2014年に破綻して民事再生手続きを申請した東京の仮想通貨取引所「Mt. Gox((マウントゴックス)」が保有するウォレットから、総額96億ドル(約1500億円)相当のビットコインが新しいウォレットに移されたことが報じられました。マウントゴックスによる仮想通貨の移動は、債権者に対する弁済計画の一環であるとみられています。

Bitcoin (BTC) Falls as Traders Mull Risk of Sales Linked to Mt. Gox - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-05-28/bitcoin-btc-falls-as-traders-mull-risk-of-sales-linked-to-mt-gox



Mt.Gox Moves All $9B in Bitcoin to Single Wallet, What Next for BTC?

https://www.coindesk.com/markets/2024/05/28/mtgox-moves-7b-bitcoin-as-part-of-repayment-plans-sparking-btc-price-plunge/

False Alarm: Former Mt. Gox CEO Says Bitcoin Repayments Haven't Started Yet - Decrypt

https://decrypt.co/232674/false-alarm-former-mt-gox-ceo-says-bitcoin-repayments-havent-started-yet

マウントゴックスは2009年に立ち上げられた当時こそトレーディングカードの交換所でしたが、2010年にビットコインの取引所へと業務を転換。2011年には日本在住のフランス人であるマルク・カルプレス氏が買収し、2013年4月には全世界のビットコイン取引量の約7割を取り扱う世界最大級のビットコイン取引所となりました。

しかし、数年間にわたるハッキングを受けて保有していた約84万ビットコイン(当時のレートで約460億円相当)や多額の預かり金が流出していたことが2014年2月に発覚し、2月28日に東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請しました。その後、カルプレス氏は「取引システムのデータを書き換えて口座残高を水増しした」として私電磁的記録不正作出罪や業務上横領罪に問われ、2019年に懲役2年6カ月、執行猶予4年の有罪判決が言い渡されました。なお、すでにカルプレス氏の執行猶予期間は終了しており、刑務所への収監は免れています。

民事再生手続きを申請したMtGoxにまつわるトラブルと今後のBitcoin - GIGAZINE



マウントゴックスは破綻してから10年が経過した記事作成時点でも、債権者への弁済に向けて動いており、再生管財人を務める小林信明弁護士は弁済期限を2024年10月31日としています。

そして5月28日、新たにマウントゴックスが保有する総額約14万BTC(約1500億円相当)ものビットコインが、数回に分けて合計3つのウォレットに移動されたことが判明しました。



一連のビットコインの動きは、マウントゴックスの債権者への弁済に関連するとみられています。これを受けて、「弁済を受けた債権者が大量のビットコインを一度に売却すると値崩れが起きるのではないか」という懸念が広まり、ビットコインの相場は一時3.1%下落しました。

しかし、オーストラリアの仮想通貨取引所であるBTC Marketsのキャロライン・ボウラーCEOは、マウントゴックスの弁済による影響は短期的なもので、過度に懸念するものではないと指摘。「マウントゴックスの弁済は確かにビットコイン価格を変動させるでしょうが、現在の市場全体は仮想通貨の規制を巡るアメリカの動きに焦点を当てているため、これが価格に決定的な影響を及ぼすことはないでしょう」と述べました。

また、10年前と比較するとビットコイン価格は大幅に値上がりしており、債権者が手にするビットコインの価値はマウントゴックスの破綻時より大幅に高くなっています。そのため、ブロックチェーンコンサルタント企業のGlassnodeでアナリストを務めるジェームズ・チェック氏は、弁済後にすぐビットコインを売却しようとする債権者はほとんどいないと予想しています。

今回のビットコインの移動についてカルプレス氏は、「私の知る限り、マウントゴックスは順調です。管財人は今年中に行われるであろう分配に備えて、ビットコインを別のウォレットに移動していますが、ビットコインの売却が差し迫っているわけではありません」とコメントしました。