不安で眠れない…そんな時にとるべき行動・とってはいけない行動を公認心理師が解説

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夜、なかなか眠れないという経験をしたことがある方は多いでしょう。そんな眠れない原因として、よく挙げられるのが「不安」です。睡眠時間が短くなることで病気のリスクが上がるなど、様々な悪影響が考えられます。今回は、不安と睡眠の関連性、寝られない時にとった方がいい行動、避けた方がいい行動、睡眠にいい生活習慣、病院受診の目安などについて、公認心理師の鍋田さんに解説していただきました。

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監修公認心理師:
鍋田 悠郎(公認心理師)

精神科医療法人の就労支援施設及び精神科デイケアにて相談支援業務に従事。精神疾患の方や障害者の方、その家族や企業など様々な方の相談にのっている。カウンセリング/ソーシャルワーク室なべちゃん代表でもあり、カウセリングやライターなどの活動もおこなっている。

不安で眠れなくなる原因を解説 焦って寝ようとするとどんどん眠れなくなる?

編集部

不安や緊張などでストレスを感じると寝られなくなるという話をよく聞きます。なぜ精神状況が睡眠に関係するのですか?

鍋田さん

人間の身体には副腎という器官があります。不安や緊張などで心身にストレスを感じると、副腎からホルモンが分泌され、交感神経を刺激します。交感神経は身体を活動的にする神経で、交感神経が刺激されると心拍数や呼吸を速めます。日中に交感神経が活発なのは問題ありませんが、強いストレスを受けることで交感神経が活発な状態が続くと、興奮した状態が落ち着かずに不眠となってしまうのです。

編集部

いろいろと考えすぎて眠れなくなるのはなぜでしょう?

鍋田さん

ストレスで眠れなくなるのと同じ仕組みですね。色々と考えすぎることでストレスがかかり、交感神経が刺激されることで眠れなくなることがあります。

編集部

睡眠が足らなくなることのリスクについて教えてください。

鍋田さん

睡眠が足りないことで、がんやうつ病、生活習慣病(糖尿病、高血圧など)、心筋梗塞、認知症などのリスクが高まると言われています。また、集中力が低下し、仕事や学業に支障が出る、食欲が増して肥満リスクが高まるというデータもあります。また、子どもの場合は発達に影響が出るとも言われています。

“寝られない時”にとるべき・とってはいけない行動とは 理由を併せて解説

編集部

寝られない時に取るべきでない行動について教えてください。

鍋田さん

寝られない時にとるべきでない行動は色々とあります。飲酒、スマホやタブレット、パソコンなど電子機器に触れる、興奮するタイプのゲームや漫画、映画などに触れるのは避けた方がいいでしょう。眠くないのに寝床へ行く行動も避けた方がいいですね。

編集部

ほかにはどのような行動を避けた方がいいですか?

鍋田さん

時計を見ることも避けた方がいいですね。スマホで時計を見たら光で覚醒してしまいますし、何度も時計を見ることで「早く寝なくては」「あと◯時間しか眠れない」などと考えて焦り、不安・イライラの気持ちが高まりさらに眠れなくなってしまいます。朝になれば目覚まし時計が教えてくれます。途中で起きた時に今何時かは知る必要がないことなので、眠れない時や途中で目が覚めた時も時計を見ることは避けた方がいいですね。

編集部

アルコールは眠りを助けそうですが、飲まない方がいいのですね。

鍋田さん

アルコールは寝付くまでの時間を若干短縮させることはできますが、眠りが浅くなる、アルコールの代謝でトイレに行きたくなるなどで中途覚醒が起きやすくなり、結果的に睡眠時間が短くなったり、熟睡感がなくなったりしてしまいます。そのため、寝られないからといって飲酒をするのはおすすめしません。

編集部

無理に寝ようとしない方がいいのはなぜでしょうか?

