酔っ払うまひろ&自制しない道長…大河ドラマ「光る君へ」第37回放送(9月29日)振り返り!

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「あなたと左大臣(藤原道長)様は、どういうお仲なのですか?」

赤染衛門(凰稀かなめ)に問い質され、視聴者と共に冷や汗をかいたであろうまひろ(藤式部。吉高由里子)。しかし「御方様(源倫子)を傷つけることはしないように」と釘を刺されただけですみました。

気まずさから実家に帰ってみれば、華やかな内裏に比べて大層みすぼらしく感じられ、愛情に飢えた娘の藤原賢子(梨里花)との関係もこじらせてしまいます。

その内裏では藤原彰子(見上愛)が敦成親王(あつひら)を産んだことで、敦康親王(渡邉櫂)の立場が不安定になり、藤原伊周(三浦翔平)らは気が気ではありません。

伊周に不満を訴える高階光子(兵藤公美)と源方理(阿部翔平)は何かを企んでいるようです。

そして内裏に戻ったまひろの元へ清少納言(ファーストサマーウイカ)が訪れ、開口一番「源氏の物語を読みました」と……今週も不穏が続くNHK大河ドラマ「光る君へ」第37回放送「波紋」。

気になるトピックを振り返っていきましょう!

大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより

第37放送「波紋」関連略年表

寛弘5年(1008年) まひろ39歳/道長43歳

11月 彰子が女房たちに『源氏物語』の冊子を作らせる11月 道長が冊子に必要な紙・筆・墨などを援助する11月 道長に『源氏物語』の原稿を一部盗まれる11月 藤式部が里に下る(実家に帰る)11月17日 彰子が内裏へ戻る時期不詳 一条天皇が『源氏物語』を聞いて藤式部の漢才に感心する時期不詳 左衛門の内侍が藤式部に「日本紀の御局」とあだ名をつけて言いふらす12月30日 盗賊が内裏へ侵入する
⇒内匠の君と弁の内侍と3人で彰子の元へ駆けつける
⇒賊に服をはぎ取られた靱負(ゆげい)と小兵部(こひょうぶ)を保護する
⇒藤式部が兵部丞(藤原惟規)を呼ばせるが、不在
⇒彰子は靱負と小兵部に服を下賜する

寛弘6年(1009年) まひろ40歳/道長44歳

1月7日 藤原伊周が正二位に昇叙される

まひろも四十路ですか……ここまで長かったですね。

赤染衛門の「あえてどういう関係か聞かないけど、私が大切にお仕えしてきた主君は傷つけないで≒露骨に関係をアピールすんな喧嘩売ってんのか」というメッセージを受けて、少しは遠慮できるようになりました。

一方の藤原道長(柄本佑)はそんな事など一切構わず、(俺の)藤式部はどこだどこだ……ほか思わず野心を口走る(後述)など、もう油断しまくりです。

まひろもまひろで実家に帰れば酔っ払って上機嫌。華やかな内裏の様子ばかりベラベラと、娘の寂しさなど一顧だにしません。

都会にかぶれた田舎者が同郷人にマウントをとっているような不快さでしたね。

せめて娘の話も聞いてあげて欲しかったですね(それじゃ物語が盛り上がり?ませんが……)。

道長に盗まれた『源氏物語』原稿

藤式部の原稿を狙う道長(イメージ)

藤式部の名を一躍高めた平安文学の最高傑作『源氏物語』。

その執筆には相当な苦労があったと見られ、時には道長に原稿を盗まれてしまったこともあったそうです。

……局に物語の本ども取りにやりて隠しおきたるを、御前にあるほどに、やをらおはしまいて、あさらせたまひて、みな内侍の督の殿にたてまつりたまひてけり。 よろしう書きかへたりしはみなひき失ひて、心もとなき名をぞとりはべりけむかし。……

※『紫式部日記』より

【意訳】自分の局(つぼね。居住スペース)にしまっておいた『源氏物語』の原稿が盗まれた。
犯人は殿(道長)。私が中宮(彰子)の元でお仕えしている間に忍び込んで探し回ったのだ。
盗んだ原稿は内侍督(ないしのかみ)の殿つまり藤原妍子(けんし/きよこ。道長次女)に読ませたという。
ちゃんと書き直せた原稿はどこかに行ってしまったし、正直微妙な原稿が彼女の手にわたってしまった。
あんなのが読まれたら、私もさぞやボロッカスに貶されてしまうだろう……。

