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 モーターがペダルを漕ぐ力をアシストしてくれる便利な乗り物「電動アシスト自転車」。しかし一部では“速度を上げる”改造が相次いでいて、問題となっています。また、街では自転車のようだけど実は“原付”の「モペット」なども増えていて、正しい使用が求められています。こうした乗り物の注意点ついて、自転車評論家の疋田智さんへの取材などをもとにまとめました。

「リミッター」を外せる装置で電動アシスト自転車を“改造”

 電動アシスト“しすぎる”自転車。これで公道を走るのは道路交通法違反ですが、今こうした自転車が横行しています。

 まず、「電動アシストの力」と「漕ぐ力」は、道路交通法で比率上限が定められています。電動アシスト自転車で時速10kmのスピードの範囲内であれば、漕ぐ力の最大2倍のアシストが働いてもOK。しかし時速10kmを超えてスピードが速くなると、アシスト機能は下がる設定になっています。漕ぐ力が上がっているのにアシストする力が弱まらなければ、スピードが出過ぎて危ないからです。

 しかし今、時速24km以上スピードが出ていてもアシストし続ける「改造用の速度センサー」がオークションサイトで販売されるなど、問題となっています。捜査関係者によりますと、実際に売っているもので実験したら、時速50kmは確実に出たということです。

 横行する“基準を満たさない電動アシスト自転車”について、自転車評論家の疋田智さんに話を聞くと、ほとんどが輸入品で、ほぼすべてが中国製だということす。なぜそのようなものが輸入できてしまうのか?実は、リミッター機能を外せる道具自体を違法だとして取り締まることはできません。リミッター機能が外れた自転車を公道で使用するのはNGですが、私有地で走行するのは問題がないからです。

 疋田さんによりますと、よく見かけるようになったのはここ3〜4年。広がり始めたころによく見かけた場所は、電車が動かない時間帯に移動する人が大勢いる“夜の街”だということです。

事故を起こしたら賠償金は『全額自費負担』

 基準を満たさない電動アシスト自転車で事故を起こしてしまった場合、どうなるのか?疋田さんによりますと、電動アシストし過ぎる自転車は「整備不良の原付(バイク)」扱いになるということです。そうなると自賠責保険に登録していない上、自転車保険もきかないため、賠償金は全額自費負担になります。さらに被害者が死亡してしまった場合には、非常に高額な損害賠償を支払わなくてはならない可能性もあります。

 軽い気持ちでリミッター機能を外して乗っている人の中には、こうしたリスクを把握していない人もいるかもしれません。

 では、基準を満たした電動アシスト自転車を確実に購入するにはどうしたらいいのか?疋田さんは、実店舗で対面で買うのがおすすめだといいます。

 また、一定の安全基準を満たした「TSマーク」や「BAAマーク」が貼られていると比較的安心だということです。TSマークは道路交通法令に規定されている基準に適合したもので、国家公安委員会の形式認定を受けた車両に貼られます。BAAマークは自転車協会が業界の自主基準として定めた一つのマークということです。ただ、勝手に貼って販売されている場合もあるため、“これがあるから100%を基準を満たしている”とはなかなか言えないそうです。

街で急増「モペット」のルールを知っていますか?

 自転車のようだけど、実は「原付」(一般原動機付自転車)という乗り物があります。ペダルは付いていますが漕がなくても走行できる、その名も「モペット/モペッド」。今、街でモペットに乗る人が増えていますが、ルールを守らない走行が横行しています。

 まず、モペットで公道を走るには運転免許が必要です。ナンバープレートやヘルメットも義務付けられていて、ウィンカー、ライトも必要です。

 「モーターを切ってペダルを漕いで走っていればナンバープレートなどは必要ない」と認識している人も多いようですが、それは大きな間違い。動力で動ける以上、ペダルだけで走っても原付のルールが適用されます。

 もう一つ、最近街でよく見るのが「電動キックボード」。特定小型原動機付自転車という、去年7月に新設されたカテゴリーに分類されます。

 電動キックボードに関しては特別なルールがあります。16歳以上なら免許不要で、ヘルメットは努力義務、最高速度は時速20km以下です。最高速度表示灯というものを点滅させたうえで、時速6kmを超えない場合のみ、「特例特定小型原動機付自転車」として歩道の走行が可能です。最高速度表示灯は、時速6kmまでしか出さないという合図の点灯で、警察などが見たらわかるそうです。

酒気帯び運転をめぐり「送迎依頼して同乗した人」も罰則対象に

 そして、自転車のルールが11月から大きく変わります。

 まず、罰則が強化されます。現在は、運転中に「スマホでの通話※ハンズフリー装置併用などを除く」「スマホ画面を注視」(※どちらも停止中を除く)をした場合、5万円以下の罰金が定められています。11月以降は、6か月以下の懲役または10万円以下の罰金、さらに、違反して交通事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合は1年以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

 そして、自転車の酒気帯び運転および幇助についての罰則が新設されます。これまでは酩酊状態での「酒酔い運転」のみ処罰対象(5年以下の懲役または100万円以下の罰金)でした。11月からは違反者・自転車の提供者に3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。また、酒類の提供者・自分を送るよう依頼して自転車に同乗した人にも、2年以下の懲役または30万以下の罰金となります。

 悲惨な事故を防ぐためにも、身近な乗り物のルールを改めて確認してみてはどうでしょうか。