被災地で活動する山口県災害派遣福祉チームのメンバー=群馬県災害派遣福祉チーム提供

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 災害時、避難所に身を寄せる高齢者や障害のある人たちに対して、福祉的な支援をする「山口県災害派遣福祉チーム(DWAT)」。

 昨年、全国の都道府県の中で46番目に発足した。発足後初めての活動として能登半島地震の被災地に派遣されたメンバーが今月、山口市で活動報告を行い、現場で見えてきた課題を共有した。

活動報告をする大西勇祐さん(左)と平山宣子さん=2024年6月18日、山口市大手町

 DWATは、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士ら福祉の専門職で作るチーム。

 災害時には、高齢者や障害のある人、子ども、けがや病気の人たちが、必要な支援を受けられないまま長期の避難生活を余儀なくされ、生活機能が低下したり要介護度が上がったりするケースがある。

 チームは、こうした「二次被害」を防ぐために避難所に派遣され、必要な支援を把握したり、食事やトイレなどの介助をしたり、相談を受けたりする。県のチームには、7日現在で28人が登録している。

 県のチームは3月17日から4月1日まで、1クール4日で延べ8人が金沢市に派遣され、避難所の受付や避難者の健康管理、「避難所内なんでも相談」などを担った。

 長門市の障害者支援施設に勤務する社会福祉士大西勇祐さん(45)は、1.5次避難所のいしかわ総合スポーツセンター(金沢市)で3月〜4月の間に2クール活動した。

 1.5次避難所は、災害関連死を防ぐため、高齢者ら支援を急ぐ必要のある人が、生活環境の整った2次避難所に入るまでの一時的な避難先。大西さんは「避難中に状態が悪化して入院が必要になる人もいて、DWATが面談し、家族に確認をして病院につないだこともあった」と振り返った。

 多くの専門職が集まるため、他職種の人との連携に手間取ったこともあった。1クール4日間はあっという間に過ぎたが、「割り切って『4日でできることをしよう』と切り替えた。引き継ぎやほう・れん・そう(報告・連絡・相談)の重要性を再認識した」と話す。

 初めての土地で、地名や施設名が分からず苦労した。一方で、山口から来たと知った避難者から「長州藩のスパイか」とジョークが飛び、それをきっかけに円滑にコミュニケーションをとれるようになった時もあったという。

 岩国市の介護老人保健施設で働く介護福祉士の平山宣子さんも、3月に金沢市で支援にあたった。他県から派遣された人とともにつくる混成チームのリーダー役を担い、寄せられる情報を整理したり、業務を振り分けたりした。現場では活動内容が日々変化し、臨機応変な対応が求められたといい、「経験を積んでいないと難しい。『したい支援』ではなく、必要とされる支援を行う必要性を感じた」と話す。

 「災害はいつ起きるか分からない。山口DWATも平時から関係性を築いて、支援し合える態勢づくりに取り組む必要があると感じた」とも話した。

 県社会福祉協議会によると、DWATのチーム員を増やすことが課題だといい、今夏にチーム員を追加募集する予定だという。問い合わせは県社協(083・924・2830)へ。(山野拓郎)