道長は「自分の娘に見せたいから」と、『源氏物語』の原稿を盗んだのでした。

権力にモノを言わせ、ファンにあるまじき暴挙と言えるでしょう。

もし道長が原稿を盗まなかったら『源氏物語』は違ったストーリーになっていたかも知れませんね。

まだまだ続く『源氏物語』三十三帖とは

尾形月耕「源氏五十四帖 丗三 藤裏葉」

彰子の発案で、美しい冊子に誂(あつら)えられた『源氏物語』。現代に伝わっている全五十四帖中の三十三帖が一条天皇(塩野瑛久)に献上されました。

ちなみに『源氏物語』の第三十三帖と言えば「藤裏葉」。主人公の光源氏が権力の絶頂に昇り詰め、栄華を極めたシーンが描かれています。

※『源氏物語』が第一帖「桐壺」から順番に書かれたという前提でカウント。

従来の物語であれば、ここで「めでたしめでたし」完結するのですが、紫式部はここで終わらせはしませんでした。

続く第三十四帖「若葉」から始まる第二部では、新たなヒロイン女三宮(おんなさんのみや)が登場。彼女のために光源氏は破滅していくのです。

まぁ正直自業自得なのですが、かつて犯した罪に対して罰を受ける様子が描かれ、第四十一帖「雲隠」で寂しい最期を遂げました。

果たして光源氏がどんな最期を迎えたのか興味津々ですが、「雲隠」は残っていません。

読者の想像に任せるため、あえて書かなかったのか、書けなかったのかは不明です。

ちなみに光源氏の罪とは、継母と密通して、その子を父親に抱かせたこと。

同じ罪を犯した本作のまひろと道長には、どんな罰が用意されているのでしょうか。

敦成親王は「次の」春宮……道長の野望

敦成親王は「次の」春宮(とうぐう。皇太子)……つい洩れてしまった道長の野望。

その場にいたのがまひろだけでよかったですね。と言うより、まひろにだけは気を許して口に出たものと思われます。

一瞬驚いたまひろですが、恐らくその意図は察したことでしょう。

現時点での皇位継承順位は以下の通りです。

一条天皇(当今)→居貞親王(春宮。のち三条天皇)→?(未定)

居貞親王が即位すれば、現時点では一条天皇の第一皇子である敦康親王が春宮となるのが順当でしょう。

しかし道長は違いました。自分の血を引く敦成親王を皇位につけるべく、敦康親王を追い落とすことにしたのです。

敦康親王の母・藤原定子(高畑充希)は既に亡く、外戚の伊周らに道長へ対抗しうる力はありません。

一条天皇が伊周を正二位に昇らせたのは、道長に対するせめてもの抵抗でしょう。しかし焼け石に水です。

実際に三条天皇が即位すると、道長は敦成親王を春宮にゴリ押しするのでした。

これに対して抗議したのが娘の彰子。敦康親王を実子と分け隔てなく愛情をかけていた彼女は、道長と一条天皇に食ってかかります。

しかし決定は覆ることなく、敦康親王は皇位から遠ざかって失意の最期を迎えるのでした。

大晦日の盗賊騒動

丸裸にされた二人(イメージ)

寛弘5年(1008年)の大晦日(12月30日。旧暦は各月30日まで)。

夜中に悲鳴が聞こえて一騒動ありましたが、この様子も『紫式部日記』に記録されています。

……つごもりの夜、追儺はいと疾く果てぬれば、歯黒めつけなど、はかなきつくろひどもすとて、うちとけゐたるに、弁の内侍来て、物語りして臥したまへり。
内匠の蔵人は長押の下にゐて、あてきが縫ふ物の、重ねひねり教へなど、つくづくとしゐたるに、御前のかたにいみじくののしる。
内侍起こせど、とみにも起きず。人の泣き騒ぐ音の聞こゆるに、いとゆゆしくものもおぼえず。火かと思へど、さにはあらず。
「内匠の君、いざいざ」と先におし立てて、「ともかうも、宮下におはします。まづ参りて見たてまつらむ」と、内侍をあららかにつきおどろかして、三人ふるふふるふ、足も空にて参りたれば、裸なる人ぞ二人ゐたる。靫負、小兵部なりけり。かくなりけりと見るに、いよいよむくつけし。
御厨子所の人もみな出で、宮の侍も滝口も儺(やらい)果てけるままに、みなまかでにけり。手をたたきののしれど、いらへする人もなし。御膳宿りの刀自を呼び出でくたるに、「殿上に兵部丞といふ蔵人、呼べ呼べ」と、恥も忘れて口づから言ひたれば、たづねけれど、まかでにけり。つらきこと限りなし。
式部丞資業ぞ参りて、所々のさし油ども、ただ一人さし入れられてありく。人びとものおぼえず、向かひゐたるもあり。主上より御使ひなどあり。いみじう恐ろしうこそはべりしか。納殿にある御衣取り出でさせて、この人びとにたまふ。
朔日の装束は盗らざりければ、さりげもなくてあれど、裸姿は忘られず、恐ろしきものから、をかしうとも言はず。……
※『紫式部日記』より

