【インタビュー】清水美依紗、ドラマ『全領域異常解決室』オープニングテーマに二面性「曲を聴いて強気で街を歩いてほしい」
10月9日にリリースされた清水美依紗の9thデジタルシングル「TipTap」が、藤原竜也主演のドラマ『全領域異常解決室』のオープニングテーマに起用されている。歌手としてもミュージカル俳優としても圧倒的な表現力を持つ清水美依紗だが、意外にもジャズは初挑戦。そのボーカリストとしてのポテンシャルの高さに改めて驚かされる仕上がりだ。
◆清水美依紗 画像 / 動画
これまでハートウォーミングでエレクトロポップな曲を歌うことが多かった清水美依紗は、ストレスフルな現代社会を生きる人間の二面性や人生というテーマに切り込んだ「TipTap」のデモを初めて聴いた時に、「自分が感じていたことをそのまま言葉にしてくれたような感覚を覚えた」という。
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■自分に厳しく生きてきたんです
■だけど、もっと気楽でいいんだって気づかされた
──ドラマ『全領域異常解決室』のオープニングテーマでもある新曲「TipTap」はヴォーカルスタイルがドラマティックです。ジャズに初挑戦だそうですが、もともと聴いていらしたとか、ミュージカルで歌われた経験があるとか、ジャズと清水さんの関わりについて教えてください。
清水:ミュージカルで歌ったことはないんですが、小さい頃からお母さんにクラシックもジャズも、邦楽も洋楽含めていろんな音楽を聴かせてもらっていたんです。ニューヨークに留学していた時もバーに演奏を聴きに行っていたので、ジャズは身近にはあったんですが、歌ったことはなかったので本当に初挑戦ですね。
──とてもそうは思えないボーカルです。
清水:母がサラ・ヴォーンとかエラ・フィッツジェラルドを聴いていたので馴染みはあったんです。あとはミュージカルの曲ってジャズが取り入れられることも多いので聴いたりとか。
──ジャズのスイング感だったりは身体の中にあったんですね。
清水:なんとなくは。ただ、いざ歌ってみるとやっぱり難しかったですね。スローな曲を聴くことが多かったので、アップテンポの「TipTap」はリズムに乗るのにちょっと苦戦しました。私は基本、リズムに対して後ノリなので。
──そのあたりのお話も後で聞かせていただきたいですが、ドラマは不可解な異常事件”に挑んでいく内容で、「TipTap」も人生の不可思議さ、ミステリーを感じさせられる曲なので、ピッタリだと感じました。ドラマでご自身の曲が流れるのをご覧になってどんな気持ちになりましたか?
清水:オープニングが流れるタイミングを知らない状態で第1話を見たんですが、藤原竜也さん演じる主人公(『全領域異常解決室』の室長代理・興玉役)が自己紹介をした後に曲が流れる展開に鳥肌が立ちました。私自身、ドラマの題材になっているオカルトやミステリーが大好きなんです。本や映画もそういうジャンルのものを選ぶことが多いので、ドラマで自分の曲が流れるのは大きな出来事でした。
──好きなミステリー作家さんとか、いらっしゃいます?
清水:東野圭吾さんはたくさん読みましたね。原作を読んでから映像化された作品を見ることもありますし、逆もあります。東野さんはミステリーだけではなく、心温まるヒューマンストーリーも書いていらっしゃいますが。
──なるほど。そうだったんですね。
清水:今回のドラマはオリジナル脚本ですが、アメリカでは実際に未確認異常現象を扱う部署があるらしいんですよね。“誰が信じるの?”っていうものが自分は大好きだし、信じたいっていう気持ちがあるんです。
──わかります。昔から日本に伝わる妖怪も興味深いです。
清水:都市伝説的なものですよね。楽曲とはちょっと話が離れるんですが、“藤原竜也さんが何かについて説明する時、台詞がなんでこんなに入ってくるんだろう”って。私自身、お芝居をやっていることもあって、説明台詞って難しいと思っているので、改めてすごいなと思いました。実力のある俳優さんたちが出演されているドラマなので、今後の展開が楽しみですし、「TipTap」が毎回、どんなタイミングで流れるかも楽しみにしています。
──「TipTap」はSHOWさんの作詞、Mitsu.Jさんの作曲、編曲ですが、ご自身が作詞作曲する場合との違いについても教えていただけますか?
