相手に信頼され、運が集まる人はどんな話し方をしているか。作家の有川真由美さんは「聞き慣れない言葉がひとつでも登場すると、聞く側には負荷がかかる。たとえば『この点がアドバンテージ』『リスケします』など英語が疎い相手に言うと、心の距離が生まれかねない。だれもが知っている言葉を組み合わせて深い話をすることが、ほんとうの知性である」という――。

※本稿は、有川真由美『話し方を変えれば運はよくなる』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/BongkarnThanyakij
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/BongkarnThanyakij

■相手に寄り添う話し方「第一声は“明るい言葉”で始める」

「朝から雨で、イヤになりますね」
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「雨になりましたね。でも、午後には晴れるみたいですよ」

人や幸運が集まってくる人は、話し方に心配りや思いやりが感じられる人です。

ただ自分が言いたいことを言うのではなく、相手の心に寄り添った話し方ができるので、「この人とは通じ合える」「一緒にいて心地いい」と思われ、信頼されるのです。

本稿では、そんな相手に寄り添う話し方の習慣をお伝えします。

まず、第一声は「ポジティブワード」から始めること。

口を開けばネガティブなことを言っている人はいませんか?

「雨でイヤになる」「金曜日は疲れる」「その服、派手じゃない?」など愚痴や否定ばかりの人に対しては、顔を見ただけで身構えるようになってしまうもの。最初の言葉はその人の雰囲気、人間関係を決める重要なポイントなのです。

「雨でイヤになる」ではなく、単に「雨になりましたね」と事実で止め、「道が混んでいませんでした?」「でも、午後には晴れるみたいですよ」など相手を気遣う言葉をつなげると、ポジティブな印象になります。金曜日は「明日はお休みですね」、服を見て「素敵な色ですね」など明るい視点で話すと、笑顔が返ってくるかもしれません。

声かけをするときに「第一声はポジティブワード」を意識していると、会話だけでなく、自分の気持ちも明るくなってきます。明るい言葉から始めるのは、「相手を不快にさせない」というマナーなのです。

■相手に「伝わる言葉」を使って話す

「打ち合わせのエビデンスをとっておいて」
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「打ち合わせの内容を記録しておいて」

政治家の会見や、ニュースの解説などを聞いていると、カタカナ英語や専門用語、四字熟語などが出てきて、内容がすんなり入ってこないことがあります。

写真=iStock.com/Zerbor
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聞き慣れない言葉がひとつでも登場すると、聞く側には負荷がかかるのです。

普段の会話やビジネスシーンでも、カタカナ英語は意外によく聞かれます。

「この点がアドバンテージ」「彼がファシリテーター」「リスケします」「コンセンサスを得た」「最大のUSPは?」など英語が疎い相手に言うと、「なによ、エラそうに」「ついていけない」と心の距離が生まれることもあるでしょう。

話し方がひとりよがりで、目の前の相手に寄り添おうとしないからです。

反対に、むずかしい内容を、中学生でもわかるような平易な言葉で説明してくれる人は、「頭がいい」「やさしい」「通じ合える」といった印象をもちます。

そんな人たちは“伝えること”ではなく、“伝わること”を優先しています。

相手の反応を見ながら、「いまのは、わかりにくかった?」と言い換えたり、たとえを用いたりして、伝わる工夫をする人は、信頼されるでしょう。

大切なのは、共通の言語で話すこと。

だれもが知っている言葉を組み合わせて深い話をすることが、ほんとうの知性なのです。

■少しだけ、ゆっくり丁寧に話す

「ヒマ? この仕事、できる?」
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「この仕事をお願いしたいのですが、30分ほどお時間はありますか?」

早口でフランクに話す人は、活発で頭の回転が速いという印象があり、ゆっくり丁寧に話す人は、穏やかできちんとした印象を受けます。

それぞれに魅力がありますが、幸運をもたらす関係になるには、少しだけゆっくり丁寧に話したほうがいいでしょう。

“ゆっくり丁寧”は、それだけで安心感があるのです。丁寧な話し方をされると、自分を丁寧に扱ってもらえている印象があり、自然に丁寧な言葉で返します。

年下や初対面の人にタメ口で話されて、もわっと違和感を覚えるのは、礼儀をわきまえずに距離を詰めてくるから。

また、早口だと聞きづらいだけでなく、お互いにセカセカした気持ちになって、うっかり失言も出てしまいます。

話すスピードは「ゆっくりすぎ?」と思うくらいがちょうどいいのです。

自分は内容をわかっているので早口になりがちですが、相手は聞きながら考える時間が必要です。

ただし、敬語や説明などが丁寧すぎると、よそよそしく感じられます。ホウレンソウ(報告・連絡・相談)やスピーチ、家族や友人など親しい間柄でも、「少しだけゆっくり丁寧」に、「親しみのある表情」で伝えるといいでしょう。

ちゃんと伝えるためにも、穏やかな気持ちでいるためにも、心地いい人間関係をつくるためにも、少しだけゆっくり丁寧に話してみてください。

■「相手はどう思う?」かを想像する

「ランチ? なんでもいいよ」
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「コレ! というものがないんだけど、なにか候補はある?」
有川真由美『話し方を変えれば運はよくなる』(三笠書房)

相手に寄り添った話し方とは、自分の頭のなかをそのまま言葉にするのではなく、相手の頭のなかを想像して相手のニーズに合った言葉で伝える、ということです。

そのためには「それを聞いて、相手はどう思うのか、どうするのか」と一歩先を読むクセをつけることが大事。

たとえば、「ランチ、どこに行く?」と尋ねられたとします。

「なんでもいいよ」と答えると、相手は「丸投げ? 一緒に考えてよー」と感じるかもしれません。

「○○か△△はどう?」と具体的な選択肢をいくつか挙げるか、「和食かな」「駅の近くがいいよね?」など選択肢を狭める答え方をすると、相手も考えやすくなります。ほんとうになんでもよくて、思いつかないときは、「なにか候補はある?」と聞き返すといいでしょう。

「新しいお店を開拓したいと思ったんだけど……」「いいね。ネットで調べてみる?」など会話が続き、「一緒に考えている」という姿勢になります。

会議や打ち合わせでも「なんでもいい」「どっちでもいい」と意見がない人より、一緒に考えようとする人のほうが、一目置かれて大切にされます。

相手に寄り添う話し方は、単なる情報のやり取りではなく、心を配り、心を通い合わせる人間関係の本質なのです。

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有川 真由美(ありかわ・まゆみ)
作家
鹿児島県姶良市出身、台湾国立高雄第一科技大学応用日本語学科修士課程修了。化粧品会社事務、塾講師、衣料品店店長、着物着付け講師、ブライダルコーディネーター、フリー情報誌編集者など、多くの職業経験を生かして、働く女性へのアドバイスをまとめた書籍を刊行。内閣官房すべての女性が輝く社会づくり推進室「暮らしの質」向上検討会委員(2014-2015)。著書に『感情の整理ができる女(ひと)は、うまくいく』(PHP研究所)、『30歳から伸びる女(ひと)、30歳で止まる女(ひと)』(PHP文庫)、『好かれる女性リーダーになるための五十条』(集英社)、『遠回りがいちばん遠くまで行ける』(幻冬舎)などがある。
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(作家 有川 真由美)