「今のペースで気軽に負け続けてたら、DeNAの話題もレバ刺しとともに消えるだけよ」と語る元ベイスターズの中野渡進氏

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レバ刺しが消える! 厚生労働省は7月1日から牛の生レバーの提供を禁止することを決定した。食肉業界が強く反発するなか、本誌は裏メニューながら“都内屈指のレバ刺し”を出すと評判の「もつ鍋わたり」店主・中野渡進氏(元横浜投手→ケンカして退団)を直撃した!

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―今回は“レバ刺し規制”について現場の声を聞きにきました。

中野渡 レバ刺し? モバ浜(DeNAベイスターズ)の最下位のことじゃねぇのか?

―はい。モバでなくレバです。

中野渡 ウチはまだ常連さんには辛うじて出してるけど、規制されたらそれも終わり。まぁ、もともとメニューにも載せてねーから、店側も客もそこまでの危機感はねぇよ。この前もロッテの選手が8人来て「まだある?」とも聞かずに全員注文してたわ。レバ浦さん(=福浦和也。無類のレバ刺し好き)も通常どおり4人前食ってたし。たぶんあの人、生肉騒動知らねーんじゃね?

―規制後はどうされるんです?

中野渡 禁止なんだからやめるしかねぇだろ。出すならカツオみてぇに炙(あぶ)って“タタキ”にするしかねぇだろ。業界では、O−157ってのは、「1分間75℃のお湯(O)で消毒すれば菌は死ぬ」って言われてんだ。覚えとけよ。

―勉強になります。

中野渡 けどよ、保健所や製薬会社の人なんかも「レバーなんかで人は死なねぇ」ってみんな言ってるぜ。問題は、まな板や包丁を交換する手間を省いて、菌を繁殖させちまう店があることだろ。

―手間さえかければ問題はないのに、なんだか悔しいですね。

中野渡 みんなそれを訴えているんだけどな。でも結局、お上に「それでも中毒が出たらどうすんだ? 死んだらどうすんだ?」って言われたらオレたちは何も言えねーよ。

―レバ刺しより生ガキなどのほうが食中毒の例は多いと聞きます。

中野渡 フグみてぇにレバーの調理も免許制にすりゃいいのよ。フグの毒に比べりゃレバ刺しなんてはるかに安全なんだからよ。この規制のおかげでレバ刺しをウリにしてきた店は殺されちまうよ。

―店側だけでなくレバ刺し好きの僕らにとっても死活問題です。

中野渡 ウチにも「死んでも絶対にここで食ったって言わねぇから、規制後も内緒でレバ刺し出して」って頼んでくるお客がいるけど、そういう需要がある限り、規制後も“闇レバ刺し”が出回るんじゃねーの。

―禁酒法の時代さながらですね。

中野渡 まあ、普通のレバーを普通に出せば死ぬわけねぇんだけどな。事故になったユッケだって280円で出してたんだろ? 仕入れ値はいくらなんだって話だよ。スタイル抜群で死ぬほどイイ女が280円でヤラしてくれるか? くんねーだろ。それと同じだよ。

そうはいっても、交流戦が終わる頃にはみんなレバ刺しのことなんて忘れちまうんじゃねーの。モバ浜ベイスターズと同じよ。

―やや強引ですが、きましたね。話題をDeNAに変えますが、開幕からどう見ていますか?

中野渡 チームの雰囲気も変わったし、いいんじゃね。この前もデニーさん(友利投手コーチ)から電話がきて「バッテリーの決起集会をやりてえから、店借り切らせろ。金は監督に『若手にわたりのもつ鍋食わしてガッツリ気合い入れますんで、ポケットマネーお願いします!』って頼んだからよ」とか言うのよ。横浜がそんなこと言い出すの初めてだぜ。

―結束力が出てきたのでしょうか。それともゲーム中でも、マウンドで投手をドツきまくってるデニーコーチの強権発動でしょうか。

中野渡 俺も「デニーさん、やってるねぇ!」って言ったら、「え? 記憶にございません」だってよ(笑)。ありゃ、相当気合い入れてやってるわ。

―しかし、ポケットマネーをポンと出す中畑監督もさすがですね。

中野渡 どんなに負けてもカラ元気ハツラツで明るく耐え抜こうって姿勢はいいねぇ。去年までの陰険シンラツ監督とは大違いよ。結果を出せば評価するし、ダメでも選手を責めない。モバ浜は監督があんま野球詳しくねー人のほうがいいんじゃね? 去年までならアッサリ負けてる試合も、今年は引き分けで止めたり、盛り返しているだろ。

―わたりさんがベイスターズを褒めるなんて……珍しいですね。

中野渡 それでも最下位なんだけどな。ただ、ブッチギリからギリギリ最下位になった差はでかい。ベイファンの客の会話を聞いてると、今年はみんな4位ぐらいの気分で話してるよ。最下位なのに。

―なんとなく、わかります。

中野渡 でも活躍しているのが番長にノリさんって、ベテラン頼みのうちはまだまだだろ。若手・中堅じゃ荒波しか目立ってねぇ。石川なんてそろそろ打率がO-157だろ。監督に1分間熱消毒してもらえって。

―でも昨年わたりさんが「リーゼントのズラが取れかけてパンチョになっている」と言っていた番長がここまで3完投を含む5勝と気を吐いてますね。

中野渡 今年は力で押すスタイルを変えたし、テンポがいい。頑張ってるからレバ刺しでも食わしてやりてぇけど、あの人、肝機能障害持ちだからシジミの味噌汁でも作ってあげないとな。

―一方で新親会社のDeNAも「全額返金チケット」などで話題をつくっていますが。

中野渡 ガラガラの飲食店が一発勝負で“まずけりゃタダ”とかいって客寄せでやってるのと同じで、そこでうまい試合を見せれば野球を知らねぇ人間がファンになるきっかけにはなる。ああやって仕掛ける姿勢はいいよな。

―観客動員数の中間発表でも12球団で最も伸びているそうです。

中野渡 結局、野球界は古い慣習があるから、みんな新しいことをやりたくてもできねぇのよ。この機会に球場でレバ刺しでも出せばいいんじゃねぇの。少なくともロッテ戦でやればレバ浦さんにパシられた塀内(へいうち)あたりが行列に並んでるだろ。

―その絵は斬新すぎますが、やり方次第ではDeNAが球界の新しい常識をつくれるかもと。

中野渡 それでも今のペースで気軽に負け続けてたらDeNAの話題もレバ刺しとともに消えるだけよ。その後は話題にしようたって、レバーと一緒で“タタかねーと出せねー”ってことになるから、ここが気合いの入れどころじゃねーか。

―おあとがよろしすぎます!

(取材・文/村瀬秀信、撮影/佐賀章広)

●中野渡 進(なかのわたり・すすむ)

1976年生まれ、東京都出身。99年ドラフト7位で横浜ベイスターズに入団。2年目の2001年に63試合に登板、中継ぎの柱としてフル回転するも、翌年、右ひじを故障。手術から復帰するも球団とケンカしてクビに。04年、東京・国分寺に「もつ鍋わたり」開店。著書に『ハマの裏番 もつ鍋屋になる』(ミリオン出版)がある