名古屋市役所

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 名古屋城天守閣の木造復元計画のバリアフリー対策を巡り、名古屋市が主催した市民討論会で差別発言があった問題で、有識者らによる検証委員会は18日、最終報告書をとりまとめ、河村たかし市長に手渡した。

 最終報告書では「市長・副市長をはじめとする関係者の人権感覚の希薄さは根源的な背景・遠因となった」と指摘し、人権条例の制定などを通じて再発防止に取り組むよう提言した。

 討論会は昨年6月に開かれ、車いすを利用する男性が天守閣上層階まで垂直昇降設備を設置するよう求めたのに対し、別の参加者が「わがまま」「我慢せい」などと反発したり、「生まれながらにして不平等があって平等」などと述べたりした。

 差別発言について、市職員は発言の制止や注意喚起をせず、終了後も市としての説明や謝罪などの対応を行わなかった。出席していた河村市長は、市民の自由な意見について「熱いトークもあって良かった」と述べたが、その後、不適切だったとして謝罪した。

 報告書によると、昇降設備の設置について、市が決めていたにもかかわらず、参加者への事前のアンケートに「設置しない」との選択肢を設け、市民に十分な説明をしなかった。討論会との名称で開催し、参加者に昇降技術の導入の有無についても討論するなどと誤解させたことが、意見対立の素地を作り、差別発言が生じる遠因の一つとなったとした。

 また、市長の昇降設備を設置しないとの当時の意向が職員の意識に影響し、少なからず討論会の運営にも反映されたとした。

 再発防止策として、職員研修の充実や障害者理解の促進などを提言した。田中伸明委員長は「違いを認め合い、住みやすい社会をつくってほしい」と述べた。

 報告書を受け取った河村市長は「(当日の一連の出来事について)申し訳なくおわびする。指摘については徹底的に市で話し合い、世界一のバリアフリー都市を目指したい」と話した。

 検証委の調査で、河村市長や事業を所管する松雄俊憲副市長の発言をパワーハラスメントと受け止めていた職員がいたことも判明し、市は新たに第三者委員会を設置して検証することを決めた。

最終報告の主な内容

・市長らの人権感覚の希薄さが背景にある

・市の不十分な情報発信が差別発言につながった面も

・昇降設備を設置しないとの市長の意向が職員に影響

・人権条例の制定、職員研修の充実など提言