清水:自分で書く時は経験だったり、自分が思っていることを詞やメロディに変換することが多いので、そういう意味では繊細な作業です。自分が裸になっているような感覚があるんですね。辛いことがあったり、泣きそうなほど幸せを感じた時とか感情のアップダウンがある時に書くことが多いんですが、楽曲を提供していただく場合は曲にどれだけ自分を近づけられるかという作業をします。どの部分が自分に当てはまるか、聴いてくれる方にどういう歌い方をすれば届けられるか、とか。そういう違いはあるんですが、いただいた曲も自分自身の一部ではあります。
──前作「Wave」で清水さんが書かれた歌詞には、お父さまを亡くされた経験を通して感じたことも反映されているとBARKSインタビューでお話されてましたね。
清水:はい。「Wave」を書くきっかけとなったのが同時期に歌詞を書いていた3rdデジタルシングル「Home」だったんです。父を亡くしてすごく辛くて、亡くなってすぐに書いたので、毎日感情の起伏が激しかったんですね。そのアップダウンを波に見立てて書いたんです。非常にリアルなんですが、ただ悲しい感じの歌詞にはしたくなかったんですよね。
──「TipTap」は、これまでの曲とはテイストが全く違います。最初に聴いた時、どんな印象を受けたんでしょうか?
清水:最初はジャジーでカッコよくてキャッチーな曲だなと思ったんですが、歌詞を見れば見るほど“深い!”って。人間、誰しも二面性を持っていると思うんですが、この曲の歌詞には愛と憎しみだったり、社会に対する不満や鬱憤、自分を含めた人間への皮肉だったり、期待だったり、いろんな感情が込められている。自分自身が感じていたことを言葉にしてくれた感覚があって、何度も読み返して“どういう風に歌おうかな”と考えましたね。
──特に“わかる!”って共感した歌詞フレーズはあります?
清水:一番印象的だったのは“死ぬまで踊りましょう”です。それと“人生は蜉蝣(カゲロウ) 栄光は蜃気楼 そんなんじゃつまんない お気楽に生きましょう”という部分。人生は長いようで短い。私は歌手活動もミュージカルも達成感を感じる前に一つ一つのパフォーマンスに対する反省会を始めちゃうところがあって、自分に厳しく生きてきたんです。だけど、この歌詞を読んで“もっと気楽でいいんだ”って気づかされたんですね。ネガティヴなものもひっくるめて“人生って面白い”っていうふうに変換できたらなと。自分の気持ちと行動が反比例していた時期に出会った曲なので、歌っていても解放感があります。
──個人的には“薔薇色の真実なんてマジないわ”という歌詞がインパクトがありました。
清水:“こういうこと歌っちゃってもいいよね”って(笑)。歌った時には本当にスッキリしたんですよね。“マジないわ”って私が歌うイメージないだろうなって。これまでの明るい曲があるからこそ、今回のブラックな世界観が映えるのかもしれないですね。
──ちなみにさっきお話に出た“社会に対する不満”というのは?
清水:特定のことではないんですが、社会に対する想いってみんな、それぞれ持っていると思うんです。今の日本の現状とかではなく、人との関わりだったりとか、正しいという概念だったり。
──“正義”という概念のもとSNSが炎上したり、息苦しさを感じることもありますよね。
清水:息苦しさは正直あります。正しさの基準って人それぞれだし、悲しさにしてもひとつの物差しでは計れないと思うんです。現代社会に生きる人たちがもっと楽になれる方法はないのかなって感じることはありますね。なので、この曲を聴いて強気で街を歩いてほしいなと思います。
◆インタビュー【2】へ
■今の年齢だから歌えたというか
■着地した感がありますね
──熟成したジャズシンガーとはまた違うエッジがあるのがクールです。エンディングの“Ah!! 人生”をシャウト気味に歌っているのもポイントでした。ため息まじりに歌うのではなく、声を張ったのにも意味があるのかなと。
清水:二面性を描いた歌詞だからこそ、最後はダークに終わるのではなくて、明るく突き抜けたかったんですよね。私自身の内側に悲しさや怒りを吹き飛ばす強さがあるからだと思うんですけど、“人生、そんなもんだよな”みたいな。なので、あえて明るいトーンでビブラートをかけず、真っ直ぐに歌っているんです。
──ボーカルスタイルについてもう少しお聞きしたいのですが、ジャズアレンジをバックに、韻を踏んだ歌詞をリズミカルに歌うマッチングに新しさを感じました。
清水:歌は難しかったです。メロディにはJ-POP風味があって、言葉数も多くて韻を踏んでいるので、ニュアンスで響きが変わることもあったので。何度も録り直して“ノレてないな”と思ったら「もう一回、歌っていいですか?」ってお願いしたり。
──前作「Wave」とはテイストの異なるコーラスですね。
