西武池袋線の駅内でも中堅どころの「大泉学園駅」。そもそも「大泉学園」ってどんな学園? 降りた先の街中には何があるの? など、この記事で詳しく紹介します。アニメと特撮で有名な「東映」もありますよ!

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大泉学園駅という駅名を聞いて「学校法人の『大泉学園』が近くにあるの?」「駅名になるくらいだから、それなりに大きい学園かも」などと関心を持つ人が多いかもしれません。

最初に申し上げておくと、「大泉学園」という名前の学園は……ありません! この記事では駅名の由来とともに、駅周辺の見どころも深堀りしていきます。実はアニメ・特撮の聖地として国内外で有名な「東映」も、すぐ近くにあるんですよ。

【写真を見る】大泉学園駅にある、アニメ&特撮好きの聖地「東映」

大泉学園駅の基本情報:家賃相場はいくら?

大泉学園駅は西武池袋線の1線のみが乗り入れており、駅構造自体は至ってシンプル。

駅周辺の家賃相場は駅徒歩10分以内、築年数10年以内でワンルームが約6.7万円、1LDKが約9.9万円、2LDKが約12.5万円(SUUMO、2024年9月16日確認)。西武池袋線の起点である池袋駅と比べると1〜1万5000円ほど割安で、池袋方面へのアクセスと家賃の安さが両立した地域と呼べます。

「大泉学園」という駅名は、学園都市としての開発構想によるもの

現在の大泉学園駅周辺に当たる地域の開発が始まったのは、関東大震災後の1924年ごろから。当初は大学などを呼び込んで街づくりのコアとする、いわゆる学園都市としての開発構想があったそうです。

この学園都市構想そのものは諸事情で頓挫してしまったものの、震災以降に郊外の宅地需要が伸びたことを受けて、一帯は住宅地として発展。「大泉学園」という名前の学園はついに誕生しませんでしたが、その名残が現在も駅名・知名に刻まれているほか、町名としての「大泉学園」を関する小・中・高等学校などが駅から近い距離に集まっています。

南側の円形ロータリーに、バス停やゆめりあフェンテ

駅改札を出て、南口のペデストリアンデッキに出てみます。

デッキは南口ロータリーの上にドーナツ型に張られており、階段を降りれば、すぐ下のバス停に向かいやすい構造となっています。

デッキと直結している「大泉学園ゆめりあフェンテ」は、地元で長らく親しまれている複合施設。2棟に分かれています。

スーパーマーケット「ライフ」、ドラッグストア「マツモトキヨシ」、ファミリーレストラン「ガスト」、100円ショップ「セリア」、ほか飲食店・クリニック・旅行代理店・キャリアショップ・書店・理髪店など、生活の役に立つ店舗を網羅。デッキはゆめりあフェンテの周囲を囲っており、地上に降りる必要なく、ぐるりと建物の裏側に回れます。

練馬区の野菜を販売するコインロッカー

ゆめりあフェンテ裏側からデッキを降り、その先にあったのが、こちらの農産物直売所。練馬区内で採れた新鮮野菜を販売……とのことですが、この時はマスカットを販売していました。

東京都内では知名度こそ地味ながら、特に小金井・八王子など中西部で優れた品質の野菜や、東京都固有の野菜などが生産されています。大泉学園駅のある練馬でも、「練馬大根」などは比較的有名ですよね。大泉学園駅周辺には、歩いて数分〜10分前後の範囲に地域農園の直売所が複数あるため、お手軽に「東京産」印の野菜に触れられます。

朝ドラ『らんまん』にゆかりのあるスポットも

駅前から学芸大通りを進んで数分の所にある「大泉自動車教習所」。そこで右に曲がり、すぐ行った所にあるのが「牧野記念庭園」および「牧野記念館」です。ここは明治以降に日本の植物学を切り拓いた先駆者・牧野富太郎(まきの・とみたろう)博士の自宅跡地。

牧野博士は2023年度のNHK連続テレビ小説『らんまん』にて、俳優・神木隆之介が演じた主人公のモデルにもなりました。園内には牧野博士が発見・命名した植物や、その他の貴重植物が多数植えられ、記念館では博士の功績や植物学の世界に気軽に触れられます。農産物直売所とも合わせて、大泉学園駅の南側は「自然」「植物」に触れられるスポットが多いエリアのようですね。

北側にはアニメキャラの銅像がずらり!