鍋田さん

不眠を意識すると、寝床にいる時間を長くして不眠をカバーしようとする方が多くいらっしゃいます。しかし、眠気が無いのに寝床へ行き横になってもなかなか眠れず、不眠の感覚はさらに強くなってしまいます。また、なかなか眠れないこと自体を考えたり、音に敏感になったりして目が冴えてしまうこともあります。そのため、無理に寝ようとせず、眠気が来たら寝床へ行くようにした方がいいですね。

編集部

逆に、寝られない時のおすすめの行動について教えてください。

鍋田さん

交感神経を休め、副交感神経を高めるためにリラックスして過ごすことを意識できるといいと思います。読書をするなら刺激的でない内容のもの(漫画なら日常もの、ストーリー性のないものなど)を、電子書籍よりも本の方がいいでしょう。また、リラックスできる音楽を聞く、アロマ、瞑想、ストレッチなどもいいと思います。先ほどお伝えしたように、眠たくないのに無理に寝床に行くことはせず、リラックする行動をして眠気が来たら寝床に行くようにした方がいいですね。

編集部

睡眠に効果のある行動、避けた方がいい行動についても教えてください。

鍋田さん

交感神経を刺激する行動は避け、副交感神経が優位になる行動を増やすといいですね。睡眠に効果のある行動として、就寝1時間30分~2時間前の入浴や運動、先程お伝えした寝られない時のおすすめの行動ももちろん睡眠に効果があると言われていますので、日常に取り入れられるといいですね。また、昼寝を多くすると夜に眠れなくなるため、昼寝はするにしても30分程度に留めた方がいいと思います。カフェインも遅い時間に接種すると睡眠に悪影響を及ぼすため、15時以降を目安に避けるといいですね。

週3日以上不眠が続いたら受診を! 考える疾患とは

編集部

週にどれくらい不眠だった場合、受診をしたらいいですか?

鍋田さん

週に3日以上の不眠が3ヶ月以上継続した場合不眠症の可能性があります。そのため、週3日3ヶ月の不眠が目安ですが、日常生活にどの程度影響が出ているかも重要です。仕事に集中できない、日中の眠気が強い、眠れないことが強いストレスになっているなど、日常生活に影響が出ていると感じた場合は受診をした方がいいかもしれません。

編集部

不眠で考えられる病気について教えてください。

鍋田さん

まず、「不眠症」が考えられます。ほかの病気として、「概日リズム睡眠障害」「過眠症」「ナルコレプシー」「睡眠時無呼吸症候群」などもあります。また、「うつ病」の症状として不眠もあります。具体的な診断は病院を受診し、検査などを通して医師に診断してもらう必要があります。

編集部

不眠で受診をする場合、どの科を受診すればいいのでしょうか?

鍋田さん

内科、精神科、心療内科、呼吸器科などが考えられます。不眠の原因によって受診した方がいい科は変わりますが、かかりつけ医がいればまずはそこで相談してもいいと思います。嫌なできごとがあったなど、ストレスに心当たりがあり不眠症状が出ている場合は、精神科や心療内科を受診してもいいかもしれませんね。数は多くないですが、睡眠外来など睡眠専門の病院もあります。病院受診をしても不眠症状が続く場合は、専門病院を受診するようにしましょう。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

鍋田さん

睡眠はとても大切です。日本人は海外の人と比べて睡眠時間が短くなっています。睡眠時間が短くなると、様々な病気のリスクが高まる、仕事や勉強のパフォーマンスが下がる、子どもの発達に影響が出るなどのリスクがあります。不安で寝られない時も適切な行動を取ることで、眠りやすくなります。また、人は気付かないだけで一晩の中で何回も覚醒しています。そのため、夜間に起きることは普通のことなのです。必要以上に気にせず、「前の日眠れなかったから翌日眠れるだろう」「睡眠は短いけど影響は少なそうだな」などの考えを取り入れ、睡眠に対して完璧主義を減らしていけるといいですね。ただ、眠れないと感じる状況が続き、日常生活に影響が出ている場合は受診を検討するようにしましょう。

編集部まとめ

不安と不眠の関係性、不眠時にとった方がいい行動、避けた方がいい行動などについて教えていただきました。不眠が長期になることで、心身の病気のリスクが高まってしまうとのことでした。ただ、記事の中の対策を実際に行うことで不眠も改善しそうですね。また、不眠症状が続いて日常生活に影響が出ている場合は病院受診を検討してみると良さそうですね。本稿が、読者の皆様にとって「不眠」「眠れないときの対策」などについて知るきっかけとなりましたら幸いです。

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