こうした状況で、私がいま、注目しているのは、"ハイテク寄りの不動産"セクターだ。AI関連なら何でも株価が上がる状況ではなくなったとはいえ、中長期的に見て、今後もAIの社会への普及が続くことは間違いない。そこでこれから直接恩恵を受ける確率が高いのは、データセンターやエネルギー施設の土地を所有する企業だと考えるからだ。

 このセクターの銘柄を探すために参考になるのが、「グローバルXデータセンターリート&デジタルインフラETF」 だ。株価も1年間で約19%上昇しているから投資対象としても魅力的だが、組み入れ上位銘柄には、電波塔や基地局などの通信インフラの管理やリースを展開するアメリカン・タワー 、クラウン・キャッスル に、データセンター運営や管理を手掛けるエクイニクス 、デジタル・リアルティ・トラスト といった企業が並んでいる。

 マグニフィセント7を始めとした大手ハイテク企業はともかくとして、多くの日本人投資家はなかなかこのクラスの企業の存在を知る機会はないと思う。私は米国株投資にあたっては、米国株のプロが運用する手法に学ぶ"カンニング戦略"が有効だと考えているが、このETFの組み入れ銘柄を見れば、多くの投資家の目がハイテク株に向かう中で、プロがどのような銘柄を有望だと考えているのかが分かると思う。

 カンニング戦略といってもただ単に真似をすればいいと言っているわけではない。例えば、8月の乱高下相場で、プロが厳選したポートフォリオがどのような結果になっているのかを知れば、投資に対しての学びにもなるのではないか。そうした視点で見ると、他にも注目すべきファンドがいくつかある。一つは「GS米国成長株集中投資ファンド」で、組み入れ上位銘柄を見ると、イーライ・リリー 、アルファベット、マーベル・テクノロジー・グループ 、マスターカード といった銘柄で構成されている。

 ハイテク銘柄ももちろんあるが、ヘルスケアや金融など、セクターを問わず成長が期待できる17の銘柄に集中的に投資していて(2024年7月末時点)、構成銘柄のパフォーマンスを見ると、8月相場でもかなりいい結果を残しているのが分かる。イーライ・リリーは19%上昇しているし、データセンター向けの半導体ソリューションを提供しているマーベルも13%上昇している。

 もう一つ面白いと思ったのは「米国製造業株式ファンド」というファンドだ。「USルネサンス」の愛称で知られ、2012年5月の設定以来、もうすぐテンバガーという、知る人ぞ知る優良ファンドだ。ダナハー やレプリジェン などのバイオ・ヘルスケア分野から、ゼネラル・エレクトリック のエネルギー部門が独立したGEベルノバ など29銘柄に集中投資している(2024年7月末時点)。組み入れ銘柄にハイテク企業は少ないが、GEベルノバは8月に13%近く株価が上昇しているし、空調システムのエーオン やキャリア・グローバル なども株価が7%前後上昇している。なるほどと思える銘柄が組み込まれ、荒れ相場の中でも高パフォーマンスを出しているのだ。