大泉学園駅は南口だけでなく、北口にもペデストリアンデッキが。南北のデッキは渡線橋でつながっているので、駅の南北は簡単に行き来ができます。北口デッキ上にあるのが、こちらのモニュメント「大泉アニメゲート」。『鉄腕アトム』『銀河鉄道999』『あしたのジョー』『うる星やつら』など、数々の懐かしいアニメキャラの銅像が並んでいます。

実は大泉学園周辺の地域は、現在まで続く日本のアニメーション産業が誕生した地でもあります。1958年に、日本初の劇場用長編アニメ『白蛇伝』が制作されて以降、令和の今に至るまで膨大な数のアニメ作品がこの街から誕生しました。大泉学園には現在も「東映アニメーション」が主要拠点を置いています。

また、デッキの壁面には東映と大泉学園の歴史を伝える白黒写真のパネルが並んでいます。今でこそすっかり宅地化された大泉学園にも、昔は田園や農村があったのでしょうね。

東映撮影所で過去に制作された映画のパネルもありました。『網走番外地』『トラック野郎』といった有名作品から、中には『陸軍残虐物語』なるギョッとするようなタイトルも。現在では撮影も公開も難しいのでは? と思うような、昭和ならではのおどろおどろしさ&ギラギラ感に満ちた名作たちです。

北口デッキに直結している施設も複数あります。こちらの「大泉学園ゆめりあ1」「ゆめりあホール」は南口のゆめりあフェンテと同様、かなり以前から大泉学園駅の周辺を彩っていた複合施設。施設内にはギャラリーもあります。

もう1つ、北口とつながっている複合施設が、こちらの「グランエミオ大泉学園」です。「エミオ」は西武池袋線を所有する西武グループが運営する駅直結のショッピングモールで、西武池袋線沿線に複数あるほか、JR中央線と西武多摩川線の乗り入れる武蔵境駅にもあります。

隣の石神井公園駅ではエミオが複数の棟に分散していたのに対し、こちらのグランエミオはタワーマンションと合体した一点豪華主義。ファストフード「フレッシュネスバーガー」、雑貨の「ロフト」、食品・スーパーの「成城石井」「カルディ」など複数の店舗が入っています。

グランエミオ4階には屋上庭園も整備されています。屋上からの風景は絶景とまでは行かずとも、開放感はなかなかのもの。ベンチ席や立ったまま利用できる屋外デスクもあるので、気温と天気がよければ軽作業にもよさそうですね。

北野神社の意外すぎる由緒

大泉学園駅北口のすぐ近くには、地域で親しまれる「北野神社」があります。そこで、そちらの方向へデッキを降りてみることにしました。駅北口から北西向きの地区は低層の建物が並び、ちょっとした飲み屋横丁のようになっています。つけ麺屋やすし屋、スナックやパブなどが多く、こうした所の香りに惹きつけられる人も多そうです。

その先にあるのが、こちら「北野神社」。江戸時代の初期に創建と伝えられる神社で、現在は平安時代の政治家・菅原道真公を御祭神としています。菅原道真公は太宰府に左遷されて没後に怨霊と化した伝説で有名ですが、その一方で天満天神として信仰を集め、特に学問・学業の神様として崇敬を集めています。学問ということで大泉「学園」にはぴったりですね!

しかしその菅原道真公、実はこの神社における元来の神様ではないのです。この北野神社では当初、法華経(日蓮宗)の三十番信仰(1カ月=約30日の日替わりで神様が来るという神仏習合の思想)に基づいて「三十番神様」が祭られていました。しかし明治になると仏教と神道を分離させる運動が起こり、神仏習合の三十番神様の代わりに、新しく菅原道真公が祭神になることに。神様の世界にもこのような“抜てき”あったとは、驚きですね……!

なお、この神社は地域の小学校と隣接。取材したのは平日の夕方頃ですが、下校中の子どもたちが帰り際に神社の本殿に一礼している風景がありました。菅原公も、おそらくは三十番神様も、令和の世まで信仰が息づいていることにはお喜びなのでは。

年季の入った商店街も

北野神社を後にして少し駅前に戻った先は「東大泉仲町銀座商店街」。1979年の第二次オイルショック後に地域商店の売り上げが減少し、その対策として1981年に組合が発足したそうです。現在は年2回の売り出し行事や清掃活動など、さまざまな取り組みをしています。

店舗はチェーン店から個人経営店までさまざま。昔ながらの青果店の上階に、ダンスやヨガなどのスタジオが入っていたりと、地元商店街ならではの新旧混然とした場所もあります。

いざ「東映」へ!

