人生の成功につながる“清貧”の思想

写真拡大

 どのような心持ちで人生を切り開いていけば幸せになれるのか。
 そのキーワードが「清貧」だ。「清貧」の心掛けは人生の成功につながるのだ。

 『清貧を楽しむ。 ―人生哲学として読み直す『養生訓』』(高橋聰典/著、東洋経済新報社/刊)では、『養生訓』の言葉が現在においてどのように生かせるのかを著者の高橋氏自身の経験や心理カウンセリング・コーチの事例などを用いて紹介する。

 「清貧」とはどのような意味なのだろうか。国語辞典の『デジタル大辞泉』によれば「私欲をすてて行いが正しいために、貧しく生活が質素であること」という意味だとある。
 江戸時代に健康書として書かれた『養生訓』は、「私欲を捨てること」「正しい行いをすること」「贅沢をしないこと」を説いていて、まさに「清貧」の考えを知るのにはうってつけなのだという。
 1713年、貝原益軒によって上梓された『養生訓』は、江戸時代の後期には庶民の最も身近な教養書として親しまれ、明治になると道徳教育にもその影響が見られるなど、近代日本の人間形成に大きな役割を果たしてきた。現代では、健康書としてのイメージが強い『養生訓』だが、身体の問題と心の問題は切っても切り離せないと考えられていたため、「心」を養う教えにも満ちているのだ。

 著者によれば、『養生訓』の考え方は、「欲を抑えることが、楽しみを失わないことにつながる」(巻頭二-三八より)という一文に集約されているという。
 ここで見落としてはいけないのが「欲を抑える」という部分だ。いくら楽しくても、その快楽に溺れてしまっては身を滅ぼすことになってしまう。
 楽しみとは、誘惑に負けて遊ぶこととは違う。楽しみとは、努力を惜しみ、怠惰を許すことではないはずだ。「欲を抑える」とは、しっかりと正しい道に導くために自分を戒めることができるようになることであり、そうなって初めて本当の「楽しみ」に出会うことができるという。
 自分を戒める力が弱いままに無暗に楽しみを模索してしまうと、快楽に溺れてしまう。
 人生の目的に向かって続く道を歩むためには「楽しみ」は必要だが、同時にそれを判断・自制する「戒め」ももっておくことが大切だと著者は説く。

 心理カウンセラーの高橋氏は、今の日本人のカウンセリングに有効であると考え、『養生訓』の言葉を取り入れている。そして、その効果も得ているという。幸せな人生を送るためにも、心身のケアは必要なことなのだろう。
(新刊JP編集部)