が悪いくらいでわざわざ病院に行き、薬局で薬剤師に処方された薬を飲む人はもしかしたらこれからどんどん少なくなっていくかもしれません。
 では、もう薬剤師に存在意義はないのでしょうか?いえいえ、決してそんなことはありません。

■ネットで薬を買う時の落とし穴
 ネットやドラッグストアで薬が買えるという、その手軽さは確かにメリットで、無視することはできません。そして、妊娠検査薬や薄毛対策の薬など、対面販売では買いにくい薬があることも事実です。
 しかし、薬について知識を持たない人が自己判断で薬を買って飲むというリスクは思いのほか大きいということもわかっておかないといけません。『なぜ、あなたの薬は効かないのか?薬剤師しか知らない薬の真実』(深井良祐/著、光文社/刊)によると2007年〜2011年の5年間で、一般用医薬品(ドラッグストアやインターネットで買える薬)による死亡例が24件、重篤な副作用となると毎年250件も報告されているといいます。

■賢く薬剤師を「利用する」
 いうまでもなく「安全性」や「副作用」といった面では、薬局で薬剤師に説明を受ける「対面販売」の方に分があります。
 どの薬が適しているのか、ということだけでなく、他に服用している薬との飲み合わせに問題がないか、それとも一般用医薬品ではなく、医療機関を受診して医療用医薬品を処方してもらうべきなのか、といった総合的な判断をしてくれるのです。
 そして、薬の効果や副作用に疑問が生じた時や、新しく健康食品やサプリメントを購入しようと思った時に相談に乗ってもらえるのも大きなメリットだと言えます。こうして、自ら積極的に情報を取りにいくことで、薬についての正しい知識が蓄えられ、副作用などのリスクをさらに回避しやすくなるはず。薬の調合だけではなく、私たちが安全に薬を使えるよう、一人ひとりに合ったやり方を考えるのも薬剤師の仕事なのです。

 理系で難しいイメージがある薬ですが、本書では特別な知識を持たない人にもわかりやすく薬の効果や仕組みが説明されています。
 薬によって体調を整えられるか、かえって悪化させてしまうかは、薬をどれだけ知るかによって決まります。一生お世話になるものだからこそ、自分や自分の家族が辛い思いをしないように、正しい知識をつけておきたいものですね。
(新刊JP編集部)