(C)はまじあき/芳文社・アニプレックス

「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:」が本日公開された。全12話のTVシリーズを前後編で映画化したもので、今日公開されたのは前編の「Re:」。後編の「Re:Re:」は8月9日公開となっている。

TVシリーズでは、極度の人見知りで“陰キャ”な女子高生の主人公・後藤ひとりが、「結束バンド」のドラマー・伊地知虹夏と出会い、山田リョウ、喜多郁代と個性的なメンバーと合流、苦手な人との交流も経て、ライブハウスでのライブ、そして文化祭でのライブを通して成長していく物語が展開された。

そんな結束バンドの物語を、劇場のスクリーンと音響の大迫力で楽しめるのが今作の見所。なお、前編については、TVシリーズから加筆修正等はされておらず、音声もサラウンドに拡張されているのみ。しかしながら、テレビのボリュームを上げても味わえない、映画館ならではの迫力の音響で楽しむ事で新たな魅力に気がつく、そんな発見がこの総集編には詰まっている。「ぼっち・ざ・ろっく」をすでに観た人も、そうでない人にも是非観てほしい作品だ。

試写会会場に展示されていたパネルたち

大迫力で楽しめる“ぼっちの奇行”

「ぼっち・ざ・ろっく!」の醍醐味といえば、演奏はもちろんだが、やはり“ぼっち”ことひとりの奇行の数々だ。総集編になるにあたって、削られたり、流れだけを演出するシーンもあるわけだが、ぼっちの奇行シーンはやたら丁寧に拾われている。

中学生の頃にバンド活動に憧れてギターを始めるも、誰一人にも声をかけることができず、一人で毎日6時間ギターを弾き続けて、超絶テクニックを身につけ、ギターの演奏動画を“ギターヒーロー”としてネットに投稿したり文化祭ライブで活躍したりする妄想なんかをして、気づいたときにはバンドメンバーを見つけるどころか友達ができないまま高校生になっていた、という狂気すら感じるエピソードを再び大画面で見せつけられる。

ゴミ箱に閉じこもったぼっちの声の反響音が「やり過ぎだろ」と思うくらい広大に響き渡ったり、キタちゃんから全力で逃げるぼっちの「ビューン!!」という効果音がスクリーンから劇場の後ろに向かって猛スピードで抜けていたり、ひとり役の青山吉能が「肉声で収録した」と明かして話題となった、機械音のような声を発してノイズまみれになるシーンの衝撃は、劇場のスクリーンでは迫力が段違いだ。あの“承認欲求モンスター”も劇場版規模で街を破壊する。「何を観せられているんだろう」とか思ってはいけない。

何より、ぼっちの独白が全身を包み込むように聞こえることもあって、ぼっちへの共感(と共感性羞恥)もより一層強くなる。

知っているシーンなのに衝撃。ぼっちの演奏シーンにゾクゾクが止まらない

ぼっちの奇行を先に取り上げてしまったが、やはり演奏シーンの臨場感はすさまじい。とくにぼっちのメンタルとギター演奏の変化が非常にわかりやすい。

TVシリーズでは、明らかに演奏のバランスが崩れてしまっているシーンはわかりやすかったものの、ちょっとした安定感の変化や、ぼっちのメンタルが演奏に影響しているシーンについては、テレビのスピーカーではその変化がわかりにくく、そこまで衝撃を受けるような印象はなかったと思う。

これが劇場版になると、ギターの響きの余韻までガッツリと響いてくることもあって、演奏の崩れているシーンと安定しているシーンの差がより明確に。ぼっちの独白が多い作中の表現と相まって、ぼっちの心情がどっと流れ込んでくる感覚になる。

そんなぼっちの演奏に惹かれた周囲のキャラクターたちとも共感できる。上映中の劇場がちょうどライブハウスの薄暗さとマッチしていることもあって、ぐいぐいと作品の世界に引き込まれる。

TVシリーズの時にも、ライブの演奏シーンで衝撃を受けた人は少なくないだろう。だが、劇場版の衝撃は段違い。知っているシーンなのにまたその身体がゾクゾクする感覚が味わえる。形としては「ただの総集編」かもしれないが、これを劇場版として公開した理由はここにあると思った。

期待通りの劇場版!! 視聴済みの人にこそ観てほしい

最初の方にも記載した通り、加筆無しの、TVシリーズの再編集版なのだが、前後編の映画作品として成立していて、未視聴の人も楽しめる作品に仕上がっていると思う。

だが、筆者はすでにTVシリーズを観た人にこそ、今回の劇場総集編を観てほしい。ガッツリ観ている人ほど「そこから始めるのか!!」とこの総集編の完成度に納得できるだろう。

しかも、オープニングテーマ「月並みに輝け」とエンディングテーマ「今、僕、アンダーグラウンドから」の2曲はともに新曲。結束バンドのストーリーを見返したあとに流れるエンディング曲の歌詞からは、より“ぼっちらしさ”を感じられるかもしれない。BD特典だったサントラと一緒に6月9日から配信されるので、この熱が冷めぬうちにガッツリと聴き込みたいところだ。

さらに、上映前にはマナー映像が上映される。ED映像を担当したスズキハルカによる描き下ろしイラストが利用されており、ボイスは同映像のための撮り下ろし。映像はぼっちと虹夏ペア、リョウとキタちゃんペアの2種類が用意されており、週替わりで流れる。ぼざろならではのカオスなマナー映像が楽しめる。

マナー映像(ぼっち&虹夏)
(C)はまじあき/芳文社・アニプレックス

マナー映像(リョウ&キタちゃん)
(C)はまじあき/芳文社・アニプレックス

そして、キービジュアルも公開された後編「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:」。もちろん学園祭ライブの模様が描かれる訳だが、前編の時点で劇場での大迫力でこれだけ楽しめたことで、8月9日公開の後編への期待も一層高まってくる。映画館音響での「ぼっち・ざ・ろっく!」。ぜひ存分に味わってほしい。

「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:」キービジュアル
(C)はまじあき/芳文社・アニプレックス