清水:はい。コーラスに関しては今までの曲より少ないんですけど、以前までは色を付けずに歌っていたんですね。でも、今回はメインボーカルのニュアンスに合わせてちょっと誇張して、ナチュラルに歌わないようにしました。
──タイトルの「TipTap」もいいですよね。
清水:キャッチーですよね。
──“TikTok”もイメージさせる響きだし、時計の針が進む音“TicTac”に重ねると進んでいく人生の音にも捉えられるというか。
清水:「TipTap」という言葉には“忍び寄る”っていう意味があるんですね。ただ含みがあるようには歌っていなくて、結果、さっきおっしゃっていただいたようにいろんな捉え方ができるなって。それと、ドラムもウッドベースもブラスも、今回演奏は全て生音なんですよ。
──それは豪華ですね。曲はウッドベースの音から入ります。
清水:“ブゥーン”って。あの入り方いいですよね。これまで生楽器でレコーディングしたのは「Home」のピアノぐらい。打ち込みの音源が多かったので、歌も変化しました。やっぱり、ライブ感があるんですよね。今後、ライブで歌う時は、毎回違う歌になるだろうなって。いくらでも変えられるというか、遊べる曲なので意識しなくても、自然と変化していくんじゃないかなと。曲の捉え方や表現の仕方が年を重ねるごとに変わっていくだろうなと思うので、楽しみです。
──ライブではどんなポジションになりそうでしょうか?
清水:前回ツアー(<清⽔美依紗 Solo Tour「Roots」>)でアンコールで初披露させていただいたんですが、セットリストの後半に歌いたい曲だなと思います。この曲を初めて歌った時は、リリース前だったので、予測不能でビックリされた方が多かったんじゃないかなと思うんですけど、曲が終わったあと、イヤモニ越しに“キャーッ”って歓声が聞こえて、嬉しくて“もっと歌いたいな”って。
──すでにXなどSNSでリアクションがたくさん届いてますよね?
清水:ファンの方はもちろんなんですけど、この曲を出した後、同業者の方からたくさんメッセージをいただいたんですよ。Instagramのストーリーでも知り合いがメンションを付けずに“この曲、いい!”って反応してくれたり。知り合いの方が「ドラマのオープニング、美依紗が歌ってたの?」って訊いてくれたり。
──ミュージカル界隈の知り合いの方だったり?
清水:そうですね。同じアーティストの方や、親戚からも(笑)。
──「TipTap」はチャレンジの曲でもあり、将来、振り返ったらターニングポイントになる楽曲かもしれないですね。
清水:はい。絶対にそうなると思います。もちろん、今までの曲があったからこそなんですが、自分にすごくしっくりきている。私の性格だったり、今の年齢だから歌えたというか、着地した感がありますね。
──12月20日からミュージカル『レ・ミゼラブル』にエポニーヌ役で出演されますが、今後、清水さんがトライしていきたいことは?
清水:まず、目の前のことを着実にこなしていくことが夢に繋がっていくと思ってます。初めてライブを観に行ったのが、私が尊敬しているアリアナ・グランデで、会場は幕張メッセだったんです。“歌手になりたい”という私の背中を強く押してくれた忘れられない公演だったので、30歳になるまでに幕張メッセのステージに立ちたいですね。
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■リリース前はすごく不安でした
■でも、自分でいることが一番なので
──清水さんは10代の時、ニューヨークに留学をされたことも前回のBARKSインタビューでお話いただきました。多感な時期に文化の違いを目の当たりにしたり、大きな経験だったと思うのですが、音楽観、人生観にどんな影響を及ぼした日々でした?
清水:ニューヨークに行ったのは歌手を目指す過程のなか、ミュージカルの本場で自分の表現力を磨くためだったんですね。英語に関しては母が喋れるので聞き取りはできたんですけど、喋ることができず、そういう意味ではゼロの状態でした。台本も英語なので、みんながすぐに読めるところを私は丸1日かかってしまうから、遅れをとってしまったり。カルチャーショックもたくさん受けましたし。
──なるほど。
清水:前回インタビューでもお話をしましたが、みんな上手いのが当たり前な中、“あなたのスペシャルは何ですか?”って個性が求められるので、何回も落ち込んだんです。だけど、素晴らしい実力の持ち主が集まったクラスメートと一緒に授業を受けたから、“ミュージカルもやってみたい。俳優もやってみたい”って思えたんですね。18歳という多感な年齢でああいう経験ができたのは本当に大きかったです。
──なにものにも代えられない人生経験ですね。
清水:「学ぶなら本場でやりなさい」って母が言ってくれたんです。背中を押してくれた家族のおかげですね。留学した体験が今、いろんな場面で活かされているんですよ。メンタル面でもそうですし。
──ちなみにメンタル面というのは?
