【歯科医が解説】歯周病の「重症度」とは? 各ステージの判断基準や外科治療の要否も知りたい

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自覚症状に乏しく、発見が遅れがちな歯周病は、重症化すると自身の歯を失うだけでなく、全身の健康にも影響を及ぼす可能性があることが知られています。そこで、歯周病の重症度とその判断基準、各ステージに準じた治療の内容や外科治療の要否について、広瀬通り歯科クリニックの遠藤先生に解説してもらいました。

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監修歯科医師:
遠藤 義樹(広瀬通り歯科クリニック)

岩手医科大学歯学部卒業。同大学大学院歯学研究科修了。同大学歯学部臨床教授であり、広瀬通歯科クリニックを仙台市に開設。「できるだけご自身の歯を残す歯周病治療」と「歯が抜けてしまったあとの機能回復」に注力した診療を行う。日本補綴歯科学会専門医・指導医。日本有床義歯学会専門医・指導医。歯学博士。

歯周病の「重症度」は何で決まる? 検査や判断基準、症状について

編集部

歯周度の重症度とはどのように分類されるのでしょうか?

遠藤先生

歯周病はまず、歯ぐきのみに炎症が生じる「歯肉炎」と、歯を支える骨が溶けだす「歯周炎」の大きく2つに分類されます。歯肉炎は歯周病の初期段階にあたり、ここで適切なケアをしないと歯周炎へ進行していきます。その歯周炎は一般に軽度・中等度・重度の3段階に分類されていますが、新しい重症度の分類で重度歯周炎はさらに2段階に細分化されるようになりました。

編集部

つまり、歯周病は「歯肉炎」と「歯周炎」の2段階があり、さらに歯周炎は重症度に応じて4つのステージに分類されるということでしょうか?

遠藤先生

はい。歯周炎の重症度については現在、「軽度歯周炎」「中等度歯周炎」「さらなる歯の喪失の可能性を伴う重度歯周炎」「歯列喪失の可能性を伴う重度歯周炎」の4段階に分類されています。

編集部

重症度を判定するうえで、歯科医院ではどのような検査を行っているのでしょうか?

遠藤先生

歯周病の重症度を判定する検査は多岐にわたりますが、代表的なのは「レントゲン検査」と「歯周ポケット検査」(プロービング検査)です。レントゲン検査では歯を支える骨の溶け具合を確認し、歯周ポケット検査では歯ぐきと歯の間にある歯周ポケットの深さを測って、歯ぐきと歯の付着の程度を調べます。歯周ポケット検査では、歯ぐきの出血の有無も診ています。

編集部

検査における重症度の判定基準を簡単に教えてください。

遠藤先生

歯周ポケット検査を例に挙げると、4mm以内なら軽度、5mmまでなら中等度、6mm以上で重度歯周炎と、歯周ポケットが深くなるほど重症度が高くなります。ただし、これらの検査結果はあくまで目安の1つであり、単純に「歯周ポケットが深い」「骨が溶けて歯がグラグラする」という基準で重症と判断するわけではありません。

編集部

では、そのほかにどのような点を加味して重症度を判断していくのでしょうか?

遠藤先生

歯周病の重症度を判定するうえでは、現時点での歯ぐきや骨の状態にくわえ、「なぜ、歯周病になってしまったのか」という原因を探ることも非常に重要だと考えます。なぜなら、病状が同じでも、そこに至るまでの原因が複雑なほど重症度は高いといえるからです。したがって、患者さんご自身も検査を通して「なぜ、その状態に至ってしまったのか」という点について振り返っていただきたいと思います。

編集部

患者さん自身でも重症度がわかる、症状の目安などがあれば教えてください。

遠藤先生

歯周病の初期にあたる歯肉炎では、歯ぐきの腫れ・出血などの症状が代表的です。そこから歯周炎へと進行し、歯を支える骨が溶けてくると「歯がグラグラして食べ物が噛みにくい」「歯ぐきが痩せてすき間が目立つ」といった症状が表れます。そのほかに、「歯ぐきから膿が出る」「口臭が強くなる」といった症状も中等度~重度歯周炎ではよくみられます。

歯周病の重症度で治療はどう変わる? 外科治療が必要になるのはどんなケース?

編集部

歯周病は重症度によって、治療内容も変わるのでしょうか?

遠藤先生

歯周病治療では重症度にかかわらず、はじめに「歯周基本治療」を必ず行います。その主な目的は、原因(プラーク)や歯周病を進行させるリスク因子の除去です。代表的な治療に、「ブラッシング指導による適切なセルフケアの確立」「歯石の除去」「不適合な被せ物の修正や除去」「噛み合わせの調整」などがあります。

編集部

歯周基本治療が一通り終わったら、次はどのような治療に進むのでしょうか?

