東京都心で数センチ以上降灰か--大規模な火山災害を想定、政府検討会が提言

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内閣府の有識者会議「広域的な火山防災対策に係る検討会」(座長:藤井敏嗣東京大学名誉教授)は16日、大規模噴火が発生した際に国や地方自治体が取り組むべき対策についてまとめた「大規模火山災害対策への提言」を発表した。

提言によると、東日本大震災発生後の日本は、火山活動が活発だった9世紀の状況に似ているとの声もあり、今世紀中に大規模な火山災害が発生する恐れもあるという。だが、従来の火山対策は地方自治体が主体で、国による広域的な対策はとられていなかったため、既存体制では対応が難しい事案の発生が懸念されていた。

提言は、溶岩流や灰など火砕物の総噴出量が1億立方メートル(東京ドーム約80杯分)〜数10億立方メートル規模の噴火を大規模噴火と定義。火山地域では、溶岩流や火砕流などによる被害が予想されるほか、東京都都心部でも数センチ以上降灰する可能性がある。火山灰が堆積すると、車両の通行、航空機や鉄道の運行に支障が生じ、農林畜産業にも甚大な被害が見込まれるという。

しかし、多くの火山地域では、ハザードマップや実践的な避難計画の策定が進んでいないのが現状という。提言では、国と地方自治体が協力してハザードマップを作成するよう促すとともに、避難時期と避難対象地域を段階的に設定した避難計画の策定を要望。このほか、広域一時滞在協定の締結、運送事業者との住民輸送に関する合意や協定なども求めている。

また、大規模噴火発生時は国の積極的な関与が重要だとし、国に対して、応急的な対処方針の作成を要請しているほか、国が知事や市町村長に対し、住民の「避難指示の発令」を指示することができる仕組みを整えるべきだとした。このほか、現地連絡対策室の速やかな設置、地方自治体と災害対策本部等との合同会議の開催を提案している。

降灰対策については、交通機関や電力供給施設、健康、農作物などに与える影響、およびそれらが複合した結果である産業構造や社会システムに及ぼす影響について、総合的に研究する体制の整備ならびに推進を要望。併せて、堆積情報の収集や除灰機材の確保、優先的に除灰する道路の選定、除灰作業を円滑に進める仕組みの構築を求めた。

提言では、現在の観測体制の不備についても言及。監視観測・調査研究体制の強化、および長期的な視点から見た火山専門家の育成、人材の確保が必要だと指摘している。