ソニー・ミュージックエンタテインメントとワーナー・レコード、ユニバーサルミュージックグループの音楽大手3社を含むグループが、テキストによる音楽生成AIサービスを展開する「Suno」と「Udio」を著作権侵害で訴えました。訴訟を取りまとめたアメリカレコード協会(RIAA)は、著作権で保護された音楽を大量にコピーして商用モデルに取り込んだと主張しています。

Record Companies Bring Landmark Cases for Responsible AI AgainstSuno and Udio in Boston and New York Federal Courts, Respectively - RIAA

https://www.riaa.com/record-companies-bring-landmark-cases-for-responsible-ai-againstsuno-and-udio-in-boston-and-new-york-federal-courts-respectively/



Major record labels sue AI company behind ‘BBL Drizzy’ - The Verge

https://www.theverge.com/2024/6/24/24184710/riaa-ai-lawsuit-suno-udio-copyright-umg-sony-warner

今回訴訟の対象になったSunoとUdioは、テキストプロンプトを使用して音楽を生成するAIサービスを展開する企業の中でも、特に成功を収めている2社です。SunoはMicrosoftのAIアシスタントツール「Copilot」と提携しているほか、Udioは生成した音楽が有名ヒップホッププロデューサーがリリースした「BBL Drizzy」にサンプリングされたことで注目を集めています。

そんな中、RIAAが取りまとめる音楽大手各社が、SunoとUdioに対して著作権侵害の訴訟を起こしました。Sunoに対する(PDFファイル)訴訟はボストン連邦裁判所で、Udioに対する(PDFファイル)訴訟はニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所で提起されています。

RIAAや音楽大手各社は訴訟で、SunoとUdioが著作権で保護された録音物を無断で大量に複製・利用したと主張しています。RIAAは、「これらのサービスが何で訓練されているかは明らかです。彼らは原告の著作権で保護された録音物を大量にコピーし、それらをAIモデルに取り込みました。これらの製品はあらゆるジャンル・スタイル・時代のアーティストの膨大な録音物をコピーすることによってのみ機能します」「これらのサービスは人間の著作権を保護する著作権法から免除されません。他の市場参加者と同様に、著作権で保護された著作物を許可なく商業目的で複製することはできません」と指摘。

今回の訴訟では2社に対し、訴訟費用と共に著作権侵害した作品ごとに最大15万ドル(約2400万円)の損害賠償が請求されています。



原告によると、Sunoに対して著作物を侵害していると非難したところ、同社はトレーニングデータが「ビジネス上の機密情報」であるとしてはぐらかしたとのこと。Udioも同様の主張をしているそうで、2社は音楽レーベルの著作物を無断使用した事実を隠そうとしていると指摘されています。

訴状では、「もしSunoらが原告の録音物をコピーしてAIモデルに取り込まないように努力していたら、Sunoのサービスは同社が宣伝するような品質にならず、これほど広範囲の人間による音楽表現を模倣することはできなかったでしょう」と記されています。

RIAAの最高法務責任者であるケン・ドロショフ氏は、「これらは大規模な録音物の無断コピーに関わる、著作権侵害の一般的な事例です。SunoとUdioは自分たちのサービスを健全かつ合法的な基盤に乗せるのではなく、著作権侵害の全容を隠そうとしています。これらの訴訟は、生成AIシステムの倫理的かつ合法的な、責任ある開発のための最も基本的なルールを強化し、SunoとUdioの露骨な侵害行為に終止符を打つために必要なものです」と述べました。

海外メディア・The Vergeの問い合わせに対してSunoのマイキー・シャルマンCEOは、同社のサービスは既存のコンテンツをコピーしてアウトプットするのではなく、まったく新しい音楽を生成するものであり、特定のアーティストに基づいたユーザープロンプトを許可していないと主張。「私たちは、訴訟を起こしたレーベル会社にこのことを喜んで説明したかったのですが、彼らは誠実な話し合いをする代わりに、古い弁護士主導の戦略に戻ってしまいました。Sunoは新しい音楽、新しい用途、新しいミュージシャンのために作られています」とシャルマン氏は述べています。

音楽業界と生成AI企業の対立はますます強まっており、2024年4月には人間のアーティストの音楽や歌声を学習し、アーティストの価値を下げる「略奪的AI」を非難する書簡に、ビリー・アイリッシュ氏やスティーヴィー・ワンダー氏など200名以上の著名アーティストが署名しました。また、ソニーミュージックグループは5月に、関連会社が所有するコンテンツをAI学習目的などで使用することを禁じる声明を発表しています。

音声を盗んだりアーティストを置き換えたりする「略奪的AI」を非難する書簡にビリー・アイリッシュやスティーヴィー・ワンダーなど200人以上の著名人が署名 - GIGAZINE



The Vergeは、「AIが生成する音楽の多くは、人間のアーティストの楽曲に取って代わるようなものではありません。しかし、音楽業界やその他のクリエイティブ業界では、AIコンテンツが彼らの作品からお金を稼ぐ能力を失わせてしまうのではないかという現実的な懸念があります」とコメントしました。