意外と多い、相手から愛されていると思い込んだ「40代女性の精神構造」

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根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。5万部突破ベストセラー『職場を腐らせる人たち』では、これまで7000人以上診察してきた精神科医が豊富な臨床例から明かす。

「エロトマニー(érotomanie)」の可能性

「『なぜあの男は私とつき合わないのか』…40代職場ストーカー女性の『現実認識のズレ』」で取り上げた40代の女性は、単なる思い込みあるいは勘違いのレベルを超えて、実は「エロトマニー(érotomanie)」を抱いているのではないかと精神科医としては疑いたくなる。「エロトマニー」とは、相手から愛されているという妄想、つまり「恋愛妄想」である。

ちなみに、妄想と精神医学的に呼べるのは、現実離れした不合理な内容であっても、本人が真実と確信しており、訂正不能な場合に限られる。40代の女性は、客観的な根拠もないのに自分が相手から愛されていると確信しており、それに疑問を投げかけられても頑として受けつけないので、やはり妄想を抱いている可能性が高い。

しかも、精神科受診時の拒否的な態度に如実に表れているように自分が病気であるという自覚、「病識」もないので、服薬なんて論外だ。もちろん自分が悪かったという認識も皆無である。こうした見解を紹介状への返事に書いて産業医に送付した。

すると、上司と産業医は相談して、自宅に押しかけられた男性を遠方の支社に転勤させることにした。この男性は、当初「なぜ何も悪いことをしていない自分が転勤しなければならないのか」と抵抗していたが、40代の女性がこれ以上暴走すると何をするかわからないという恐怖があったのか、渋々転勤を受け入れたそうだ。

一方、40代の女性に対しては、この騒動以降新人教育を担当させないことにしたという。自分が一方的に恋心を募らせた男性の自宅にまで押しかけることを繰り返しているので、警察に通報されても、会社から解雇されても不思議ではないと個人的には思う。しかし、会社の上層部としては、この女性が解雇されたことを逆恨みして、何をするかわからないという危惧があったようだ。また、経理に精通している彼女を辞めさせて、すぐに後任が見つからなかったら、業務に支障をきたす恐れもあるので、苦しいながらも穏便にすませる選択をしたと聞く。

もっとも、社内の男性と一切接触させないようにすることも、一方的に恋心を募らせるのを防ぐこともできない以上、今後もストーカー化する可能性は十分あると考えられる。

なお、統計上ストーカーは男性のほうが女性よりも圧倒的に多いのだが、精神科医である私が職場で相談を受けるのは女性のストーカーに関するものが多い。男性のストーカーにつきまとわれたり、待ち伏せされたり、自宅に押しかけられたりした女性は、身の危険を感じて110番通報し、警察沙汰になることが多いからかもしれない。

つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。

どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体