遠藤先生

先の一連の治療が終了したら再検査を行い、治療による改善の度合いを評価します。一定の改善がみられた場合はメンテナンスに移行しますが、改善が不十分な場合は次のステップとして「歯周外科治療」を行うことがあります。

編集部

歯周外科治療をする・しないの判断はどのような基準で行われるのでしょうか?

遠藤先生

評価基準はいくつかありますが、一例として、再評価の段階で4mm以上の歯周ポケットが残っている場合は歯周外科治療の対象となります。くわえて、レントゲン検査で確認できる骨の溶け具合(骨欠損の深さや範囲・形状など)も重要な判断材料となります。

編集部

歯周外科治療では、具体的にどのような治療を行うのでしょうか?

遠藤先生

歯周外科治療にはさまざまな種類と方法がありますが、代表的なものに「フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)」があります。この手術では歯ぐきの一部を切り開いて、目視で歯周ポケット内に残っている歯石や感染源を徹底的に除去していきます。そのほかに、歯周病で失われた骨を再生させる「歯周組織再生療法」なども、外科治療として行われます。

編集部

「外科治療」と聞くと少し怖いイメージがあるのですが、治療を受けないとどのようなデメリットがありますか?

遠藤先生

歯周外科治療をせずに経過観察を続けた場合、歯周病がさらに悪化する可能性が高いといえます。はじめの歯周基本治療で一時的に症状が落ち着いていても、プラークやそのほかの感染源が完全に取り除けていないため、歯周病が徐々に進行し、最終的に自身の歯を失う恐れがあります。歯周病は自然に治ることがないため、進行を防ぐためには状況に応じて積極的な治療が不可欠であることもぜひ知っておいていただきたいと思います。

歯周病を重症化させないためにできること・気をつけること

編集部

歯周病を重症化させないために、普段私たちはどのような点に注意したらよいでしょうか?

遠藤先生

慢性疾患である「歯周病(歯周炎)」は糖尿病と同じく、一度かかってしまうと完治することはなく、治療をしても再発する可能性がある病気です。そのため、まずは「歯周病にならないこと=予防」が重症化を防ぐうえでの最優先事項となります。予防では、日々のブラッシングなど口腔ケアをご自身で欠かさず実践し、さらに歯科医院で定期的に専門的なチェックとクリーニング(感染源の除去)を受けることが重要です。くわえて、歯周病は初期の「歯肉炎」の段階で発見できれば、早期治療によって完治(元の健康な状態に戻す)できます。したがって、定期チェックで初期の段階で発見し対処することが、重症化を防ぐ近道といえるでしょう。

編集部

歯周炎に進行すると、やはり完治は難しくなるのでしょうか?

遠藤先生

先述のように、歯周病でも初期の歯肉炎であれば、適切なブラッシングとプラークコントロールで完治できます。しかし、歯周炎へと進行して歯を支える骨が溶けてしまうと、健康な状態に完全に戻すのは非常に困難です。そのため、歯周炎においては「寛解(かんかい)」という状態を目指して治療を行うのが一般的です。

編集部

歯周炎の「寛解」とは、どのような状態を意味するのでしょうか?

遠藤先生

寛解とは「症状が消えている、あるいは落ち着いている状態」を意味します。しかし、病気自体が治ったわけではないので、治療が終わったあともしっかり管理を続けなければ、残念ながら再発して重症化してしまいます。そのため、歯周病は生涯にわたって自己管理と定期的なメンテナンスが不可欠です。そのような意味において、歯周病は「治す病気」というより「コントロールする病気」と言えるでしょう。

編集部

最後に、読者へメッセージをお願いします。

遠藤先生

歯周病の重症度を正しく判定するうえでは、現在の病気の状態(病態)にくわえ、そこに至った原因(病因)を含めた臨床診断が必要であると考えます。なぜなら、深い歯周ポケットがあっても、進行する原因を除去して患者さん自身の治癒能力を高めることができれば、外科処置を行わず改善を図ることも可能だからです。適切な診断に基づき、患者さん自ら積極的に治療に参加していただければ、歯周病の寛解と進行抑制は十分可能です。本記事を参考に、信頼できる歯科医にぜひご相談ください。

編集部まとめ

歯周病は「歯肉炎」と「歯周炎」の2つの段階があり、さらに歯周炎は重症度に応じて4つのステージに分類されます。いずれの段階でも最初に歯周基本治療を実施し、再評価を行ったうえで歯周外科治療の要否が判断されます。歯周病が気になる方はまず、自身がどのような状態にあるのかを詳しく検査してもらい、必要となる治療やセルフケア法を歯科医に相談しましょう。

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広瀬通り歯科クリニック

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診療科目歯科

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