by Mike Mozart

アメリカの大手シーフードレストラン「レッドロブスター」は現地時間2024年5月19日、連邦破産法第11条の適用を裁判所に申請し、経営破綻しました。その理由について海外メディアのNBC Newsは「2014年にレッドロブスターを買収したプライベートエクイティ企業が、レッドロブスターが保有していた不動産を売却したことに伴って、家賃を支払う義務が生まれたため」と報じています。

How private equity rolled Red Lobster

https://www.nbcnews.com/business/consumer/private-equity-rolled-red-lobster-rcna153397



44の州とカナダの約600店舗でレストラン事業を展開していたレッドロブスターは、2024年5月19日に連邦破産法第11条の適用を裁判所に申請、経営破綻に至りました。これに伴い、レッドロブスターは全国で約100店舗を閉鎖することを発表し、約3万6000人の従業員が解雇されることとなりました。

経営破綻の理由についてレッドロブスターは「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う利用客の減少や、インフレの影響による人件費の増大、2023年にエビの食べ放題を常設メニューに変えたことによる損失の拡大」を挙げています。

一方で一部のアナリストはレッドロブスターが経営破綻に追い込まれた要因について「エビの食べ放題を常設化したことではない」と指摘。NBC Newsはレッドロブスターを買収したプライベートエクイティ企業の資金調達手法が要因と語っています。



一部のプライベートエクイティ企業は「資産剥奪」と呼ばれる、買収した企業の資産の一部を売却し、別企業の買収に向けた資金源に充てるという手法を取っています。買収された企業がプライベートエクイティ企業の元で成長を遂げることに成功した場合、プライベートエクイティ企業は別のプライベートエクイティ企業にその企業を売却しているそうです。

しかし、プライベートエクイティ企業に買収された企業の倒産率は、買収されなかった企業の倒産率に比べ10倍に達することが報告されており、企業のデフォルト率を高め、企業が再編された際に投資家が回収できる資金が減少することが問題視されています。

実際に2014年5月にレッドロブスターを買収したプライベートエクイティ企業のゴールデンゲート・キャピタルは、2014年7月にレッドロブスターが保有していた15億ドル(約2300億円)規模の不動産を売却。売却に伴って生まれた資金がレッドロブスターに戻ることはなく、ゴールデンゲート・キャピタルの懐に収まることになったことが報じられています。

ゴールデンゲート・キャピタルによる不動産の売却に伴って、レッドロブスターには店舗の家賃を支払う義務が発生。2023年までにレッドロブスター店舗の賃料は年間2億ドル(約310億円)に達し、年間収益の約10%を占めるほど財政状況を圧迫していたとレッドロブスターは報告しています。



レッドロブスターが保有していた不動産を購入したアメリカン・リアルティ・キャピタル・パートナーズによると、売却された不動産は年間2%の賃料上昇が見込まれるほど優れた場所だったとのこと。一方のレッドロブスターはこれらの不動産の価値が上昇しても利益を得られないどころか、ゴールデンゲート・キャピタルはレッドロブスターに対して負債の穴埋めに高い利息を加えました。

非営利団体のAmericans for Financial Reformのシニア・ポリシー・アナリストであるアンドリュー・パーク氏は「プライベートエクイティ企業のやり方は、買収した企業に多額の借金を背負わせ、不利な立場に追いやるものです」と指摘。



その後、2020年にゴールデンゲート・キャピタルはレッドロブスターをタイ・ユニオン・グループに売却しています。なお、タイ・ユニオン・グループは2024年1月に保有するレッドロブスターの株式49%全てを売却していました。

タイ・ユニオン・グループの広報担当者は「タイ・ユニオン・グループは30年以上にわたってレッドロブスターのサプライヤーを務めてきました。この関係は今後も継続するつもりです。裁判所の監督下で、レッドロブスターが財務上の義務を再構築し、より有利な事業環境で長期的な可能性を実現できることを願っています」と述べました。