清水:私、ニューヨークから帰国したときが、コロナ禍だったこともあって“もう歌手の夢はいいや”って思うぐらい落ち込んだんですよ。そんな時に母が「SNSがあるじゃない!」って励ましてくれて、トライしてみたら、たくさんの人たちに歌が届いたんです。それから毎週、TikTokでライブをしたり、バイトで稼いだお金で東京に行ったりとか。おかげで忍耐強さが培われました。
──アメリカって自己主張しないと生きていけない世界だけど、日本は主張しすぎると周りから浮いたりする。ベクトルが全然違うんじゃないかと思うんですよね。
清水:全然、違いますね。
──なぜ、改めて留学時代の質問をしたかというと、清水さんの中には「TipTap」のような主張する強気な面もあるんじゃないかなと思ったからなんです。
清水:そういう部分を歌で表現できてよかったなと思います。普段自分が思っていることを家族や友達にうまく言語化して伝えられないので。
──誤解されたらどうしようとか、ありますもんね。
清水:“間違って解釈されたらイヤだな”って(笑)。それは私の性格なんですが、音楽を通してより自分が感じていることを表現できるっていうのはすごくラッキーだし、嬉しいですね。
──では、殻をひとつ破った楽曲ですか?
清水:はい。かなり攻めているのでリリース前はすごく不安でした。これまでの楽曲とのギャップもあるし。でも、自分でいることが一番なので。
──「TipTap」は9thデジタルシングルですが、今後、もしアルバムを出すとしたら、どんな作品にしたいですか?
清水:アルバムはいつか出したいと思っています。出せるなら、全曲が物語になるようなアルバムにしてみたいなって。まだ想像の範囲ですが、ライブは音楽劇みたいな演出を考えてやってみたいですね。
──素敵ですね。
清水:急いで形にするのではなく、じっくり時間をかけて“よし! これだ!”と思える作品を作っていきたいです。
取材・文◎山本弘子
撮影◎TOYO
■9thデジタルシングル「TipTap」
2024年10月9日配信開始
配信リンク:https://shimizu-miisha.lnk.to/tiptapPR
※フジテレビ系水10ドラマ『全領域異常解決室』オープニングテーマ
Lead Cast:Miisha Shimizu
Choreographer:KiKi
Dancer:Annie, KiKi, Kouki Toi, SORA
Director : シシカバ
Producer : Yuya "シシカバ" Yokokura
Cinematographer : Sho Sasaki
Camera Assistant:Rentaro Hayashi
Lighting Director:Saki Iida
Lighting Assistant:Takahiro Morishita
Prop Stylist : yui(q.i)
Dance Coordinator:ORIE NAGATA(ODORIBA)
Hair & Make (Miisha Shimizu) : Makiko Endo
Hair & Make (Dancers) : Yohji Fujiwara
Stylist : Kaz Nagai
Production Manager : Yeti(NEW BLACK), Hoppy(NEW BLACK)
Production : NEW BLACK
■フジテレビ系水10ドラマ『全領域異常解決室』
放送日時:10月9日(水) 22時スタート
※初回15分拡大(22時〜23時9分)
毎週水曜日22時〜22時54分
放送局:フジテレビ系にて
▼出演者
藤原竜也、広瀬アリス、柿澤勇人、福本莉子、小宮璃央/成海璃子/迫田孝也、ユースケ・サンタマリア/小日向文世
▼スタッフ
脚本:黒岩 勉(『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』『マイファミリー』『ラストマン-全盲の捜査官-』他)
音楽:小西 遼
オープニングテーマ:清水美依紗『TipTap』(ユニバーサル ミュージック)
エンディングテーマ:TOMOO『エンドレス』(IRORI Records/PONY CANYON inc.)
プロデュース:成河広明(『コンフィデンスマン JP』『ストロベリーナイト』他)/大野公紀(『ほんとにあった怖い話 25 周年スペシャル』他)
演出:石川淳一(『リーガル・ハイ』『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査』『変な家』他)
制作協力:共同テレビ
制作著作:フジテレビ
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(C)フジテレビ
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