パドレス戦の完璧投球が想起させた“138球の完投” 山本由伸は負けたら終わりの決戦で“また”折れなかった「ヨシに賭けた」

写真拡大 (全2枚)

パドレスを相手に気迫の投球を披露した山本。(C)Getty Images

 負けたらシーズンが終わる――。そんな文字通りの大一番で見せた山本由伸の快投は、小さくない反響を呼んだ。

 現地時間10月11日、本拠地で迎えたパドレスとのナショナル・リーグ地区シリーズ第5戦にドジャースの山本由伸が先発登板。5回(63球)を投げ、被安打2、無失点の好投。3回、被安打5、5失点でノックアウトされた第2戦の雪辱を果たした。

【動画】負ければ終わりの一戦で山本由伸が好投!タティスJr.から三振奪う

 デッドオアアライブの舞台で、パドレスの先発は今シリーズで好調を維持してきたダルビッシュ有。注目度は高まり、ひとつのミスも許されない極限の舞台であったが、山本はポテンシャルを遺憾なく発揮した。

 とりわけ圧巻だったのは、1点のリードを貰った3回のピッチングだ。

 1死から連打を浴びて、一、二塁のピンチを招き、山本はこの試合まで今ポストシーズン打率.500のフェルナンド・タティスJr.と対峙。一打逆転の局面だったが、低めにボールを集める慎重な攻めを見せると、カウント3-1から投じたスライダーを打たせて三塁への併殺打に切って取った。

 5失点で降板した第2戦直後には「結構落ち込んでいた」(大谷翔平談)。そうした精神状況から短期間で立て直した抜群の修正力は、昨季の“関西決戦”を想起させた。

 オリックス時代の23年に迎えた阪神との日本シリーズ第1戦で、満を持してマウンドに立った山本だったが、「とにかく低めを狙え」という敵将・岡田彰布監督の術中にハマり、5回2/3を自己ワーストの7失点でKO。まさかの大炎上を喫した。

 だが、阪神に王手をかけられて迎えた第6戦でふたたび先発機会を得ると、9回(138球)を投げ、わずか1失点の完投勝利。日本シリーズ最多の14奪三振をマークした。この時、勝利監督インタビューで「全部、由伸に賭けました」と強調した中嶋聡監督が、「山本由伸が2回連続でやられる訳がないと思っていました」と叫んだことは野球ファンの脳裏に焼き付くセリフでもあった。

 もしかしたらドジャースのデーブ・ロバーツ監督も「2回連続でやられる訳がない」と思ったのかもしれない。パドレスとの決戦後に米スポーツ専門局『FOX Sports』の中継番組に出演した指揮官は、「我々は今夜、ヨシが人生最高の投球をしてくれると賭けた」と語った。

 無論、開幕前からワールドシリーズ制覇の筆頭候補に挙げられてきたドジャースの正念場はここからではある。月曜日から始まるリーグ優勝決定戦で対峙するメッツもパドレスに引けを取らない強敵である。

 とはいえ、だ。手に汗握る熱戦で役割を全うし、投手として一皮むけた姿を見せた山本を強調せずにはいられない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]