いよいよ大泉学園の本丸ともいえる「東映」を目指して進んでいきます。東大泉仲町銀座商店街を抜けて大泉街道をしばらく直進。途中で左へ入り、さらに「東映通り」を進んで行った先が……「東映アニメーションミュージアム」です! 東映アニメーションは、現在放送中の『わんだふるぷりきゅあ!』など『プリキュア』シリーズや、『ゲゲゲの鬼太郎』『ドラゴンボール』『ワンピース』『モノノ怪』など、さまざまなアニメコンテンツを制作・展開する巨大アニメ制作会社。その東映アニメーションの本社&ミュージアムが、ここ大泉学園に置かれています。

特に、東映アニメーションが現在プッシュしているのが 『プリキュア』シリーズ。『プリキュア』は2023年の『ひろがるスカイ!プリキュア』時点でシリーズ開始から20年を迎えたこともあり、外観は初代〜『ひろプリ』の主人公たちで彩られていました。

ここを訪れた時点で閉館時間を過ぎていたため、本当に残念ながら中の見学はできず。入り口からは、東映アニメーションのアイコンにもなっている『長靴をはいた猫』の像が見えました。アニメグッズのショップもあるそうで、『プリキュア』に限らずアニメファンは1日いても楽しめること間違いなしです。

「東映 東京撮影所」では数々の人気実写作品を撮影中

また、アニメーションと並んで映画ファン・特撮ファンにとっての聖地が、この「東映 東京撮影所」。ここでは2024年9月に放送開始した『仮面ライダーガヴ』や、同じく現在放送中の『爆上戦隊ブンブンジャー』など、特撮ヒーローものを含むさまざまな実写作品が撮影されています。

受付(右)の上に掲げられているポスターは、7月に公開されていたスーパー戦隊&仮面ライダー映画のもの。映画公開の時点ではまだ前作の『仮面ライダーガッチャード』が放送中でした。

親子で楽しめる「T・ジョイ SEIBU 大泉」「リヴィンオズ大泉店」

また、東映関連の施設と隣接するのが、こちらの大型シネコン「T・ジョイ SEIBU 大泉」。同じ建物内にゲームセンターや飲食店なども併設されています。このシネコンでも東映アニメーションミュージアムと同様、『わんだふるぷりきゅあ!』を激推し中。現在『わんぷり』は劇場版作品が公開中で、大人も子どもも楽しめると大人気だそうです。

また、こちらの1階「タリーズコーヒー」の店内では、東映東京撮影所内の風景を映した壁面パネルと、『爆上戦隊ブンブンジャー』『仮面ライダーガヴ』の出演者サイン入りポスター&色紙も掲示されていました。加えて、東映近辺には大型のショッピングスポット「リヴィンオズ大泉店」も! 大泉学園駅周辺は家族連れで1日巡っても十分楽しめそうです。

大泉学園駅は歴史・伝統とアニメ&特撮カルチャーを同時に味わえる街

東映撮影所の横を通り、さらに先へ行ったところで「白子川」をまたぎます。川にかかる橋の名前は「東映橋」。東映通りといいシネコンといい、もはや大泉学園駅の北側は東映の城下町では? と感じます。その白子川には遊歩道も整備されていますが……こちらの風景を見て何かがピンとくる特撮好き、ニチアサ好きも多いのではないでしょうか。

白子川からさらに進んだ先の「美寿々湯」は、東京ならではといった趣の宮造り銭湯。水風呂とサウナがあるので、東映近辺で聖地巡礼をした後に、ひと風呂入って汗を落とすには絶好のポジションです。大泉学園駅の周辺は、駅北側はグランエミオなどの買い物スポットが多く、東映周辺はサブカルチャー的にも大変見どころが多い、非常に充実した街並みでした。

また、駅南側にも牧野記念館などがあり、「学園」の字を関する駅名のとおり、総じて学業や「知りたい!」「推したい!」という欲求を満たしてくれる街でもあります。大泉学園で菅原道真公や牧野博士、またはプリキュアたちや特撮ヒーローたちからパワーをもらってみてはいかがでしょうか。

この記事の筆者:デヤブロウ プロフィール
都内在住の街歩きライター。Yahooエキスパートとして台東区の地域情報を発信するほか、「macaroni」など複数メディアで執筆を行う。飲食店、博物館、銭湯巡り、寺社探訪を中心に地域情報を発信中。東京シティガイド検定を取得済み。
(文:デヤブロウ)