アジア選手権から帰国した(左から)張本智和、妹の美和(カメラ・宮下 京香)

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 卓球のアジア選手権日本代表が15日、大会開催地のカザフスタンから羽田空港に帰国した。男子シングルスで日本勢同種目50年ぶりの金メダルに輝いた張本智和(智和企画)は「本当にまぐれで勝ち上がったわけではなく、1人1人しっかり実力者に勝って取った金メダルなので、すごくうれしいです」と喜びを語った。

 今夏のパリ五輪団体3位決定戦でフランスのF・ルブランとの対決。2―1で“王手”をかけてから第4ゲーム(G)、第5Gを連取され、2―3で敗れた。勝利に足りなかったのは「攻めの姿勢」だった。たとえリードしている場面でも「相手が変えたなら変えなきゃ逆転負けしてしまう」。何度も悔しい経験をして分かった。

 今大会はシングルス準々決勝から決勝まで先に2Gを連取し、優位に立つ。しかしそこから後手に回らず、戦術を変えることもいとわなかった。「心理的に優位な時に、タイムアウトを取ったり、戦術を変えたりすることは、今まではできていなかった。『このゲームは最終ゲームだ』と思って臨みました」と、第4Gの攻めの意識が、50年ぶりの快挙へとつながった。

 「きょうだい」を意識せず戦った。今大会では妹の美和が女子団体金、女子単と同複で銀の3つのメダルを獲得した。団体ではシングルス世界ランク4位の王芸迪、同1位の孫穎莎から2つの金星で優勝に貢献した。団体の後、シングルスは男女同日に決勝が行われ、女子の後に男子の順。成長著しい妹の躍進はうれしい。その一方で“きょうだい金メダル”などと期待され、兄には重圧もあった。準決勝後「自分が後から取れなかったらどうしよう…」と不安になった。だが、母は「妹の結果とあなたは関係ない」と言った。この言葉を支えに、考え方を変え、「妹がどんな結果だろうが、自分は金メダルを取る」。

 結果的に美和は女子団体で中国から2つの金星を挙げ、日本勢同種目50年ぶりに中国を破っての頂点に貢献した。智和は男子シングルスで日本勢50年ぶりの優勝。「きょうだい」で快挙を成し遂げた。「妹の活躍が刺激になる時もあれば、プレッシャーなる時もある」と兄・智和。世界トップを走る張本きょうだいは、互いの存在を力に変えながら、強くなっていく。