人事制度の目的は人を育てること。単なる給与分配の道具ではありません。しかし、多くの人が給与で会社が変わると誤解しています。人事制度は組織にとって、一歩間違えれば社員のやる気を奪いかねない劇薬。人事制度の新常識を公開します。

「やればやっただけ給料をもらえれば、相当やる気になるでしょう」

身振りたっぷりに内山社長(仮名)が語ります。

「なにしろ今の制度は古くさい年功序列。これじゃあ、社員のやる気が出なくて当然ですよね」

 当社が発行する無料の人事制度小冊子を読んだ内山社長から、詳しく話を聞きたい、と呼ばれたのは一年前。その後成果主義型評価・報酬制度の設計をお手伝いすることになったのです。初回のミーティングで、人事制度に関する社長の要望や方針を伺うと…。

「給料にはっきりと差をつけた方がいいだろうね。やってもやらなくても同じ金額なら手を抜いた方が得だから。同期入社でも年間百万や二百万円、差がついたっていいんじゃないかな」。

「給料はあがるだけではなく、下がってもいい。結果を出していない人が給料だけあがり続けるのはむしろおかしいでしょう」

次々と給与の話が続きます。
どうやら内山社長の言うことをまとめると次のような主張になるようです。

『成果と給与を連動させる年俸制を導入すれば、必ずやる気があがる』

私は社長の話にうなずきながら、感じた小さな違和感を伝えるべきかどうかを迷い、まずは様子見のジャブを打つことにしました。

「ならば、フルコミッション、完全歩合にしてはどうでしょうか?」

うっ、と詰まりながら、それはちょっと…とつぶやく内山社長。歩合は確かにいい方法だが…、と言葉を濁します。私は思い直して、遠慮せずハッキリと伝えることに。


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