斎藤元彦前知事

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「“人としての信用”を完全に失った」

 兵庫県議会から不信任案を全会一致で可決され、失職、出直し選挙への再出馬を決めた斎藤元彦前知事(46)。9月26日の会見で顔色一つ変えずご自分の主張を淡々と語っていたが、よくよく聞いてみると中身はデタラメばかり。彼が弄(ろう)する三つの虚言を検証した。【前後編の後編】

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 前編【斎藤知事が主張する実績は「すべて容易に達成が可能なもの」ばかり 公用車の変更も「人件費やガソリン代が増加」】では、斎藤知事がこれまで声高に主張してきた実績のほとんどが、中身のない代物であったことについて報じた。これが一つ目の「虚言」である。

斎藤元彦前知事

 二つ目の虚言は「告発者捜し」について“最善の対応だった”と言い切ったことである。

 斎藤氏は告発文書が出回るや否や、側近に命じて作成者を特定させた。文書を作成した県職員は強引な取り調べを受けた後、今年7月に自ら命を絶ってしまった。

 危機管理コンサルタントの田中辰巳氏はこう言う。

「文書の内容がどうであれ、そもそも、告発された知事自身が直接処理にあたってはいけない事案です。公益通報者保護法を持ち出すまでもなく、疑惑が持ち上がった張本人に、その白黒をジャッジする権利がないのは当然のこと。本当にやましい気持ちがないのなら、すぐさま第三者に委ねれば済む話でした。斎藤氏は危機管理の基本を理解していません」

 むしろ、

「“危機喚起”をしてしまったといえるでしょう。犯人捜しなんてすれば、火に油を注ぐだけだからです。さらに、告発者が亡くなってからもなお“最善の対応だった”と言い張っている彼は、もはや“人としての信用”を完全に失ってしまったと思います」

「ひきょうな手法」

 そして、三つ目の虚言は「議会解散や辞職の可能性」に関して、前言を撤回したことだという。

「彼は不信任案が可決されてから度々、その後の対応を“しっかり考えていきたい”などと述べ、解散や辞職の可能性を匂わせていました。しかし、26日の会見で解散について“私の中では最初からなかった”と、本音を漏らしたのです」(県政担当記者)

 さらには、

「不信任案が可決されたことについて問われ、“果たして知事が職を辞すべきことなのかというのが根底にある”と、最初から辞職するつもりがなかった旨も述べました。つまり、彼は解散と辞職のいずれも考えておらず、自動失職するつもりだったということになります」

 パワハラの責任より改革のほうが大事と言いたいのだろう。

「まさに墓穴を掘ってしまったということでしょう。彼は進退に悩んでいるフリをして世間の関心を集め、会見の後で連続してテレビ出演を果たしました。出直し選挙に備えて主張を述べたかったのでしょうが、今やひきょうな手法だったと批判されています」(同)

「まともな組織がつくことはない」

 さて、11月17日に投開票が予定されている出直し選挙はどうなるか。

「前回、斎藤知事というモンスターを生み出してしまった維新の責任は重く、候補者の選定が難航しています。その一方で早くも前尼崎市長の稲村和美氏(51)が、無所属で立候補する意向を固めたと報じられました。彼女はコメンテーターとして有名な前明石市長の泉房穂氏(61)が味方についているともいわれており、彼の出方次第では一気に最有力候補者となる可能性があります」(県関係者)

 斎藤氏については、

「彼の虚言に疑問を抱かない一部の人が勝手連的に応援するかもしれませんが、まともな組織がつくことはありません。本人は一人でも選挙に臨むと息巻いていますが、厳しい戦いとなるでしょう」

 言うまでもなく、出直し知事選には莫大な税金が投入される。再出馬するのは斎藤氏の勝手だが、自分のまいた種で、こうした事態になっているのは言うまでもない。結局、彼は自分のことしか頭にない、政治家には不向きな人なのである。

 前編【斎藤知事が主張する実績は「すべて容易に達成が可能なもの」ばかり 公用車の変更も「人件費やガソリン代が増加」】では、斎藤知事がこれまで声高に主張してきた実績のほとんどが、中身のない代物であったことについて報じている。

「週刊新潮」2024年10月10日号 掲載