映画『ルックバック』藤野と京本

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 河合優実と吉田美月喜がダブル主演で声優を務めるアニメーション映画『ルックバック』(6月28日全国公開)の原作者・藤本タツキが、読み切りの構想や作品に反映した実体験について明かした、オフィシャルインタビューが新たな場面写真と共に公開された。

 本作は「チェンソーマン」「ファイアパンチ」などの連載で話題を呼んだ藤本が、2021年7月に発表した読み切りが原作。漫画へのひたむきな思いでつながった、藤野(河合)と京本(吉田)という2人の少女の創作にかける青春の日々と、その運命を分ける出来事を描き出し、著名クリエイターたちをはじめ多くのファンの注目を浴びた。

 アニメ化にあたり、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』『借りぐらしのアリエッティ』『風立ちぬ』など、数多くの話題作に主要スタッフとして携わってきた、押山清高が監督・脚本・キャラクターデザインを担当。藤本は公式インタビューで、押山監督について「『この人は命を懸けて描いているんだ!』と感じました。そして、自分が原作を描いたのに、自分の絵より上手いのが悔しかった(笑)。それ以外にも『自分にはこんなことできなかった』という仕掛けがいっぱいありました」と最大級の賛辞を送る。

 さらに、河合と吉田の演技についても「二人ともすごく良かったです!」と称賛した藤本は、観客に向けて「監督の才能と熱意が伝わってくれれば幸いです! 僕も一観客として楽しみです!」と語っている。藤本のインタビュー全文は以下の通り。(編集部・入倉功一)

『ルックバック』原作者・藤本タツキのオフィシャルインタビュー

Q.原作はどのような構想を経て描かれたのでしょうか?

もともと読切をたくさん描きたいと思っていて、普段から「こういうのを描きたい」というアイデアを貯めていて、「ルックバック」はそのひとつでした。「さよなら絵梨」などもありましたが、具体的な内容が決まっていたのが「ルックバック」だったので、「チェンソーマン」第一部のあとに描く優先順位は1位にしていました。
内容に関しては、たまたま読んだ本から、「死と和解できるのは創造の中だけだ」というようなセリフがあって、すごくいいセリフだと思ったんですよね。原本だと、単なる皮肉なのか、さらっと流されるようなセリフだったんですけど、自分にはすごく刺さって。「チェンソーマン」や「ファイアパンチ」も含めて、自分の作品全部に一貫していることだなと思いました。なので、それを軸にしようというイメージがありましたね。

Q.本作は、藤本先生の実体験が反映されているとのことですが、具体的にどういった部分でしょうか?

すごく絵の上手い同い年の相手がいると、すごく気にしてしまうんですよ。僕は中学生の頃、イラスト投稿サイトに年齢が記入されている欄があったので、同年代で上手い人のリストを作っていました。「この人、同い年なのに、どうやってここまで上手くなったんだろう?」と。そのサイトで見つけた作家さんにコンタクトを取って、「どんな参考書を使っているんですか?」とか聞いたりしていました。なかにはすごく丁寧に教えてくださる方もいて、美術高校の話も聞きましたね。「うちの近所にはそんな学校ないよ! ずるい!」と思ったりして(笑)。自分も美術高校に通いたかったと、すごく嫉妬していました。

Q.押山監督の描くアニメーションの世界は藤本先生の目にどう映りましたか?

押山監督のすさまじい熱量に「この人は命を懸けて描いているんだ!」と感じました。そして、自分が原作を描いたのに、自分の絵より上手いのが悔しかった(笑)。それ以外にも「自分にはこんなことできなかった」という仕掛けがいっぱいありました。例えば藤野が京本の部屋の前に来たとき、4コマを落とした床のタイルの色が、一枚一枚きちんと違うんですよ。そこに「うわぁ!」と。街へのお出かけで、藤野に引っ張られる京本の腕の勢いのあるパースもそうです。他にも田舎の雰囲気が僕の地元の情景そのままだったり、細かいディテールまですごい。こういう「ここは自分しか気づかないだろう」みたいな部分まで作り込まれていて感動しました。

Q.河合優実さん、吉田美月喜さんお二人の声を聞いていかがでしたか?

二人ともすごく良かったです! ジブリ作品みたいな抑え目な雰囲気で、落ち着きがありつつアニメらしさもあって、世間に広く受け入れられるんじゃないかと思います。

Q.「藤野ちゃんは何で描いてるの?」というセリフがありますが、先生が描いている理由はありますか?

20代前半は奨学金を返すため、以降は楽しいから描いています!

Q.楽しみにしている観客の皆様へ

監督の才能と熱意が伝わってくれれば幸いです! 僕も一観客として楽しみです!