【意訳】大晦日(つごもり)の夜、表を練り歩く追儺(ついな。鬼やらえ)の者たちも行ってしまった。

私(藤式部)たちはお歯黒をつけたりちょっとした繕いものをしたり、まったりしていると弁内侍(べんのないし)がやって来て、ベラベラしゃべくった挙句に寝てしまう。

内匠蔵人(たくみのくろうど)がまだ起きていると、中宮のいらっしゃる方から何か悲鳴が聞こえた。

「ねぇちょっと、内侍。起きて。起きてってば」

しかし弁内侍は疲れているのか起きてくれない。やがて悲鳴は大きくなり、何事かと心配になる。

火事かと思ったが、様子をうかがっているとそうではなさそうだ。

「内匠の君、あなたが先にいきなさい」

「何で私が?」

「中宮陛下が心配じゃないの?とにかく行きなさい!ホラ内侍もさっさと起きる!」

「むにゃ……」

弁内侍を叩き起して、三人女房はガクブルしながら進んでいくと、素っ裸の女性が二人いた。

よく見ると靱負(ゆげい)と小兵部(こひょうぶ)ではないか。何やってんのと聞けば、どうやら賊に身ぐるみ剥がされたらしい。

まだ賊が潜伏していたら自分たちも同じ目に……恐ろしくてたまらなかった。

「誰か!誰かいないの!」

手を叩き、はしたなくも声を上げて人を呼んだが、なかなか来ない。

御厨子所(みずしどころ)の者たちも中宮の侍(さぶらい。武士ではなく仕える者)たちも、挙げ句は滝口(たきぐち。内裏を護衛する武士)ですら、鬼追儺(やらえ)が終わったからと帰宅してしまったのだった。

もしかしたら、盗賊はこのタイミングを狙って侵入したのかも知れない。

「お呼びですか!」

ようやく宿直(とのゐ)していた御膳(みかしわで)の刀自(とじ。身分の低い女性)がやって来た。

「今夜は殿上に兵部丞(ひょうぶのじょう。弟の惟規)という蔵人が宿直しているはず。呼んで来なさい!」

本来なら、刀自と直接口を聞くなどはしたないにも程がある。しかしこの緊急事態に、そんなことは言っていられないのだ。

「はい、ただちに!」

そう言って惟規を呼びに行った刀自だが、彼女が戻って曰く

「あの、兵部丞は帰宅しちゃったそうです!」

とのこと。あの野郎、いつも肝心な時に限っていないんだから……恥ずかしいやら悔しいやら、怒りに燃える藤式部であった。

そうこうしている内に、式部丞の資業(すけなり)が来て、あちこちの燭台に灯りをつけてくれた。

辺りがようやく明るくなって、ようやくホッとしたところへ、中宮の使いがやって来て、先ほど丸裸にされた靱負と小兵部に衣を下さる。誠にかたじけない限りだろう。

明日(元日)儀式に着る装束は盗まれておらず、ひとまずは安心した。

それにしても、あの二人の哀れな姿と言ったら……恐ろしい反面、ついおかしくなってしまうのである。

……という事でした。

第38回放送「まぶしき闇」

盗賊たち(イメージ)

まひろ(吉高由里子)の元にききょう(ファーストサマーウイカ)が訪ねてきて、亡き后・定子の思い出を綴った「枕草子」から一条天皇(塩野瑛久)の関心を奪ったまひろの物語への思いを打ち明ける。その後、まひろは物語の次の構想を練り始めるが、道長(柄本佑)から新たな提案を受け…一方、中宮・彰子(見上愛)と親王に対する呪詛の形跡が見つかり、伊周(三浦翔平)の関与が明らかに。天皇は道長に相談して処分を検討するが…

※NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより。

さて、久しぶりに現れた清少納言。『源氏物語』が最愛の定子を遠回しに言及しているとあれば、読まずにはいられませんでした。

果たして清少納言が『源氏物語』にどんなコメントをするのか、楽しみですね!

また高階光子と源方理による呪詛が騒動を引き起こし、伊周の関与が発覚します。こうなるともはや呪詛が趣味なのではないでしょうか。

次週も「まぶしき闇」を心待ちにしています!